Sharing is Power! / Create your own way.

「Evernoteハンドブック」とそこから拡がるワクワクする可能性

豪華メンバーによる、まったく新しいタイプの本の発売。そのように表現するべきでしょうか。とりあえず、私がかなりワクワクしたことは間違いありません。

Evernoteハンドブック(公式サイト)

「Evernoteハンドブック」は、早い段階でEvernoteのポテンシャルに注目して、利用のしかたをブログなどで公表していたブロガー3人が、力を結集して作った PDF による電子書籍です。つまり本書は、どこの書店でもみつけることのできない、本サイトでしかダウンロードできない本なのです。

私もこのブログでちょこちょこEvernoteネタに触れています。そしてこの個人的最強クラウドアプリを使うようになったのも、@mehori,@nokiba,@shigotano(敬称略)というこの本の著者3名の影響が多分にあります。

この企画の試みとその可能性、私自身の率直な感想、そしてそこから見えてくる広がりについてすこし考えてみたいと思います。

コミュニティーブックという選択

以下は公式サイト「『アップグレード』する本」よりの引用です。

著者の3名は累計で 20 冊近くの本を出版しているプロですが、それでも通常の「出版社」を経ることなく本書を電子書籍として出版したのには理由があります。

それはEvernoteがまだまだ発展の途上にあり、今後もアップデートが進められることと関連しています。本書は通常の書籍と異なり、刊行後は情報が古くなるのを待つことはありません。今後Evernoteから新機能が発表されるつど、本書はそれに寄り添ってきめ細かい改訂を行います。より便利になってゆくEvernoteとともに成長する本なのです。

この文章の中からは3つのエッセンスが見えてきます。

  • 著者が3名で作った本
  • 出版社を通さない「本」作り
  • 成長する本

これらの3つのポイントは、今後に大きな影響を与えていくことでしょう。

順番は前後しますが、まずは「成長する本」から見ていきます。

成長する本

これについては、著者の一人である堀さん(@mehori)のブログ記事「コミュニティー・ブックとしての電子書籍」(Lifehacking.jp)を読んでいただければ一番かと思います。以下はその記事よりの引用です。

電子書籍を iTMS ストアからダウンロードする音楽のように考える向きもありますが、私はむしろ iPhone アプリのようなものに近くなるのではないかとおもっています。つまり:

  1. バージョン番号がつく:リリース後もコンテンツが追加され、アップデートされてゆく本。第二版、第三版というのよりももっと細かく、ミスプリのバグフィックスから、機能追加にいたるまでが、読者からのフィードバックによって提供されてゆく
  2. 本をライセンスする: ソフトウェアと同様に、読者は本のメジャーバージョンに対してアップデートを無料で享受する権利を獲得する。
  3. 常に進化する本: 本の方向性について、コミュニティーからフィードバックが入るたびに書き加えが生じたり、不要な章の削除が行われたりする。読者は本というコンテンツの方向性を決める参加者。

こうした、コミュニティーの成果物としての本という性格のものが増えてゆくといいなと思います。Gina Trapani さんの Google Wave ハンドブックなどは良い例ですね。

電子書籍が本の形で出版される書籍と大きく異なるのが3の「常に進化する本」でしょう。
著者の単一の成果ではなく、このテーマを扱うコミュニティーと結びついて内容が進化していく本。これは既存の出版の書籍ではまず考えら得ないシステムです。

そして、意味ある内容、誰かの役に立つ内容、現状に即した内容をもった「本」を作るためにはこういったシステムは非常に有効だと思います。

昨今のサービス業は顧客視点を大切にするのは当然として、商品開発の一環に消費者を巻き込む場合も増えてきています。それは単に宣伝効果を狙ったものもありますが、基本的には「何が求められているか」を素直に商品に反映させる狙いも多いと思います。

「知的生産の技術」(梅棹忠夫)のまえがきにこのような文章があります。

pi
友人たちのあいだに、べつに組織だった情報交換があるわけではないが、ひとりが、なにかあたらしい技術を案出すると、それがほかの仲間にもすぐつたわるようなしくみが、いつのまにかできあがっていて、いまにつづいている。

私はこのようなシステムにあこがれを感じてブログを書いています。いろいろな人が自分の考えや技術をブログで公開すれば、大きな共有のネットワークになっていくのではないか、そのように考えていました。

しかしながら、誰しもがブログを書く時間を持っているわけではありません。文章を書くのが苦手な人もいるでしょう。

提出された情報に対して、意見や考えを述べたりすることはブログを書くことよりは遙かに容易です。今回の電子書籍での発表とアップデートの仕組みは、情報交換のシステムとして機能していくのではないかと思います。

「Evernoteハンドブック」の出版はこういったシステムに向けての大きな実験という風に私は捉えています。日本でこの試みがどのように受け止められ、広がりを見せていくのかは現段階ではわかりません。しかし、この企画からまた新しい波紋が生まれてくることは間違いなさそうです。

著者が3名で作った本

だれがどこをどのように担当したのかは、実際の「本」を見てみるまでは分かりませんが、多忙を極める3人が共著した、共著できたというのが一つの大きな事実だと思います。

Evernoteを使ったのか、GoogleWaveを使ったのか、スカイプを使ったのか・・・ツールの選択肢は多様ですが、おそらく原稿情報の交換の多くの部分がウェブツールを使って行われたことでしょう。

これは、時間的、理知的な隔たりを超えて原稿情報が交換できる(共有できる)という好例でしょう。現代では、本を書くという作業までフィジカル・シームレスな環境で行えるようにまでなっています。

