R-style

Sharing is Power! / Create your own way.

Menu
  • ホーム
  • About
  • メルマガ
  • 著作リスト
  • Evernoteの使い方
  • Scrapboxの使い方
  • Tools
  • お問い合わせ
Menu
世界を楽しむ

中間管理職としての「私」の量子性

Posted on 2021 年 3 月 8 日 by Rashita
Tag:
  • 世界を愉しむ

あなたは誰だろうか。むろん「hogehogeです」という名前をもって返答があるだろう。こうした固有の名前でなくても、そうして返答する存在は、デカルトが基盤とした意識や自己といったものに近しいことは容易に推測がつくる。「私はhogehogeです」と答えている主体が、そこにいるのだ。

その主体は、認識世界における神である。神というよりも、始祖が近いだろうか。その主体があるからこそ、その世界(認識)が立ち上がる。主体が消えれば、世界も消える。その意味で、その主体=意識こそが「世界そのもの」であるのだが、それはさておくにしても、私たちの「感じ」では、そうした主体がmasterであることはほとんど前提であるように思える。

つまり、「私」の手であり、「私」の足であり、「私」の体であり、「私」の脳である、という感覚は恣意的に挟み込まない限りは、異論は生まれない。むしろ、そのような感覚的統合感こそが「私」という機能だとも言える。

一方で、その「私」(という感覚)は間違いなく脳の産物であり、「意識」という全体から見たときに前意識に位置するだけの限定的な存在でもある。ようするに、主従で言えば、従なのである。

「私」(という感覚)は、私的存在に従事している。

完全に物理的な観点を取れば(自由意志を棄却するあれだ)、上記の論はほとんど疑いないように思える。しかし、その論は最初の「私」のmaster感覚とは相容れない。その齟齬が、いろいろやっかいな問題を引き起こす。

「私」が、自分の脳の機能について文句を言うとき、それはどちらの方がより近しいだろうか。

・未熟な部下を持つ上司の気持ち
・無能な上司を持つ部下の気持ち

「私」がmasterであれば、それは前者が近しいだろう。一方で、「私」が従者であるならば後者が近しいだろう。

このどちらが正しいのか(≒真理であるのか)は、判定が下せない。少なくとも、求められる客観性を保持した真理はそこにはない。自由意志と決定論が、基本的にお互いを否定するのと同じである。片方をとれば、必ずもう片方は棄却されるのである。

一方で、これはどちらも間違っているわけでもない。ニュートン力学と量子力学のどちらも間違っているわけではない、というのと同じだ。選択される視点の位置によって、その見え方が変わっているに過ぎない(富士山は三角形か丸系か、という問題について考えてみると良い)。

よって、行為者・主体としての「私」と、一つの物理的な肉体から生じているであろう意識としての「私」は、同じ存在でありながら、視点の違いによって引き裂かれることがありうる。そして、その問題を解決する方法は根本的にはない。「絶対に視点を動かさず、他の視点など認めない」という孤立的スタンスをとらない限り、齟齬は必ず生まれてくる。

だから、その齟齬を受け入れることだ。

「私」が、自己存在のmasterである、という感覚をむやみに消さなくてもよい。私の感じだと、その感覚は(強すぎなければ)健全な感覚である。一方で、その「私」は、自己存在の支配者ではない(すべてを支配できる力を持っているわけではない)こともまた、どこかに書き置きしておくべきだろう。

なぜかと言えば、自己啓発=自己管理(セルフマネジメント)=ライフハックは、このmasterの権力拡大を意図するものであり、それは何も抑制がなければ、必ず行きすぎる(強くなりすぎる)からだ。自己存在が「私」の思い通りにならないことを嘆いてしまう。そのような状態は間違いであり、失敗であり、正すべきものであると感じてしまう。

そのような感覚は、メフィストフェレスの誘惑を容易に引き寄せるだろう。あるいは、あらゆるテクノロジーによる「自己の支配」を正当化するだろう。その結果として、私たちは自己を喪失させることになる。

