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デイブ・ワイナーのDrummer

Dave Winer(デイブ・ワイナー)の Drummer が公開された。

Drummer: About Drummer

上記ページにあるように”Web outliner, blogging, scripting, workgroup organizer.”なツールである。Webで使えるアウトライナーであり、ブログにもなり、コードも書け、作業グループのオーガナイズも可能になっている。盛りだくさんだ。

とは言え、盛りだくさんデジタルノートツールであるNotionとはかなり毛色が違う。モダンの最先端を突っ走るツールはことごとく違っている。たとえば、ツールのデザインはどのようにお世辞を駆使したところで格好良くはない。

上部にタブが並び、左にコマンド用のボタンが並ぶ。それだけだ。カラーリングもシンプルであり、HyperCardのような懐かしさすら覚える。コマンド用のボタンにある「十字の矢印」をクリックすれば、arrow padと呼ばれる、まるでiOSのゲーム用ソフトウェアコントローラーのようなものが表示されるのだが、それをクリックすることでアウトライン操作などが可能になっている。……。まあ、クールではない(もちろん、ショートカットキーでの操作も可能である。念のため)。

また、Notionが一つのページに多様な要素を埋め込めるのに対して、 Drummer は基本的にアウトライナーである。それ以上でも、それ以下でもない。一方で、まさにその「ただのアウトライナー」が前述したような多様な機能を持ちうるというのが、Drummerの面白い点であり、Dave Winer の思想がもっとも顕著に現れているポイントでもあろう。

アウトライナーの機能については、おおむLittle Outlinerと同様と考えていい。クラウドで使えるアウトライナーであり、Twitterアカウントと連携することによって、アウトラインの項目を一つずつ(あるいは複数個を連ツイとしてまとめて)ツイートできる機能を備えている。この点が、まず面白いではないか。

自分のための「ノート」であるアウトライナーから、一歩も動くことなくツイートができる。ここでは内部と外部が接続されている、あるいはそのためのドアが設置されていると言えるだろう。

さらに、だ。Drummer においては blog.opml というファイルを作り、そこでいくつかの手順を行えば、そのファイルの内容そのままの「ブログ」を作ることができる。メニューの「file」に”Make outline public”があるのでそれを選択し(いろいろ表示されるが無視して構わない)、その後、「Tools」メニューから”bulid my blog”を選択する。それだけでブログが「公開」できてしまう。

以降は、”bulid my blog”を実行するたびに、内容に合わせてブログがアップデートされることになる。リアルタイムで常に更新が反映されるのではなく「よし、ここまでを公開しよう」と思ったタイミングでブログをビルドすることができる。選択権は自分にあるわけだ。

もちろん、この blog.opml もまたアウトライナーとして管理されるので、構造の組み替えはお手のものである。トピックをコピーしたり、順番を入れ替えたりが簡単にできる。アウトライナーで「構造」を考えて、その後「文章」を書いて、「記事」を公開する、という一連の手順が一つのツールの中で実践できるのだ。いや、むしろ話は逆だろう。まず「自分の考えをまとめるツール」としてのアウトライナーがあり、その一部をブログとして切り出すための機能が Drummer には備わっていると捉えたほうがいい。ブログを書くためにアウトラインを操作するのではなく、考えるためにアウトラインを操作し、その結果をブログとして外部に向けて表示する、というわけだ。ここでも内側と外側のシームレスな接続が意識されている。

ちなみに、blog.opml はごく普通のアウトラインファイルであり、Tak.が定義するところの「プロセス型アウトライナー」なのだが、ブログの公開においてはこのファイルは「プロダクト型アウトライナー」のような働きを持つ。つまり、それぞれの項目の構造的高さ(/深さ)に、構造・スタイルとしての意味が付与されるのだ。

たとえば、日付項目の直下の項目群は、記事における見出しとして機能する。ただしその見出しとなる項目の下に項目がなければ、ただの本文として扱われる、といったところだ。一般的なプロセス型アウトライナーはもっと構造的に自由に使えるのだが、ブログとして公開する場合は、こうした点を意識する必要がある。これは非常に興味深い話である。操作するための構造と、閲覧するための構造でスタイルの要請が異なる、ということなのだ。

さらに言えば、このアウトライナー(opml)→ブログの変換は Old School を通して行われているのだが、変換された記事では、いわゆるインデントはなくなっているし、見出しには見出し用のfont styleが当てられている。それによって、ぐっと「読みやすく」なる。むしろ、こうしてブログ記事として公開した後だと、いかにもアウトラインが「読みにくい」ことがわかるだろう。

情報的に同じものを保持しているにしても、スタイルの違いによって、これだけ大きな違いが生まれるのである。だとすれば、デジタルデータではこうした変換を通すことが容易なので、編集のためのスタイルと閲覧のためのスタイルを入れ替えていける、という点は大きなメリットと言えるのかもしれない。

その他、アウトライン操作用のJavaScriptが書けるとか、アウトラインの変更点(およびその通知)を他者と共有できるなどの機能が Drummer には備わっている。そのすべてについてここで論じる余裕はないが、ここまで書いてきた話だけでも、検討に値する内容がそうとうに含まれている。

プロセスごとに切り分けるのではなく、「考えるためのツール」をベースに置き、そこから外に向けて発信/切り出しを行っていく、ということ。操作のための形式と、閲覧のための形式は異なっていても構わない(というか異なっていてくれた方が嬉しい)ということ。

前者については、一昔前にEvernoteのノートを、ブログの一記事として公開できるツールがものすごく便利だったことを思い出す。自分のメモ書きにせよ、ブログの記事にせよ、すべてはまず「自分のノート」として定着化するのだから、後はそこから発信できたら便利だよね、という話はきわめて自然であるように感じられる。

一方でこれは、「すべてを単一のツールでやり抜く」というのとは違っている。Drummerも、Twitterとの連携や、Old School 経由のブログ作成など、他のツールを通すことで、一つのツールを使いながらも、違った形で情報を利用可能にしている。あたり前だが、あることに得意なツールは別のことが苦手なわけだから、そこは連携でブリッジをつないでいくのが望ましいだろう。

しかもこの Drummer は、自分でScriptも書けるので、そうした連携の可能性も多様に広がっていると考えられる。

これこそまさに、デジタルにおける「自分のノート」の一つの在り方ではないか、とすら思えてくる。

もちろん、先ほども述べたが全体的な操作感などはまったくモダンではないので、使い勝手についてはかなり評価が分かれるだろう。しかしそれはそれとして、この Drummer が指向するツールの方向性は、今までのツールが持っていなかった──というよりも、忘れ去られていた──形ではないかとすら思えてくる。
*一番近しいのはScrapboxで、唯一単一のプロジェクトで内と外の情報を切り分けられない、という点が異なっている。

最近は「アプリケーション化」が進み、それぞれのアプリに情報が閉じこめられがちなわけだが、そうしたものとは違う open さを持ったツール開発が活性化することを期待したい。

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