とある書店でゴンドラを出して、そこにずらっと並べてあったので試しに購入。
初めは何の気なしにパラパラと見ていたのだが、以外にうまくまとまっているという印象を受けた。
帯には「仕事のミスの85%は、整理術で解決できる。」とある。その下に小さく「日本一わかりやすい整理術の教科書」と書かれている。私の印象では配置が逆なのではないか、という感じの本であった。
図解 ミスが少ない人は必ずやっている「書類・手帳・ノート」の整理術 |
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サンクチュアリ出版
サンクチュアリパプリッシング 2010-01-23 |
今年の4月から社会人として働き出す大学生はまず一通り目を通しておいて損はないだろう、という一冊である。また新社会人に何か贈り物をあげようかと考えている人も一応チェックな一冊である。
もちろん、現役社会人にだって有益な情報はある。
以下にカバーの裏に付いていたチェックリストを上げておこう。
- 書類が机の上に15cm以上積まれている
- いつも何かを探している
- 経費精算をするとき、何の領収書かわからないことがある
- 打ち合わせのとき、すぐに名刺入れを出すことができない
- カバンの中に必要のないものが入っている
- 何が入っているかわからない引き出しがある
- パソコンのデスクトップに30個以上ファイルやフォルダがある
- 名刺入れに、もらった名刺が入りっぱなしになっている
- 手帳を見返したとき、自分でも理解できないメモがある
- 予定しえちた時間に帰れないことが、週3日以上ある
- 帰宅途中、やり残した仕事があることによく気づく
- 書類を出力したまま、プリンタに置きっ放しにしてしまう
以上のうち3個以上チェックが付いた人にオススメの本であるという。私の印象だと、確かにそういった人に向けて役立つ情報は入っていると思うが、これを読めばすぐに解決できるようになるか、というと微妙な感はある。
仕事術と整理術
本書は大きく分けて3つの部に分かれている。
(1)ファイリング術
(2)手帳術
(3)ノート術
ファイリング術はそのまま「整理術」だ。手帳術は「タスク管理」だし、ノート術は「発想法」と言い換えることができそうだ。つまり整理術の本でありながら内容はまるまる「仕事術」の本である。
確かに、手帳は仕事(タスク)を整理する物だし、ノートの類はアイデアを整理するものとして見ることができる。そういった意味で、仕事術の根底をなすのは「整理術」であるといっても過言ではないだろう。
単なる整理術の本としてではなく、「仕事の基本」手引き書といった感じで読んでもらいたい。
カオス空間からの脱却
今の会社の新人教育というものがいったいどういう内容で進められているのか私はしらない。しかし聞くところによると「マナー」や「礼儀」に関するものが多いという。それは社会人として最低限身につけなければならないものだから当然だろう。
しかし、そういった研修で「机の上にどこに何を置けばよいのか」「引き出しでの書類の整理の仕方はどうするのか」「パソコン上のフォルダの作り方は」「手帳の使い方は」という別の「基本」についてはおそらく教えられないだろうと思う。
※よほど親切な先輩でもいれば別だろうが
しかしながら、こういった仕事の基本は分かる人はすぐ理解できるし、そうでない人はいつまでたっても効率よいシステムを築くことができずに、机の上にカオス空間を作り出してしまう。そして一度カオス空間を作り出すとそこからなかなか抜け出せない、というのが人間的な惰性の性質である。
※カオス空間・・・どこになにがあるのかわからない、という恐ろしい空間
「カオス空間」でも仕事ができているならば(少々のミスがあっても)、まあ良いじゃないかというのが、脳の本音であろう。だから机の上や書類の整理について危機的なミスを起こさない限りは、人はそこ環境を変えようとは思わない。少なくとも真剣には思わない。
だから、今机の上が混乱している人がこの本を読んでも「特効薬」的な解決は望めないと私は思う。できればまっさらな状態の社会人の方が読んで、「効率よいシステムを作ればこんなメリットがあるんだ」ということを実感してもらいたいと願う。
じゃあ、すでにカオス空間に佇む社会人はどうすればよいのか?という疑問が出てくる。もちろん「お手上げです」と言ってしまうこともできるのだが、一応打開策がないわけではない。
ようは出来上がった(案外居心地の良い)カオス空間にいることが問題なのであって、それを外部の力でも良いからゼロにしてしまえばよい。
しかしながら、職場内での机は基本的に会社のシステムの一部だ。いきなり「来月席替えしましょう」と言っても通らないだろうし、個室で仕事をしている人ならばさらに難易度があがる。
一人席替え法
そこで、かなり無理矢理な方法だが自分一人で席替えをするという方法がある。
いったい何処に?____自分の机から自分の机に、である。
ようは、現状の環境を「改善」しようと思うから進まないわけで、一端全てリセットしてしまえばよい。本当にその机から場所を移動するかのように「書類」「文具」など一切合切を片付ける。できればPCのファイルも片付ける。
※ポータブルHDDにデータを移動して良いならば、そこにまとめて放り込む
このとき自分が不必要と感じた物はあらかた捨ててしまうか、「不要ボックス」(ダンボール)に放り込んでしまうことが肝心だ。大体においてカオス空間は不要なものが増えすぎていることによって発生してしまう。
で、全てを片付けて、まっさらな状態の机を作ってから、片付けた物をを配置し直す。一つ一つの物についてはすでに評価が定まっている。よく使う文具、あまり使わない文具、重要書類、参考資料・・・それらを自分なりのルールを作って配置していく。
これで、一人席替えのできあがりである。
もちろん、これは悲惨なくらい時間を使うし、目に見える生産性はゼロである。そんなことしている暇があれば目の前の書類を片付けたいと思っている方にはオススメしない。
※こう考える心理こそがカオス空間からの脱却を阻んでいるわけだ
気持ちよく片付いた机が仕事上必要かどうかは私にはわからない。ぱっと見渡しても私の机の上も「整頓されている」とは言い難い。しかしながらルールに基づいて「整理」はされている。そこに置かれているものはそこに置かれるだけの意味があってセッティングされている。
そのルールさえしっかりできていれば、あれやこれやを探し回ったりすることはほとんど無くなる。機能的な机の上、というのはそれだけで充分ではないだろうか。
とりあえず、「これから社会人」さんたちはぜひぜひ読んでもらいたい本である。
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