完璧な自己管理が行き届いた状態とは、自己が消失した状態なのである。そうした状態は、SFの題材としては興味深いだろうが、おそらく伊藤計劃はそうした世界を描いた上で、その世界を超克する物語を描こうとしていたに違いない。私はそのように感じているし、もし可能であるならば、そうした物語を読みたいと思う。

慌てて付け加えるが、本稿はSFの批評でもないし、同様に社会批判でもない。自己啓発への攻撃でもないし、もちろん自己啓発への誘いでもない。ライフハックの話なのだ。

ライフハックを行う「私」の立ち位置を確認しておくこと。これが本稿の目的である。それは、ここまで辿ってきたように、簡単に割り切れるものではない。というか、簡単に割り切ってしまうと、その割り切り方に合わせて形状が変化してしまうものである。

だから、「私」は中間管理職でよい。未熟な部下を持ちながら、しかし無能な上司も持つという悲しい中間管理職で良いのだ。そのときどきにおいて、自己主体=人生に意志を反映させながら、それが暴走することを防ぐ網を張っておくこと。

おそらくその施策こそが、もっとも基礎的で、一番大切なライフハックかもしれない。

follow us in feedly Tweet
前の記事 次の記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

有料メルマガ配信中!

サークルもやってます

New Book!

すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術

「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門 (星海社新書)

オススメ本

→これまでの著作一覧
  • →SNS:
  • rashita2 さんのプロフィールを Twitter で表示
  • rashita さんのプロフィールを GitHub で表示

Hot Books!

→紹介記事

→紹介記事

→紹介記事

最近の投稿

  • Scrapboxの2 hop search
  • バトルフィールドはどこか
  • 今更何を書くというのだ
  • WorkFlowyのiOSアプリでキャプチャーする
  • 記憶と記録
  • Evernoteのノートリンクとバックリンク

カテゴリー

  • 0-知的生産の技術 (1,592)
    • BlogArts (123)
    • Evernoteの使い方 (179)
    • Scrapboxの用法 (104)
    • Scrivenerへの散歩道 (22)
    • アウトライナーで遊ぼう (89)
    • プログラミング (11)
    • 執筆法 (45)
    • 断片からの創造 (93)
    • 物書き生活と道具箱 (685)
  • 1-情報ツール考察 (81)
  • 2-社会情報論 (109)
  • 3-叛逆の仕事術 (393)
    • 「タスク」の研究 (261)
  • 4-僕らの生存戦略 (260)
  • 5-創作文 (92)
  • 6-エッセイ (219)
  • 7-本の紹介 (465)
  • コレクション (4)
  • 未分類 (2,836)
    • まとめ記事 (516)
    • 企画 (83)
    • 告知 (264)
    • 感想群 (111)
    • 時事ニュース (1,241)

タグ

#365日の書斎 #AppleScriptでEvernoteを操作する #「目標」の研究 #わりと身も蓋もない話 applescript blog BlogArts CategoryAllegory Dynalist Evernote GTD iPhone・iPad・Mac Logseq Scrapbox Scrivener Workflowy 〈学びの土曜日〉 「本」の未来 『「やること地獄」を終わらせるタスク管理「超」入門』 うちあわせCast ささやかな質問 ほぼ日手帳 アウトライナー アナログ道具あそび ショートショート セミナー・オフ会・イベント セルフ・ブランディング タスク管理 ノート ノート術 ポッドキャスト 哲学 思想 思考の技術 情報カード 情報摂取の作法 手帳術 政治・社会 文房具 文章の織り方 新しい時代を生きる力 書評 発想法の探求 経済・金融 電子書籍

アーカイブ

メタ情報

  • ログイン
  • 投稿フィード
  • コメントフィード
  • WordPress.org
  • Links
    • シゴタノ!
    • Lifehacking.jp
    • Word Piece
    • gofujita notes
    • 23-seconds blog
    • iPhoneと本と数学となんやかんやと
  • my favorite articles
    • 1に満たないものを繰り返し足していく
    • 冷蔵庫の裏のほこり

