それはデスクトップなのか

デスクトップは「机の上」や「卓上」を意味する。パソコンではデスクトップ型とラップトップ型の対比があり、片方は机の上において使うタイプを指し、もう片方はひざの上においても使えるタイプを指す（ラップトップだって机の上において使うことが多いだろうが）。

さて、ややこしいのはもう一つデスクトップがあることだ。パソコンを開いて（OSを起動して）表示される画面もデスクトップと言われる。よく整理の下手な人がファイルを散らかしているあの場所である。

最近つとに思うのだが、その場所は本当に「デスクトップ」なのだろうか。おおむね、パソコン画面内のデスクトップとは「卓上」を意味しているだろう。しかし、あなたの机の上はそんな感じになっているだろうか。ファイルだけが並んでいる？

現実の「机の上」は、もっと乱雑だろう。散らかっている（散らばっている）ということではなく、ファイル以外のさまざまなものが並んでいるはずである。文房具、読みかけの本、もらったお土産、捨て忘れている紙くず、愛する人の写真……。

こうしたものが雑多に並んでいる場所が、あるいは並べることが可能な場所が卓上＝デスクトップである。

最近では「ウィジェット」といった機能でファイル以外のものもようやく並べられるようになってきたが、それでもまだ制約は多いと言えるだろう。現実のデスクトップには及びもつかない。さらに言えば、そうしたウィジェットを使わない場合はもっとできることが限られる。ファイルしか、ファイルのアイコンしか並べられない。サイズも均一だし、操作をしないと中身もわからない。そんなものが並んでいる場所がはたして「デスクトップ」なのだろうか。

輪をかけてややこしいのが、そのデスクトップに「窓」が開くことである。GUI型のOSであれば、ウィンドウとしてアプリケーションが開く。しかし、「机の上」に窓が開くことはない。窓が開くのは「机の前」である。

とは言え、その空間も「デスクトップ」と言えばデスクトップであろう。間違いというわけではない。つまり、机に対して並行の面であるデスクトップと垂直の面であるデスクトップが存在しているのだ。でもって、パソコンのそれはかなり窓＝垂直寄りの構成になっていると感じる。

私は「机の上」的なデスクトップが欲しい。いろいろなものをわちゃわちゃと置いておける場所。メモもファイルも画像もスクリプトもリンクも置いておける場所。しかも見え方が均質ではなく、さまざまに変えられる場所。そういうデスクトップを欲する。

もしかしたらパソコンのOSを作っているような人の机の上はものすごく奇麗に片づいているのかもしれない。だとしたら現状の「デスクトップ・メタファー」は非常に正しいモデル化を行っているのだろう。しかし、私の机の上はそうではないのだ。私には、私のメタファーがある。

だからといってさすがにOSから自作するつもりはないが、それでもいろいろな叛逆はできる。