さて、前回では「多ノート派」という考え方を紹介しました。実際ノートを使い込んでいる人はかなりの割合で「多ノート派」という選択をしているのではないでしょうか。
今回は、私の手元にある書籍からうかがい知れる、著名人のノートの使い方を簡単にとりあげます。
多ノート派
外山滋比古氏(思考の整理学)
メタ・ノート、メタ・メタ・ノートなど熟成度でのノートの使い分け
思考の整理学 (ちくま文庫) |
|
![]() |
筑摩書房 1986-04-24 売り上げランキング : 86 おすすめ平均 |
鎌田浩毅氏(ラクして成果が上がる理系的仕事術)
テーマごとのノート。ルーズリーフはバインダーにとめずクリアファイルで
ラクして成果が上がる理系的仕事術 (PHP新書) |
|
![]() |
PHP研究所 2006-05 売り上げランキング : 10874 おすすめ平均 |
美崎栄一郎氏(「結果を出す人」はノートに何を書いているのか)
メモノート、母艦ノート、スケジュールノート
「結果を出す人」はノートに何を書いているのか (Nanaブックス) |
|
![]() |
ナナ・コーポレート・コミュニケーション 2009-09-11 売り上げランキング : 165 おすすめ平均 |
鹿田尚樹氏(大事なことはすべて記録しなさい)
日常ノート、勝負用ノート、スケッチブック
大事なことはすべて記録しなさい |
|
![]() |
ダイヤモンド社 2009-11-13 売り上げランキング : 1161 おすすめ平均 |
ダグラス・C・メリル(グーグル時代の情報整理術)
テーマごとに分かれたメモ・ノート
グーグル時代の情報整理術 (ハヤカワ新書juice) |
|
![]() |
Douglas C. Merrill
早川書房 2009-12 おすすめ平均 |
単ノート派
樋口健夫氏(一冊のノートで始める力・続ける力をつける)
着想から記録までを全て一冊のノートに記入する
一冊のノートで始める力・続ける力をつける―人生も仕事もうまくいくアイデアマラソン発想法 |
|
![]() |
こう書房 2008-03 売り上げランキング : 49558 おすすめ平均 |
奥野宣之氏(情報は一冊のノートにまとめなさい)
一冊のノートを時系列で記入し、その牽引をPCで作って管理
情報は1冊のノートにまとめなさい 100円でつくる万能「情報整理ノート」 (Nanaブックス) |
|
![]() |
ナナ・コーポレート・コミュニケーション 2008-03-12 売り上げランキング : 792 おすすめ平均 |
カード派
梅澤忠夫氏(知的生産の技術)
知的生産の技術 (岩波新書) |
|
![]() |
岩波書店 1969-07 売り上げランキング : 8097 おすすめ平均 |
板坂元氏(考える技術・書く技術)
考える技術・書く技術 (講談社現代新書 327) |
|
![]() |
講談社 1973-01 売り上げランキング : 120906 おすすめ平均 |
渡部昇一氏(知的生活の方法)
知的生活の方法 (講談社現代新書 436) |
|
![]() |
講談社 1976-01 売り上げランキング : 15468 おすすめ平均 |
立花隆氏(「知」のソフトウェア)
「知」のソフトウェア (講談社現代新書 (722)) |
|
![]() |
講談社 1984-01 売り上げランキング : 6286 おすすめ平均 |
ノートの使い分け
よく観察すると「多ノート派」の人でも使い分け方が違っています。おおよそ3つに分けることができるでしょうか。
・テーマで分ける
・熟成度で分ける
・基本のノート1冊+α
テーマで分ける
一番わかりやすい分け方でしょうか。テーマで分けた上で時系列で書き込むというスタイル。ノート一冊のわかりやすさはあがりますし、後で編集するような手間も必要ありません。しかし、ノートの数が増えがちです。特に多くの分野に興味を持っている人の場合は、その分だけノートが必要になります。
