7-本の紹介

書評 グーグル時代の情報整理術(ダグラス・C・メリル)

グーグルの元CIOである、ダグラス・C・メリルが自らの情報整理術を公開。しかし、箱を空けてみると、彼のデスクの上は想像していたような整然としたものではなかった。

グーグル時代の情報整理術 (ハヤカワ新書juice)
グーグル時代の情報整理術 (ハヤカワ新書juice) Douglas C. Merrill

早川書房 2009-12
売り上げランキング : 327

おすすめ平均 star
star決してデジタルだけの話ではなくて
starいつでも検索できる時代だけに、技もまた進化する

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本書は大きく分けて3つのパートからなる。

  • パート1 自分を客観的に見つめ直す
  • パート2 新時代の整理術を身につける
  • パート3 大小さまざまな困難に打ち克つ

この3つのパートの中に15の章が入っている。注目すべき点はいくつかある。まずそれぞれのパートについて見ていく。

パート1自分を客観的に見つめ直す

これは、脳の制約という所から始まる。このパートのポイントは3つある。

ポイント1:私たちの脳は記憶があまり得意ではない。また意志決定も苦手である。
ポイント2:現代社会の構造は古い産業時代の構造を引きずっていて不合理なものがたくさある。そこで生活するだけで我々の脳はストレスを受け続ける。
ポイント3:思いこみや自分の能力といった制約を知る必要がある。

これらを踏まえた上で「目的を明確にすることが重要」と著者は説く。p97より要点を引用する。
(以下タイトルの無いものは全て「グーグル時代の情報整理術」よりの引用)

p97
目標と制約は裏表の関係だ。制約は障害だが、目標は可能性だ。このふたつを明確に理解することが、最小限のストレスと労力で成功を収めるキー・ポイントとなる。物事を整理するには、現実的な制約を念頭に置きながら、目標に沿った行動を取ることが重要だ。

我々の脳の能力不足を補うためには、なるべく集中してそれを使う必要がある。あれも、これもスタイルでは結局何も手に付かない状況を生み出してしまう。そこで道を見失わないためにも目標を設定する必要がある。

また、社会の構造や自分の能力が「現実的な制約」にあたる。これはレースに例えればコースの形や障害物ということになる。直線で真っ直ぐ進めるポイントもあれば、速度を落として急カーブに備える必要のあるポイントもある。ある地点ではぽっかりと穴が空いているかも知れない。

目標地点とコースの状況を把握すれば、進みやすくなることは間違いない。行くべき場所も、コースの形も分からなければ、まったく違う場所にたどり着いたとか、壁にぶつかり続けて車が故障する、という事態が頻繁に発生するだろう。

これは、「整理」に限った話ではない。何かをなす場合はこの二つをしっかりと認識しておくことで効率的に物事を進めていくことができる。

パート2 新時代の整理術を身につける

新時代の整理術の要は「整理せずに検索すること」である。これはすでに多く語られていることなので深くは言及しない。とりあえず、これからは「検索力」が物を言う時代になることは間違いないだろう。
※加えてネットワークメイキング力も必須のスキルである。これはまた別の記事で書く

今回は第8章の「紙とデジタルの使い分け」についてだけ見ていく。

紙とデジタルの使い分け

著者は基本的にデータ(情報)はクラウドの中に保存している。しかし紙ベースの情報を扱う時もあるという。紙にももちろんメリットがあってそれに合わせて使い分けをしている、ということだ。以下に著者がどのように紙を扱っているのかを列挙する

・頭の中をきれいにする→紙に書き出すとスッキリする
・問題を解決する→ブレインストーミングに役立つ
・膨大な文字の情報を消化する→ディスプレイでは見逃しがちな物事に気がつく
・明細書を受け取る→税務申告には紙の書類が必要
・法的文章を保管する→信憑性が高い。

また、著者はコラムの中で自分の意志とは関わりなくやってくる紙の書類についての対応も述べている。重要な点は「もし、デスクにまったく書類を置かないようにするなら、書類を受け取ったときに、いつもどのような用途で使うかを予測しなければならない」(p184)という点だ。その後に続く著者の言葉に私も同感する。

それは無理だ。私には、そんな能力はない。

極端に限られた相手、融通の利く相手と仕事をしているならばともかく、普通のビジネスパーソンは、どんな書類がどのような用途で利用することになるかについて、完全には予想できないのではないだろうか。

