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「戦略の不条理」から考える個人へのQGSの応用

常に適応し続ける戦略の性質とはどのようなものだろうか?

戦略の不条理 なぜ合理的な行動は失敗するのか (光文社新書)
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本書は戦争における戦略がどのような発展をみせてきたのかを辿りながら、企業がどのような戦略的アプローチをとれば生き残っていけるのかを提案している。
※サブタイトルは「なぜ合理的な行動は失敗するか」

この本の要点は一つ。キュービック・グランド・ストラテジー(以下QGS)である。さてこのQGSとは何だろうか?そしてこのアプローチは戦争や企業だけが使えるものなのか。個人でも応用ができないか考えてみたい。

QGSとは何か

簡潔に二つの原理だけを示す。
QGSの原理1:多元的アプローチ
QGSの原理2:批判的アプローチ

多元的アプローチ

哲学者のポパーはこの世界が3つの世界から成り立っていると主張した。その3つの世界とは

・物理的世界
・心理的世界
・知性的世界

である。
「物理的世界」は物そのもの。椅子や机であったり人間の身体などがこれに属する。
「心理的世界」とは人間の心理、心的状態が属する世界。
「知性的世界」は知識や理論などが含まれる世界。
これら3つの世界が「心理的世界」を媒介として緩やかなつながりをもっている。

多元的アプローチとは、3つの世界に対してそれぞれアプローチしていく、という手法のことである。単一の世界へのアプローチだけでは世界の変化についていく事ができず、戦略は失敗に終わる。

例えば、よい機能で安い価格ならば商品が売れるか、というとそうでもない。人が物を買うのにはそれ以外の理由がいくつもある。好き、嫌いの感情であったり、単に「使い慣れている」という理由で価格の高い商品を買い続けるときもある。

「よい機能・安い価格」は物理的世界へのアプローチのみだが、この世界はそれだけの要素で成り立っているのでは無い。その事実を認識し、それぞれの世界へのアプローチを考えていく、というのが多元的アプローチだ。

批判的アプローチ

ある時点で3つの世界に対して適切にアプローチできる戦略を考え出せばそれでおしまい、というわけではない。世界は小さく、時に大きく変化している。真なる「合理的」な戦略はその変化に対応していく必要がある。

それを実現するのが批判的アプローチだ。

つまり、成功している戦略を常に批判的な視線で見つめ、新しい改良を加えていくということだ。このアプローチが無ければ、いずれ戦略は「時代遅れ」になってしまう。

個人への応用

以上がQGSの骨子だ。さて、このQGSを個人、例えばビジネスパーソンで応用する事はできないだろうか。私は「自身の成長」と「セルフ・ブランディング」において活用できると思う。以下にそれを示す。

自身の成長

ビジネスパーソンにとって成長は必要不可欠なものだろう。しかし「学び」は難しい。

いかに学ぶかを考えれば、まず知識を得るという答えになる。しかしそれだけでは十分ではない。これは「知性的世界」へのアプローチでしかない。自分自身を成長・変化させていくためには残り二つへの世界にもアプローチしていく必要がある。

陽明学に「知行合一」という命題がある。

知識として知っているのに、それを行わないというのは知らないと同じ事である、という考えから実践を重要視したのが陽明学である。

しかしながら、これは難しい。なぜならば3つの世界理論でいうと知性世界と物理世界は直接はつながっていないからだ。間にある心理的世界がその二つの世界をつなげている。知識を行動に移すためにはかならずこの心理的世界を通さなければいけない。

「なぜ、ノウハウ本を実行できないのか」で提示されている行動に移せない3つの理由も絡めて考えるとこうなる。

1情報過多→知識として沢山仕入れても心が認識できるものはそれほど多くない。ある程度数をしぼるべき。

2ネガティブなフィルター装置→その知識を信頼する必要がある。こんな事に意味があるのか?では心理的世界は通過できない。

3フォローの欠如→上に近い。知識を実践してもすぐに効果が出るとは限らない。そのときに「このやり方で本当に大丈夫か?」と不安になっては心理的世界で妨害が行われてしまう。

そして、この3つめに提示されているフォローがそのまま「批判的アプローチ」になる。

この3つめは単純には理解できない。「批判的アプローチ」は今のやり方に対して懐疑的になる事だ。それは不安要素を生まないのか?という疑問が当然出てくる。これは以下の二つの違いとしてとらえればよいだろう。

・「このやり方で大丈夫だろうか?」
・「このやり方は今のところ大丈夫だが、将来も大丈夫だろうか、もっと別のやり方はないだろうか?」

上は、そもそも今のやり方が大丈夫なのかそうでないのかがわかっていない。いわば軸となる要素がない。下の方は土台は確保しながらも別の変化の可能性を探っている。この両者は大きく違う。

「学び」は行動に移すこと。そしてそのためには心理的世界を通す必要があることを認識しておけば、自らの成長に役立つはずである。

セルフ・ブランディング

次は、セルフ・ブランディングについて。これはQGSが企業のマーケティングで使える事をそのまま個人マーケティングに応用しただけだ。それほど難しい話ではない。

例えば、ブログ。

ブログは単に内容の良い記事を書けばそれだけでアクセス数が伸び、知名度があがるというものではない。
例えば、ブログ管理人の個性が人気に影響する事は多々あるし、また記事の見せ方(文字の大きさや、文章の長さ)なども影響してくる。

これらの要素は3つの世界に属しているので、どこかの要素だけ特徴があったとしても人気が出るのは一時的で、長く広く指示される可能性は低い。
それぞれの世界に対してアプローチを加えながら、常に改良点を探す。
※例えば現在人気のあるブログを分析したり、逆に人気のないブログを分析したり、といったこと。

これが、持続可能性の高いブランディングの戦略である。

例えば、「レバレッジ・シリーズ」で有名な本田氏は現在は一切そのシリーズで本を書いていない。これは批判的アプローチで自身のブランドを見直した結果であろう。こうして常に世界に適応しうるブランド作りを意識していくことが真なる「合理的な戦略」と言える。

まとめ

我々が存在するこの世界は単一ではない、という考えは大変重要だ。物理的、心理的、知性的世界が存在し、それぞれが独立しながらも影響を与えている。そしてその中心にあるのが「心理的世界」というのがポイントであろう。

物が豊かになり、便利さがそこら中に溢れかえる社会においては、ますます「心の働き」の持つ意味は重要さを増してくる。それは人間が人間としての存在理由を確保するための唯一の資源である、といっても過言ではないだろう。

我々はパンのみに生きるわけでもないし、知識のみに生きるわけでもない。ちょうどその中間あたりに「人間が人間たる理由」が隠されている気がする。

参考文献:

なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本
なぜ、ノウハウ本を実行できないのか―「わかる」を「できる」に変える本 門田 美鈴

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