熟成度で分ける
これは「アイデア」とか「着想」を扱う場合に使われる手法です。時系列で思いつくまま書き込んでいき、その後「使えそうなアイデア」や「広がりを感じるアイデア」を拾い上げて別のノートに書き込む方法です。
同時に扱うノートの数は2冊か3冊ぐらいでしょうか。アイデアを管理するのに一手間かかります。
基本のノート1冊+α
メインで使うノートは1冊で、それを補佐するように状況に合わせたノートを別に使うというスタイル。「テーマで分ける」方式に似ていますが、扱う内容のジャンルでは分けないという違いがあります。
私の感触では奥野宣之氏の一冊ノート方式のアレンジバージョンという感じです。
同時に扱うノートの数は2~3冊程度。情報を管理するのにある程度手間がかかります。
それぞれの特徴
テーマ別の方式は同時に扱うノートの数は増えますが、その分そのテーマの事はそのノートを見ればよいと管理自体は簡単です。しかし、情報が散らばりやすいという問題もふくみます。ある程度自分で管理できる程度の数に抑える必要があるでしょう。
熟成度に分ける方法は、着想やアイデアのみでしか使えない、というのでもありません。
使い方次第では仕事ノートでも充分使えると思います。仕事上の気づき、改善点、問題点なども書いておき、それを後で見返して意味のありそうなものを別のノートに転記する、という方法です。そのノートに書かれた事は「本質的」に意味を持つ気づきや、問題点である可能性が高いですし、それに対してのアプローチは自分以外の人の役に立つかも知れません。
基本ノート+αの方式は非常にバランスがよい形です。美崎氏の3つのノート方式はビジネスで使う場合では、かなり使い勝手が良いと思います。しかし「知的生産」の場面では少々力弱いかな、という印象があります。
私がしばらく試していた感触だと、アイデアを「育てる」場としてさらに「A4スケッチブック」を加えた4種のノート方式であれば「知的生産」のツールとしても使える気がします。
カード派
さて、ノート以外にもカード派として幾人かのお名前を上げさせていただきました。カードはアイデア(情報)を管理する手法としてはかなり優れた方法です。しかし、これは純粋に「知的生産」向けの方法なので、ビジネスマンが普通に使うという事はできません。※もちろん、工夫すればカードだけでスケジュールも管理できるかもしれないが
アイデアはノートに記入してしまうと、どうしてもその文脈に「固定化」されてしまいます。ノートではアイデアの取り回しが非常に悪いといってもいいでしょう。発想を深めていくというよりも、新しい視点を探したり、意外なアイデアを見つけ出したりする場合にはカード方式が優れているでしょう。
また、あまりにも扱う情報の数が多い場合もノートでは使い勝手に欠けます。薄いノートではノートの数が多くなりすぎます。厚めのノートではページをめくっていく手間がかかります。その点カードならパラパラと見ていくことは非常に簡単です。
研究家の方に広くカードが好まれる理由もここにあるのでしょう。
まとめ
ノートをどのように使うかは、まず自分がどんな環境・目的でノートを使うのかによって変わってきます。ビジネスシーンで扱う情報をまとめたいならば、一冊のノートかそれにプラスαのノート方式でやっていく方が良いでしょう。すくなくとも扱う情報が「ビジネス」という文脈から外れなければ破綻はしません。
しかし、趣味やNPOといったビジネス(本業)以外の情報を扱う場合あるいは何かを研究したい場合は一冊のノートでは少々物足りないでしょう。その場合は文脈に合わせたノートか、多少数が増えることを覚悟してテーマごとのノートを作る方が良いと思います。
もちろん、変則的なノートの使い方はいくらでも成立します。その自由度の高さがノートの魅力です。その点も含めて自分の好みのノートスタイルを構築してみて下さい。
次回は、ノートと情報系について考えてみます。
1 thought on “ノート企画:第二回:ノートの使い分け方”