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世界を楽しむ

それを「独学」とは呼ばなくても

Posted on 2021 年 9 月 29 日 by Rashita
Tag:
  • 『独学大全』

『独学大全』が今日で発売一周年らしい。

さて、この一年はどんな一年だっただろうか、と振り返ってみるがいまいち像を結ばない。そもそも、一年前の今日はどうだったかのかすら思い出せない。それが人間である。

普段なら手帳を見返すところだが、去年はロクな記録をつけていなかったので、ここはTwitterに頼ってみる。自分のツイートを一年分振り返る、のではなく、日付を指定して検索する。たとえば、こんな感じ。

from:rashita2 since:2020-09-29 until:2020-09-30

すぐに見つかった。

ようやく『独学大全』購入できました。ちょっと笑ってしまうくらいの厚みです。 pic.twitter.com/gig00BdCl6

— 倉下 忠憲 (@rashita2) September 29, 2020

ちょっと笑ってしまうくらいの厚みの本が出て、そこから大ヒットが起こり、今ではAmazonで評価数1200を超えるほどの人気本へと成長した。たぶん、こうして入手していたときには、そこまでのヒットは予想していなかっただろう。ある意味で、コアの読書猿ファンだけが買うのではないか、という危惧もあったに違いない。しかし、結果は違った。このときあきらかに、世界線がググっと動いた気がする。

個人的言えば、「なるほど、こういう本格的な内容でも評価されるのだ」という実感を得た。いわゆる「軽く読めて、すぐに役立って、二ヶ月後には見向きもされていない本」ではなく、読者と一緒になって、その横を歩いてくれるような本がきちんと評価されるのだと。

そういう感覚があったからこそ、『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』は非常にまっすぐに、ノートについて論じてみた。実用的な側面はもちろんあるが(実用書なのだから当然である)、しかし、今日明日で終わってしまうような情報の提供の仕方ではない。ビーカーの中で何かの結晶が沈殿していくような、そんな内容の本である。

たぶん、私がこれから書く本も、多かれ少なかれそのような方向性を目指すだろう。そのような執筆が可能であり、またきちんと売り上げに貢献する(なんといっても、これはビジネスなのである)一つの実例を『独学大全』が示してくれたからこそ歩ける道である。もうそろそろ、その場しのぎのノウハウ書をとっかえひっかえするのは止めましょうよ、と。

■ ■ ■

一方で、それとは別の発見もあった。「独学大全」ブームにもまれ、私も自分なりに「独学」についてずっと考えていた。そして、そのたびごとに違和感を持った。自分がやっていることはおそらく「独学」ではない、と。

いや、スタイルで言えば間違いなく独学である。少なくとも共学と呼べるようなものはどこにもない。一方で、私は何かを学んでいるのだろうかと考えると、ひどく不安定な気持ちがしてくる。つまり、違和感を呼ぶのは「独」の方ではなく、「学」の方なのだ。

私は、別に何かを学んでいるわけではない。あるいは、それが主要な目的ではない。

そんな感覚がずっと付きまとっている。

私はそれなりに本を読むほうだが、なぜ読むのかと言えば、本を読みたいからである。本を読むのが楽しいからである。残念ながら、そこには向学心もなければ、向上心もない。単に、溢れんばかりの知的好奇心があるばかりだ。その好奇心を満たすために、私は読んでいる。

そのようにして読み続けると、「考える」という営為が楽しくなる。レゴだって、ブロックが増えれば作れるものが増えて楽しくなるだろう。それと同じだ。本を読むことで、考えることが充実し、それが新しい疑問を読んで次なる読書へと誘われる。その繰り返しだ。そこでは主体性と呼べるものはぼんやりとしか立ち上がってこない。読んでいるのか、読まされているのか、だんだんあやふやになってくる。

一方で、そのような読む・考えるサイクルを繰り返していると、徐々に自分の中に「いいたいこと」が増えてくる。いまだつなげられていない異なる二つの組み合わせを見つけた(ような気がした)り、あるいはここまでいろいろなことが言われているのに、肝心のこれについては言われていないじゃないかと不満を持ったり。そういう感覚がモクモクと立ち上がってくる。

だから私は筆を執るのだ。そして文章を、原稿を、本を書くのだ。

私がやってきたのは、基本的にこうした行為である。でもって、あくまで私の主観ではあるが、それは「独学」ではない。スタイルとしてはそうでも、なんとなくニュアンスは違う。

本を書くようになると、それに合わせて必要な知識を「学ぶ」必要がある。この部分に関しては、たしかに「学ぶ」ことをやっているし、それは独学ではあろう。しかし、逆に言えばそれはより大きな目的に付随する、一つの中間的な目標に過ぎない。本を書くときに、学ぶことは避けては通れないが、「学ぶ」ことを主要な目的としているわけではないのだ。

読み、
考え、
書いていくこと。もっと言えば何かを「つくる」こと。

そうした行為の楽しみや面白さに導かれて今までやってきたし、これからもやっていくだろう。

こういうのは所詮定義の話なので、「いやいや、それこそが独学なんですよ」と言われれば別段自分の定義に固執するものではない。ただ、そこに何一つ「学び」と呼べるものがなくても、私はこれからも本を読んでいくだろう、ということは間違いない。

自分が書く本だって、何か学問的貢献をしようというよりは、「面白く読める本を作りたい」という動機の方がはるかに強い。それこそが、私がこの仕事を続けている理由であり、「その場しのぎのノウハウ書をとっかえひっかえするのは止めましょうよ」と思っている理由でもある。だって、「その場しのぎのノウハウ書」って、あんまり面白くないではないか。

だからこそ面白い本を書いていきたいと思う。それに見合う能力が自分にあるのかどうかはわからないが、目指してみることだけはできるのである。

■ ■ ■

ともあれ、『独学大全』が発売されて以降、私はそれまでよりも本を読む時間を増やし、読書メモを作る時間を増やした。その代わり、SNSやブログを読む時間は減った。これはもうどうしようもないことだ。時間は無限にはない。私たちの行動は、常にトレードオフの産物なのである。

何かに比重を置けば、別の何かの比重が下がる。その決定に正解はない。決意と納得があるだけだ。だからこそ、人はそれぞれの違った人生を歩いていく。

だからだろう。「独学」を志す人には共感を覚えるのだ。たとえ私のやっていることが「独学」とは呼びがたくても、ある精神や姿勢に共通点があるように思う。そうした人たちが、自分の道を歩んでいけるなら、素晴らしいことだとも思う。

独学者とは、必然的にアウトサイダーである。彼ら彼女らは否応無しに「自分の方法」を構築しなければならない。その点が、私が進んでいる道と重なるのだ。読書の人生に、手引き書はない。決意と納得があるだけだ。

結局のところ、どのように呼称をしようが、知の営みに終わりはない点は変わらない。人生というやっかいなストッパーに歯止めをかけられるまで、その営みは続いていく。

だからまあ、お互いにゆっくりじっくりやっていこうではないか。あらゆるものが逃げていっても、本とノートはそこにたたずんでいてくれるのだから。

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