また、逆に見えれば3人だけで作った、とも見ることができます。

公式ウェブサイトのページデザインはおそらく@mehoriさんが行われているのでしょう。
※画像周りは確実に@mehoriさんだと思います。

デザイン以外には、サーバー、ドメインを獲得、pdfファイルの作成。あとはダウンロードの仕組みを作れば準備はOKです。技術的に「難しすぎる」ということはないと思います。
ある程度技術に通じていれば、個人でもこのような環境を実現できるということです。

出版社を通さない「本」作り

上のような環境から簡単に「本」を出版できるということは、私のような人間でも「本」を出版できる可能性があるということです。

初期投資もそれほどかからないでしょう。コンテンツを持っていて、それを充実させていく意気込みがあれば、まずは始めることができます。

これによって、相当ニッチな「本」が生まれてくるかも知れません。もちろん、それが多くの人に読まれなければ投資金額と使った時間は無駄になります。しかし一冊の本を自費で出版することに比べればリスクは低いといえます。

単に電子書籍が売れる売れないよりも、それをコミュニティー作りの出発点とすることもできるかもしれません。自分のアイデアや考えを一つのたたき台として出してみる。あとはコメントをフィードバックにして改良を加えていく。そういった試みもできるかもしれません。

コミュニティー・ブックは「本」でありながらも、「本」とは異なった趣を持つもの、となっていきそうです。既存の書籍とのカニバリゼーションはそういう意味合いに置いて避けられるかも知れません。

まとめ

最初にこの企画について知った時の率直な感想は「ワクワクした」です。

お三方のつぶやきで以前から「E計画」なる単語がちらほら出てきており、「この本はこの本でありなんだろうけども、「Evernote本の目次 – b2log/p」を読んで」(R-style待合所)でもEvernote本が出るのではないだろうか、と予想していましたが、まさか電子書籍しかもコミュニティー・ブックを指向するものだとは思いもよりませんでした。

そのワクワク感は「どんな面白いEvernoteの情報が読めるのだろう」という物ではありません。もちろん、それはそれで興味がありますが、それよりも「新しいタイプの書籍」の可能性が目の前に広がっているという感覚の方が強かったと思います。

例えば、こんな@beck1240さんと以前こんなつぶやきのやりとりをしました。

完璧な手帳術なんて無い、むしろ常に成長を求めるの「手帳道」という考え方の方が適している、という事ですが、「コミュニティー・ブック」が持つ志向性とぴたり一致します。

完璧な「手帳術」なるものが存在しなくても、ある時点の手帳の使い方について情報を書いていったり、一つのテーマについて侃々諤々な議論をしてそれをアップデートしたりするのも「コミュニティー・ブック」としてはありなんじゃないか、そんな気がしました。
※どうですか、@beck1240さんやその他大勢の手帳好きブロガーの方?

もちろん、私が今「ワクワク感」に満ちあふれて考えているよりも、その道は厳しいと思います。でも一冊の書籍を出版するよりは「現実的に手が届く」ものであることは確かだと思います。

たぶん、「がんばりようがある」とわかれば、
みんな、なんとか、がんばっちゃうんだと思う。

「がんばりようがない」というときが、
いちばん、じつは、くるしいわけで。

なんだかわからないけど、
とにかくこれをやっていればいい、
ということを知っている人は、いいなぁ。

「がんばりようがある」場をつくる。
「がんばりようがある」時間をつくる。
それが思いつかなかったら、
こどものようにあそんで、
とにかくじょうぶでいよう。

上は2月22日の「ダーリンコラム」よりの引用です。

ちょっと頑張れば面白いことが待っている世界というのが「がんばりようがある」場所の一つの形ではないでしょうか。

もちろん、この「コミュニティー・ブック」で生計を立てるのは難しいと思います。それでもそこにはやっただけの「何か」が手にはいると思います。その何かはおそらく金銭に換算できるものではないでしょう。今の日本で少しずつ失われていっているものかもしれません。

iPadやKindleの普及が進めば、経済関連でいろいろな話がでてくるとは思います。でも、そういった話とはまったく別の所で「面白い何か」が生まれようとしているのではないか、そういう風に強く感じた出来事でした。

参考書籍:

知的生産の技術 (岩波新書)
知的生産の技術 (岩波新書)
岩波書店 1969-07
売り上げランキング : 2647

おすすめ平均 star
starこれぞ現代人必読の知的生産術!
star今でも通用する部分があります
star今も「そのまま」使えると考えるのも見識

Amazonで詳しく見る by G-Tools

編集後記:
ちなみに、一応シゴタノ寄稿者ですがこの話はまったく知らなかったので、上の「R-style待合所」での推測は完全に当て推量です。でも、まああの三人が何か「悪巧み」をしているとなると、Evernoteしか思いつきませんよね(笑)。

あと、FriendFeedにて「JP:Evernote user」というグループを作ってます。興味のある方は是非。

2 thoughts on “「Evernoteハンドブック」とそこから拡がるワクワクする可能性

  1. たぶん一年ぐらい前だったと思うのですが、私が知り合いに手帳のことを熱く語っていたところ、その人が私がやっているのは「手帳道だね」と言ってくれました。それ以来、自分でも常に進化しつづける「手帳道」を意識していました。
    上記のコミュニティー・ブックのアイデア、面白そうですね。

  2. >コボリさん
    コメントありがとうございます。「名言コツコツ」からは手帳道への熱い思いがにじみ出していると私も思います。

    コミュニティー・ブックをどのような形で作ったり、提供していったりすればいいのかが理解できればいろいろ試してみたいと思っています。その際は是非ご参加くださいませ!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です