Sharing is Power!

Rashita’s Christmas Story 13

アイテムボックスの通知欄に+1の表示が増えていた。先ほどの戦闘の結果ではない。あのスライムはドロップなしの代わりに経験値が高いモンスターだからだ。だとすれば、帰り際にすれ違ったやたら赤い装備のプレイヤーだろうか。たしかにレベルが高そうだったし、気まぐれでアイテムをくれることもあるかもしれない。

新しく獲得したアイテムはロングソード+3だった。まさに俺が今求めている武器だ。さすがにショートソードでの連戦は厳しい。鍛冶代をけちった俺が悪いのだけども、戦闘中にロングソードが砕けちったときには本当に焦った。

特に何も考えることなく、俺は取得したばかりのロングソードを装備した。たぶん、そのときに俺のアバターにはウィルスが仕込まれていたのだろう。

言いもしれぬ感情が湧き上がる。義侠心、義憤、それとも?

たまたま通りがかっただけだった。注意を向けるのでもなく注意を向けると、一人の冒険者がスライムと戦闘している。経験値は高いが、硬度が高いタイプのスライムだ。おそらく負けることはないだろうが、何が起こるかわからないのが戦闘でもある。それに間合いが少し辺だ。ショートソード使いにしては踏み込みが甘い。慣れていない武器を使っているのだろうか。

俺は少し考えた。このまま戦闘に勝利することはできるだろう。しかし、その後はどうか。ソロ冒険者らしき彼は、きっと帰路での戦闘に苦労するだろう。

手助けを申し出るべきだろうか。いや、それは適切な行為とは言えない。冒険者は一人で立って生きてくべき存在だからだ。それができないようであれば、さっさと引退するしかない。

では、見逃すべきだろうか。そう考えたとき、俺の中のウィルスが急激に活性化し始めた。そんなことはすべきではない、という気持ちが強まっていく。その気持ちに確固たる理由はない。論理的な説明もできない。しかし、その強度は確実だ。俺の中には「べき」の空気が充填されていく。

戦闘を終えたばかりのその冒険者のそばを通りかかるとき、俺はそっと手持ちのアイテムをエアードラッグした。最近はまったく使わなくなっていたロングソード+3。どうせ俺が持っていても使い道はないし、道具屋で売っても二束三文にしかならない。でも、彼にとっては違うだろう。

俺は、普段の真っ黒な鎧の代わりに、てかてかと光る赤い鎧を装備して、そのままその冒険者の横を通りすぎた。後でお礼を言われても困るから、ちょっとした変装だ。

ふと、何かを思い出しそうになった。何かが脳の奥底をつついている。似たようなことがどこかであったのか。思わずサーバーのログを検索しかけたが、詮無いことだと諦めた。俺たちの経験を毎秒ごとに記録し続けているメインサーバーは、すべてのことを記録している代わりに、そこから何かをとり出すのはきわめて難しい。せいぜい直近の出来事をピックアップするのが精いっぱいだ。

俺は頭を振って、その「つつき」を追い払った。そして、自分が向かうべきダンジョンへと歩みを進めた。後は振り返らなかった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です