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ライフハックすれど、しきらないこと

主体性とそこからの逸脱

ライフハック

セルフ・リファレンス

その1:行動管理(Do)
その2:情報整理(Is)
その3:日常維持(Be)

身体・物・技術(方法)

自己管理の課題・主体性の問題


ライフハックと主体性

ライフハックは、主体的な行為である。

ハックという行為には、実践者が存在し、その実践者の意図する方向へと環境や道具(ときには自身)がデザインされていく。それを主体的な行為と呼んでも差し支えはないだろう。

逆に言えば、主体性を放棄した行為はライフハックとはもはや呼べない。それは別の何かである。もちろん、ここで難しいのは「主体的に主体性を放棄する」といったねじれた行為の評価である。こうした行為は、どちら側に属することもできそうに思う。この点は、また後ほど検討することにしたい。

ともかく、ライフハックとは主体的な行為である。だからこそ、主体性を大切にする自己啓発と親和性が高いのは以前指摘した通りだ。

主体性=支配?

さて、ここで議題にあげたいのは、ライフハックは支配的な行為かどうか、という点である。支配的とは、対象の隅々にまで自分の意志を行き渡らせ、望むままの状態へと固定してしまうことを意味する。自己啓発が危うい溝に嵌まり込むのは、まさにこの「主体性による支配」が強まる瞬間だ。別の言い方をすれば、自己が強まりすぎて、他者がすっぽりと抜け落ちてしまう。こうなったら、真っ逆さまである。

そこまで行かなくても、自分が思った通りの状況に固定することは、むしろ自分の限界によって自分を規定することを意味する。言い換えれば、自分の檻に閉じこめられてしまう。そういうことが主体性による支配では起こりえる。

では、ライフハックではどうなのだろうか。その点は、エンジニアリング・リバースエンジニアリングの観点から考察できるだろう。

「思い」通りにはいかないこと

機械を分解するとき、そこにあるのは何だろうか。もちろん「知りたい欲求」である。そうした欲求に基づいて何かを準備し、計画し、実行に移す行為は、主体的であると言っていいだろう。

しかし、その工程は支配的ではないし、得られるものもまた支配的ではない。中身は分解してみないことには見えてこないし、そこにあるものが何なのかがわからないこともある。当然、自分が望むものが手に入るとは限らないし、逆に思ってもみなかったものが手に入ることもある。非支配的だ。

何かを生み出す場合でも同様だ。そうした行為は、だいたいの場合、思い通りにはいかない。失敗があり、バグがあり、エラーがあり、試行錯誤があり、フィードバックがあり、新しい発見がある。思いも寄らぬものが、作ること中では発生する。逆に、単に思弁的なものだけに閉じているならば、そこは調和に満ち、非未知的な世界ができあがる。

では、ハックするという行為はどちらに属するだろうか。前者である。ある動機や目的を出発点として、道具や環境をデザインしようとする試みは、常に不純物を含む。意志の浸透がどうしても届かない部分が残る。主体性の侵入を拒む要素が立ち現れる。それが閉じようとする世界を開いてくれる。自分の檻をこじ開けてくれる。そういうことが起こりえる。

その意味で、自主的に自主性を手放すこともまた、ライフハックの一つだと言えるだろう。意志力を浪費を防ぐために、同僚と同じ昼食を注文することは、「主体的であれ」という教えには背くかもしれないが、それでもライフハック的ではある。そうしようという意志がそこには介在している。

しかし、すべてについて主体性の発揮を取りやめ、何もかもを流れに身を任せ、二度と主体性が海面に上ってこないように日常に細工をしていく行為は、主体性の放棄だと言えるだろう。そうなったとき、それはもはやライフハックではなくなる(それをなんと呼ぶかは各々にお任せする)。

さいごに

ライフハックにおいて、私たちは主体性を発揮させる。しかし、その意図は達成されない。すべてが自分の思うようにはいかないし、まったくもって制御の及ばない部分にもぶつかる。

それは残念なことではあるが、しかし嬉しいことでもある。それがある種の閉じこもりを抑制してくれるからだ。

ライフハックは、理念ではないし、思弁でもない。それは常に実際的な行動であり、創作(制作)を伴う。この点が極めて重要だ。もし、エンジニアリング・リバースエンジニアリング的要素を欠いてしまえば、あっという間にそれは閉じこもってしまうだろう。主体性による全支配か、その反動による主体性の放棄のどちらかして立ち現れるはずだ。

というわけで、ずいぶんと遠回りしてきたが、ライフハックにまつわる諸問題はいくつか検討できたかと思う。重要なのは、ライフハックが主体性の発揮をスタートとしていながら、それによって支配を確立することは、むしろ避けるべきだ、という点だ。これは、さまざまな要素を検討していく上での、基本的な土台となるだろう。

(つづく)

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