著者の仕事場のデスクの上には書類の山ができているそうだ。しかしそれは一定のワークフローに基づいて整理された山である。少なくとも著者にとってそれは十分利用可能な整理された机なのだ。

p186
したがって、私からのアドバイスがあるとすれば、書類がまったくないデスクを目指すよりも、書類を文脈、保管目的、必要な対応別に分類し、忘れないようにせよ、ということだ。どんなに散らかっているように見えても関係ない。あなた自身にとって合理的なら、それでかわまないのだ。それこそ、本当の”整理整頓”ではないかと思う。

また、興味深いのがメモについてのアプローチである。同章でメモの重要性について語られているのだが今日本で人気になっているアプローチとは逆の方法である。

p192
メモがさまざまなノートに分かれてしまうという欠点を最小限に抑えるには、各ノートのテーマをひとつに絞るとよい。たとえば、あるノートは健康問題専用にする。医者を訪れたとき、情報が短期記憶に残っているうちにメモを取ることが重要だ。

これは奥野宣之氏の「情報は一冊のノートにまとめさい」とは逆のアプローチである。「情報は一冊のノートにまとめなさい」はタイトル通り、一冊のノートに全ての情報を詰め込む方法を提案している。

「情報は一冊のノートにまとめなさい」p5
一冊のノートにまとめるのは、何も携帯性の問題ではありません。
多くの人は、打ち合わせノートやスケジュール帳、メモ帳、ネタ帳、日記帳など、目的に応じたさまざまなノートを分類して使い分けているようです。
実はそうした分類こそが、継続性を阻害しているのです。一見きれいに分類したノートは、使いやすそうに思えますが、いずれ煩わしくなります。それによって頻繁に参照することもなくなってきます。

まとめると、情報が散らばると参照するのが煩わしくなるから、一冊のノートにまとめた方がより「使い勝手があがる」ということになるだろうか。

このどちらが「真実であるか」ということを決めるのに意味はない。この二つのやり方から見えてくるのは「メモの扱い方ですら一様でない」ということだ。

p203
本書の目的は、紙とデジタル・デバイスの使い分けを教えることではない。それは、あなたにしかできない判断だ。私が伝えたいのは、そのような判断を行うときには、情報の目的や目標を念頭に置いてほしいということだ。いつ情報が必要になるのか。情報をどのように利用するのか。いつまで残しておく必要があるのか。誰と共有すべきなのか。それを念頭に置いた上で、合理的で便利な信頼できるシステムを見つけ出してほしい。

この部分こそが、本書の最も重要な部分である。「教わる「整理術」から、確立する「整理術」へ」[シゴタノ!]でも書いたが、誰かのお着せの整理術などほとんど無意味といっていい。キーとなるのは自分の扱う情報について知り、それをいかに保存、管理することが目的にあっているのかを理解することだ。
扱う情報についても、それを使う目的にしても本人以外は理解しようがない。

さまざまな整理術で紹介されているノウハウからエッセンスを抽出した上で、自分なりの応用を見つけ出していくことが整理術の構築には絶対的に必要なのだ。

それを踏まえた上で、このパート2で紹介されている様々なテクニックをご覧になるとよいだろう。

パート3 大小さまざまな困難に打ち克つ

このパートでは心理的なハックが紹介されている。このパート部分も海外のライフハック系のBlogではよく取り上げられているネタなので今回は割愛する。

本書のまとめとして重要な点は、「整理術は何かを完璧にコントロールするものではない」、ということ。もし完璧な整理術を作り出したら、つまり過剰適応してしまったらば、予想外の出来事に対して非常に脆くなってしまう。

変化の多い、先の読めない人生において整理術は常にアップデートされていかなければならない。ある程度フォローしきれないものがあってもよい。完璧にコントロールする必要もない。日常生活がある程度円滑に進められて、かつ「想定外」の事態に対応できる心の余力を残しておくことができればそれで十分である。

自分のスキーの体験を回想した後に著者はこう続けている。

p336
私は、この体験をよく思い出す。衝突する前にすべてのコブを予見することなど、誰にもできない。木を動かすことも、斜面の傾斜を変えることもできない。私たちにできるのは、前に進むことだけだ。ワクワクしながら、無事に”生きて”ふもとまでたどり着けると信じて。

そう、整理することはワクワクして生きていくための補助手段でしかない。やっきになって「完璧な整理術」を追い求めたところに、きっと人生の幸福など待ってはいない。

あなたは毎日「ワクワク」しながら生きているだろうか。

関連書籍:

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