以下の二つの記事を念頭に話を進める。
今回考えたいのは、二つの「アウトライナー」の違いだ。
Logseq
Logseqはデイリーベースである。
毎日その日用のページが自動的に作成される。私たちは日ごとのメモ・ノートをそこに書きつける。使用感としては、手帳(デイリープランナー)に近い。一日一日を着実に進めていく感覚だ。
そうして手帳的に日ごとに情報を分けて記述しても、リンクによってそれらをつなげることができる。同一の対象についてのメモならば、そのリンク名の項目を作り、その下に書き込めばいい。そうすれば、クリック一つで過去の書き込みすべてにアクセスできる。
デイリーベースで書きながらも、情報を串刺して呼び出せるのはデジタルツールの強みだろう。
ともかくLogseqでは、デイリーページをベースキャンプにして記述を進められる。その場合、テーマやプロジェクトなどは、その下位の概念に位置づけられるだろう。主体は日付で、テーマやプロジェクトはリンクとして補佐的に設置される。そんな感覚だ。
こうした感覚は、日々(daily)を通して考える、と表現できる。今日も考える、明日も考える、明後日も考える。そのような日々の足跡が残っていくのがLogseqである。
WorkFlowy
一方で、WorkFlowyはデイリーベースではない。デイリーの項目を作ること自体はできるが、それは決して主役にはならない。別の言い方をすれば、特別な立場に置かれることがない。あくまで、全体の中の一項目という位置付けに留まる。
そのことはHome画面に戻ればはっきりするだろう。Logseqでは「〈今日のノート〉」が表示されるところが、WorkFlowyでは階層の全体が表示される。WorkFlowyにおいての主役はこの「階層」というわけだ。日々の項目も、この階層の中に位置づけられる。
もちろん、日々以外の項目を作ることもできる。それらは入れ子状の階層を作ることができ、それがいわゆる「アウトライン」と呼ばれる概念に相当する。そうしたアウトラインをいろいろ操作しながら作り上げていくことがWorkFlowyでは可能だ。
その操作において、日付は主役ではない。だから、どんな操作がどんな日時に行われたのかがWorkFlowyではたいした意味を持たない。むしろ、そこにどんな階層が作られているのかが重要である。
この感覚は、階層(class)を通して考える、と表現できるだろう。そこにある階層群(classes)を見ながら、考えを進め、何かをプロセスしていくのだ。
二つの「考えるためのツール」
アウトライナーは、間違いなく「考えるためのツール」(Tools for Thought)ではあるが、LogseqとWorkFlowyはそれぞれ異なるタイプでそれを支援してくれる。
- 日々(daily)を通して考える
- 階層(class)を通して考える
こうした要素は、ある種の型とも言える。完全に自由な思考ではなく、ある枠組みの中で考える、ということだ。一見すると、完全な自由でないのだから見劣りしているような感覚があるかもしれないが、実際は何かしらの枠組みがないと、思考は不可能なのである。よって、何かしらの型が設定されているのは有用であり、その型がツールによって変わってくるのは私たちの(思考の)選択肢が増えることを意味する。
ただし、型には「狭めすぎてしまう」という弊害ももちろんある。上記の二つの言い換えれば、
- 日々(daily)の中で考える
- 階層(class)の中で考える
となってしまうわけだ。前者は「日々」を超えるのが難しく、後者は「階層」抜きの思考が難しくなる。
「日々(daily)の中で考える」は、その日に集中するのは向いているが、週間、月間、年間、人生に思いをはせることが難しい。基本的に人間なんてものは、一日に集中していればそれだけで時間が過ぎていくので、意識的に「日々」を超える視点を設けない限り、それを見ようともしないだろう。
逆に「階層(class)の中で考える」は、その階層に含まれない情報を見逃すことがある。たとえばアウトラインにこだわるあまり納期やコストが度外視になったりする。またアウトラインの変化には「足跡」が残らない。新規作業をするたびに複製をしない限り、ログが残っていかず、進捗感が得にくい。こうしたものも、意識的に取り入れないと見過ごしてしまう情報である。
結局のところ、一つの型を盲信しすぎると他のものが見えなくなってしまうことがありうる。その点には注意が必要だろう。
さいごに
もちろん、上記のような問題はツールの「使い方」によって解決(ないしは緩和)できるだろう。しかしながら、情報整理ツールが何かしらの方向性を持ってデザインされている限り、そのデザインから外れる方向性は常に見失ってしまう可能性がある、という点は留意しておいた方がいい。
かといって、「全方位」に対応できるツールを期待するのもいささかやりすぎである。それは「ユートピア」(どこにもない場所)に近しいものだろう。
だからこそ、いくつかのツールやノウハウを組み合わせてもっておくのが良い。たぶんそれは、普遍的なライフハックと言えるだろう。