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僕らの生存戦略

自己管理が持つ危うさ

Posted on 2021 年 1 月 8 日2021 年 1 月 8 日 by Rashita

2021年の手帳とわたし

今朝、久しぶりにバレットジャーナルを開いて、記録が途切れた最後のページをめくり、新しいページに書き込みながら「ああ、手帳なんてなくても、日々は回っていくし、楽しく暮らせるな」としみじみ感じました。

たとえば、手帳を使っている人が全国で2000万人いたとして、じゃあ使っていない一億人以上が日々を回せず、辛く暮らしているかというと、もちろんそんなことはないわけです。しかし、手帳を使う人たちが集まり、一種のクラスタを形成するとそうした事実が見えにくくなります。ネットに重きを置いている人ほど、そういう傾向が出てくるでしょう(つまり私です)。

普通の生活にはこれでじゅうぶんなのに、手帳とかタスク管理とかの情報に踊らされて、自分のキャパを超えて、自己管理ツールを使おうとしていたんだなということがわかりました。

なぜこうしたことが起こるのでしょうか。一つには、やはり情報が多すぎるからでしょう。私が二十歳くらいの頃は、手に入る手帳の情報などたかがしれていました。半日でも図書館にこもればだいたいの知識を仕入れられたくらいです。しかし、現代ではほんとうにわんさかノウハウに関する情報がやってきます。Aさんのtipsを一つ、Bさんのtipsを一つ、Cさんのtipsを一つ、とやっているうちに引き出しの中は溢れ返り、どうにもならない事態がやってきます。

週の振り返りとか、未来の自分への細かい申し送り的なこととか…、
役に立つこともあるのだろうけど、いろいろ、もういいや、と思いました。
時には必要だろうけど、ずーっとやり続ける必要はないな、と。

二つ大切なことが書かれています。「もういいや」と「時には必要」の二つです。

そう。手帳を使っていない1億人に思いを馳せるなら、別に手帳なんて使わなくても生活が消えてなくなることはありません。幸せが失われることすらないのです。私たちはいつだってゼロベースの地点に戻っていけます。

一方で、手帳を通して積み上げてきたものがまったく無駄であったと全面放棄する必要もありません。それはそれで、たしかに楽しさがあり、面白さがあり、ときに役立つことなのです。でも、不要であるにも関わらず「ずーっとやり続ける必要」はどこにもありません。そのくらいの距離感で、ノウハウと付き合っていけるのが一番です。

ミールログとか、日々のささやかなものごとの記録についても、自分が楽しかったり、必要不可欠ならいいけれど、上司から言われてわけもわからず書かされているような業務日誌になっているのなら、やめちゃえやめちゃえ、と、いったん中断しました。

Notionなどに代表される、「記録どんとこい!」的なツールは、フォーマットを決めてしっかり記録を残せますし、そのフォーマット作りそのものが面白さを持っているのですが、いつのまにかそうしたフォーマットに自分が従わされているような感覚がしてくるのです。そして、手間を掛けて整えれば整えるほど、そうしたものを捨てるのが嫌になります。だから、続けてしまう。従わされている感覚がありながら、継続を促される。これはもうしんどくなります。コントロール感の欠如は、著しく人の心を苦しめるのです。

どれだけ綿密な計画を立て、どれだけ努力をしても、自分ではどうすることもできない外側の要因で、あっさり道は閉ざされ、あきらめなければならないことはある。そういったことを一度ならず経験してしまうと、学習性無力感というのか、どれだけがんばってもダメなときはダメ、というあきらめの気持ちが胸の中心に居座ってしまいます。

この話は、上の段落とも関係しています。逆算的考えとは、「このように私は手帳を使っていく」というトップビジョンの提示と相似です。当然その通りにいくはずはありません。本来「使い方」とはボトムアップ的に仕上がっていくもののはずが、むしろ「かくあるべし」というトップからのビジョンが強まり、現実性を喪失してしまうのです。

でも、逆算して、一本の道をまっすぐ迷うことなく進んで、できるだけ早くゴールに着くって、理想のかたちなんですよね。

だから私はここで問います。「一本の道をまっすぐ迷うことなく進んで、できるだけ早くゴールに着く」ことは、はたして理想のかたちなのでしょうか。それは、何における理想なのでしょうか。それが理想だという価値観は、どのように醸成されたのでしょうか。

これはとても大切な問いです。現代という時代においても大切ですし、一人の人間が生きていくことにおいても大切です。「一本の道をまっすぐ迷うことなく進んで、できるだけ早くゴールに着く」ことが人間の理想となったのは、一体どこからなのだろうか。あるいは、それは人類に普遍的なものなのだろうか。

「一本の道をまっすぐ迷うことなく進んで、できるだけ早くゴールに着く」ことが一番良い状態だと言うならば、たぶん今生きている生物の進化はほとんど失敗だと言えるでしょう。さまざまな文化も同様です。むしろ、そのような形ででき上がった「良いもの」を見つけ出すほうが難しいかもしれません。

さらに気になるのは、そうした道行きが楽しいのかどうか、ということです。あるいは味わうに値する体験と言えるのどうか、ということです。

私は迷うことなく、Noだと答えるでしょう。生命は、資源を最適化するために存在しているわけではありません。意識は、エネルギーを抑制するために存在しているのでもありません。にもかかわらず、たしかに「一本の道をまっすぐ迷うことなく進んで、できるだけ早くゴールに着く」ことが良いことである、という観念がこの世界には存在しています。実に不思議な話です。これはいったいどこからやってきたのでしょうか。

道は一つではなく
迷いは豊かさであり
行ったり来りを繰り返しながら
遅くとも早くとも
どこかの場所にはつく

それを肯定できなくなったとき、人は狭い檻の中に閉じこめられます。人の心に起こる多くの問題が、そうした檻の中で発生します。なぜなら、人生は/自然は/この世界はままらないからです。短距離走を争うようには設計されていないからです。

これは手帳の話に限ったことではありません。セルフマネジメントという行為は、純然たる「管理」を含み、管理は管理される対象に影響を与えます。管理する自分と管理される自分の関係は、ときに上司と部下のようであり、それでいて契約にすら縛られない絶対的な強制力を持ちうるという点ではるかに危険なものなりえるのです。

管理者たる自分がこの世界のことわりを理解しないままに管理を続ければ、被害を被るのは管理される自分です。そのとき「ダメな奴だ」と目を向けられるのは、──現実の世界がそうであるように──管理者ではなく被管理者の方なのです。なぜならば、管理者が世界がままらないことを理解していないからです。

私はここで、日本企業におけるマネジメントスキルの圧倒的な未熟さと個人における自己管理スキルの圧倒的な未熟さを相似にみています。どちらも同じ現象の違ったレイヤーでの表れだと捉えているのです。
→フラクタルに現れる時代の精神性 – R-style

だからこそ、企業において管理者を変えていく必要があるのと同じように、私たちは管理者たる自分の目を開かせる必要があります。手帳を使っていなくても幸せに暮らしている人たちはたくさんいる。当たり前の話です。その発見は、ツールと自分との関係を再構築してくれます。ツールが上であり、自分が下であるという歪んだ感覚から離脱し、さらに自分を上にしてツールを下にする傲慢な態度も退けた上で、ツールと自分との相互的な「系」を作っていくこと。

そうしたとき、新しい「私」──管理者&被管理者──が始まっていきます。

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