読んでいる間中ほっこりした気分にひたれました。
文房具を楽しく使う ノート・手帳篇 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) |
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※2010年1月25日発行の本ですが、内容は2004年発売の作品を文庫化したものです。
カバーのバックが方眼になっているという、いかにも「ノート好き」の心をくすぐるデザインです。
構成は大きく三部に分けられており、それぞれノート篇、手帳篇、応用篇となっています。
全体を通して文房具に対する控えめながら強い愛情が伝わってくる内容です。
p20
気に入ったデザインのノートを思い通りに使いこなせたときのうれしさは格別ですよ。ノートは使い手の個性を表わし、使い手はノートによって生活を変えられるんです。そんなノートは私たちにとって、とても身近でステキなツールだと思います。
この文章に共感できる方は以下を読み進めて下さい。全く興味がない・共感ができないというかたは別のタブへ移動して下さいね。では。
クラウド時代のアナログノート
手帳とノートというのはビジネスパーソンが仕事をしていく上で必須のツールだと思います。最近は手帳機能を代用できるスマートフォンが人気ですが、スマートフォンオンリーという方の数はまだまだ少ないのが現状です。
それは、人が惰性の生物で手帳という習慣から逃れられない事が理由ではないと思います。手帳の中に含まれていた「手帳機能」を必要としなくても、別の求められている機能が手帳には存在する、そんな風に私は思います。
ノートに関しても同様で、いまやいくらでもパソコン上にノートを作ることができます。自分のパソコン内だけではなく、ウェブ上にブログとして公開することもできますし、クラウドサービスを使えば複数のパソコン上でそのノートファイルを共有することもできます。
それでも、手書きのノートはまったく廃れていません。むしろこういったクラウド化が進む中で、ノートは再び注目されています。書店のビジネス書のコーナーに行けば、ノート術、手帳術の本はいくらでも見つけられます。販売されている手帳のバリエーションも豊富で、この市場が持っている顧客の数が想像されます。
手帳にしろ、手書きのノートにしろ、それと共通する機能を持つ「デジタル・ノート」(あるいはデジタル手帳)が一般化することで変化が起きていると思います。
昔は単に情報を記録しておくための物としか認識されていなかったノートが、似たような機能を有するデジタルツールの登場により「手書き」でしか得られないものや「アナログの強み」がはっきりと見えるようになった、ということでしょう。
多くの文房具好きはこういった「アナログの良さ」を知っておられると思います。そしてその良さが強く認識される時代、それが現代の「クラウド化」した社会ではないでしょうか。
この本は「手帳」や「ノート」そのものについての本です。使い方よりも「そもそもノートとは」といった事や有名メーカーのノートの紹介に重点が置かれています。多少テクニック的なものは紹介されていますが、それも提案というよりは自分のやり方の紹介という程度です。
以下はノートの綴じについての解説の部分です。
p32
バラバラの用紙が綴じられてはじめてノートになります。ですから、綴じの種類によってノートはその性格を大きく変えることになります。
例えば糸綴じなのか、リング綴じなのか、それだけで使い勝手や製品の風情はまったく違います。紙の上端を綴じますと手持ちでの筆記に便利なメモ機能が一気に高まります。でも閲覧性(特に裏ページの)は低下しがちです。
このような感じで、ゆったりとした軽い文体でノートの性質について語られています。そこにはノートに対する強いこだわりというよりも、愛着からくる誇らしさのようなものが感じられます。
20年以上育ててきた自慢の娘を紹介するお父さんならば、きっとこんな感じの雰囲気になるのだろうな、そんな気がします。
また、それぞれのノートについてメリットとデメリットがきっちりと紹介されています。そのあたりもこれから文房具道に入門される方には参考になるでしょう。
まとめ
いま「ノート術」や「手帳術」の人気は非常に高いと思います。
でも、私はこう思います。
ノート術や手帳術を知る前にノートや手帳そのものについて知るべきではないだろうか。
正直に言って、ノート術や手帳術に完璧なものなどありません。人それぞれに合うもの、合わないものがります。同じ人でも仕事や環境が役職が変われば自ずと変化していくことでしょう。
そういった意味で、ノート術の基本とは「ノートについて知ること」だと思います。
ノートにはどんな種類があるのか、どのようなメリット・デメリットがあるのか、そういった情報を知っておけば今の自分の環境にぴったり合ったノートを探し出すことができます。誰かのノート術をそのまま使っていただけでは応用を考え出すのは難しいでしょう。
この著者も本の中で紹介している方法は来年には変わっているかも知れない、と明言されています。そういう様々な変化の可能性がノートの使い方には眠っているのです。
その可能性を垣間みて、自分なりのノートの使い方を考える上で、本当に役立つ一冊だと思います。
読んでいる間中「ノート好きな自分」が圧倒的に肯定されている気分を味わえました。うちの奥さんは文具萌えではないので、結構家では肩身が狭いのです。そう言えばネット以外の知り合いでもあまり文具仲間っていません。
Twitterをやっていなければもっと寂しい文具人生を歩んでいたことでしょう、きっと。
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