My Works

著作リスト

著作リスト

アーカイブ

カテゴリー

アーカイブ

  • 2023年2月
  • 2023年1月
  • 2022年12月
  • 2022年11月
  • 2022年10月
  • 2022年9月
  • 2022年8月
  • 2022年7月
  • 2022年6月
  • 2022年5月
  • 2022年4月
  • 2022年3月
  • 2022年2月
  • 2022年1月
  • 2021年12月
  • 2021年11月
  • 2021年10月
  • 2021年9月
  • 2021年8月
  • 2021年7月
  • 2021年6月
  • 2021年5月
  • 2021年4月
  • 2021年3月
  • 2021年2月
  • 2021年1月
  • 2020年12月
  • 2020年11月
  • 2020年10月
  • 2020年9月
  • 2020年8月
  • 2020年7月
  • 2020年6月
  • 2020年5月
  • 2020年4月
  • 2020年3月
  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年3月
  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月
  • 2017年8月
  • 2017年7月
  • 2017年6月
  • 2017年5月
  • 2017年4月
  • 2017年3月
  • 2017年2月
  • 2017年1月
  • 2016年12月
  • 2016年11月
  • 2016年10月
  • 2016年9月
  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月
  • 2016年2月
  • 2016年1月
  • 2015年12月
  • 2015年11月
  • 2015年10月
  • 2015年9月
  • 2015年8月
  • 2015年7月
  • 2015年6月
  • 2015年5月
  • 2015年4月
  • 2015年3月
  • 2015年2月
  • 2015年1月
  • 2014年12月
  • 2014年11月
  • 2014年10月
  • 2014年9月
  • 2014年8月
  • 2014年7月
  • 2014年6月
  • 2014年5月
  • 2014年4月
  • 2014年3月
  • 2014年2月
  • 2014年1月
  • 2013年12月
  • 2013年11月
  • 2013年10月
  • 2013年9月
  • 2013年8月
  • 2013年7月
  • 2013年6月
  • 2013年5月
  • 2013年4月
  • 2013年3月
  • 2013年2月
  • 2013年1月
  • 2012年12月
  • 2012年11月
  • 2012年10月
  • 2012年9月
  • 2012年8月
  • 2012年7月
  • 2012年6月
  • 2012年5月
  • 2012年4月
  • 2012年3月
  • 2012年2月
  • 2012年1月
  • 2011年12月
  • 2011年11月
  • 2011年10月
  • 2011年9月
  • 2011年8月
  • 2011年7月
  • 2011年6月
  • 2011年5月
  • 2011年4月
  • 2011年3月
  • 2011年2月
  • 2011年1月
  • 2010年12月
  • 2010年11月
  • 2010年10月
  • 2010年9月
  • 2010年8月
  • 2010年7月
  • 2010年6月
  • 2010年5月
  • 2010年4月
  • 2010年3月
  • 2010年2月
  • 2010年1月
  • 2009年12月
  • 2009年11月
  • 2009年10月
  • 2009年9月
  • 2009年8月
  • 2009年7月
  • 2009年6月
  • 2009年5月
  • 2009年4月
  • 2009年2月
  • 2009年1月
  • 2008年12月
  • 2008年11月
  • 2008年10月
  • 2008年9月
  • 2008年8月
  • 2008年7月
  • 2008年6月
  • 2008年5月
  • 2008年4月
  • 2008年3月
  • 2008年2月
  • 2008年1月
  • 2007年12月
  • 2007年11月
  • 2007年10月
  • 2007年9月
  • 2007年8月
  • 2007年7月
  • 2007年6月
  • 2007年5月
  • 2007年4月
  • 2007年3月
  • 2007年2月
  • 2007年1月
  • 2006年12月
  • 2006年11月
  • 2006年10月
  • 2006年9月
  • 2006年8月
  • 2006年7月
  • 2006年6月
  • 2006年5月
  • 2006年4月
  • 2006年3月
  • 2006年2月
  • 2006年1月
  • 2005年12月
  • 2005年11月
  • 2005年10月
  • 2005年9月
  • 2005年8月
  • 2005年7月
  • 2005年6月
  • 2005年5月
  • 2005年4月
  • 2005年3月
  • 2005年2月
  • 2005年1月
  • 2004年7月
  • 2004年6月
  • 2004年5月
  • 2004年4月
  • 2004年3月
©2023 R-style | WordPress Theme by Superbthemes.com