時事ニュース

日本経済新聞電子版についての雑感

2010年3月23日、「NIKKEI NET」が「日本経済新聞電子版」に移行した。それに伴ってドメインもドットコムに移行している。

以前の「NIKKEI NET」はネットで利用に重きは置いていない、というスタイルだった。フィードも無かったし、個別記事のページタイトルも記事の内容ではなく統一のものが使われていた。例えば企業ニュースであれば以下の通りだ。

「NIKKEI NET(日経ネット):企業ニュース-企業の事業戦略、合併や提携から決算や人事まで速報」

どの記事でもカテゴリー以下のタイトルはこうなる。引用する場合に多少不便さはあった。もちろん、そんな使い方はしてほしくない、という一種の意思表示だったのだろう。
※ちなみに、日経新聞電子版でもフィード配信はしていない様子。それは類似のサービスを有料版で提供しているからだろう。

今回の大幅な刷新は、そこからの転換を期待していた。いくらなんでもそのままではこれから結構きついよね、という認識は新聞業界では共通のものだろうと思う。もちろん新聞社として収益を上げられる構造を作るのは当然で、じゃあどのような仕組みで収益を作っていくのかという視点で「実験例」としては注目度が高かったのではないだろうか。

今回は日経新聞のサイト「ご利用ガイド」のページをいろいろ見て回ての感想等をかいてみたい。
日本経済新聞「ご利用ガイド」
※現時点でまだ「準備中」のコンテンツがいくつかある。

まず目につくのは、この一文だ。

電子版の全ての記事をご覧いただくには有料会員登録が必要です。

お金払ってくれないと、すべての文章見せないよ、ということ。これは理解できる。
無料と有料のコンテンツを分けるのは戦略としては当然のことだろう。さわりだけ無料で本格的な内容は有料、ということなのだろう。

以前はサイト上に書かれてある「NIKKEINETとの違い」を引用したもの。

日本経済新聞 電子版は情報量も機能もNIKKEI NETから大幅にパワーアップ。日経の確かな情報を、これまで以上に「速く・詳しく・深く」お届けします。

日本経済新聞 電子版は、無料でご覧いただけるニュースもこれまで以上に速く、詳しくお伝えします。さらに有料会員にご登録いただくと、「より深く、より高機能のサービ ス」をすべてご利用いただけます。また登録会員(無料)も有料会員向け記事を一定件数までご覧いただけるほか、多くのサービスをご利用いただくことができ ます。この機会にぜひ日本経済新聞 電子版へご登録ください。

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有料会員限定サービスとして携帯電話向けサービスを提供します。いつでもどこでも携帯電話で朝刊、夕刊や最新ニュースを読めます

まず気になるところが、「有料会員」だ。無料と有料の違いやその料金というところがサービスを使う上でもっともチェックしたいところだろう。

4つの読者層

日経新聞電子版を読む人は4つのパターンから選べるようになっている。

・未登録読者
・電子版会員登録(無料) 4/30まで?
・電子版月ぎめプラン(4000円)
・日経Wプラン(5383円、4568円)→宅配+電子版
 ※料金の違いは住んでいる地域で発生する

それぞれ提供されているサービスは異なる。
詳しい違いはサイトを見てもらうとして、ざっくりと見ていくとする。

未登録読者は、ほとんど何もできない。記事の検索すらできないというから驚きだ。

無料の会員登録をすると、記事の見出し部分だけ検索ができるようになる。しかし、検索結果の本文は有料会員でないと読めない、という形になっている。あとは月に20本の特ダネ記事が読める。問題は「特ダネ」の判断が日経側にあるということだろうか。

有料版になると当然料金が月々に発生する。最低で月4000円。ちょっと理解できないくらい高額な料金だ。

無料版の会員との違いは、特ダネ記事の上限がなくなり、朝刊、夕刊が画面で読める、おすすめ記事が届く、検索した結果の記事本文が読めるようになる(上限があるようだ)、世界の市況データを見る事ができ、携帯でも記事を確認できる、とかなり機能アップが見られる。

ただし検索まわりの上限は月に25本。その上限以降記事の検索が一件ごとに175円。一体全体どのような算出方法でこの料金がでてきたのかはまったく不明である。

一応お試しとして4/30までは有料会員登録しても料金は発生しないキャンペーンを行っているようだ。もちろん、ありがちに

<無料利用期間について>
日本経済新聞 電子版の有料会員向けサービスは、キャンペーン期間中に有料会員(電子版月ぎめプラン、日経Wプラン)の登録をおこなうと創刊記念として2010年3月 23日~4月30日まで無料でご利用いただけます。
 ただし、2010年4月30日までに電子版の解約をおこなわなかった場合はサービスの課金対象となりますので、ご注意ください。
2010年5月1日以降も引き続き登録会員(無料)としてご利用をご希望の方は一度電子版 有料会員をご解約の上、再度登録会員(無料)の手続きをお願いします。

となっている。この辺の「無料→知らない間に有料」というのは「行動経済学」を使った手法としてはありふれている。最近ではアマゾンプライムのお試しも同様の手法を使っていた。
※参考文献参照

まず、無料会員では情報の「アーカイブ」としては何の役にも立たないし、有料会員でも、一日に一つ以上記事を検索すれば追加の料金が発生する、ということになる。まず、正直な感想だが、月額の料金の高さの割に検索の上限が低すぎる。

さらに謎なのが、有料会員のハイグレード「宅配+」版の存在である。これは後述する。

オフの情報

続いて「豊富な専門情報でONもOFFも完全サポート」というページを見てみる。
以下は該当ページよりの引用だ。

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果たして、ネットを使っているユーザーがこのようなオフの情報を必要としているだろうか。そんな情報はどこでも(しかも無料で)手に入る。ネット化するならば、徹底的に日経新聞ならではの記事に特化し。その他のコンテンツは切り捨て、全体のコストダウンを図るべきではないだろうか。必要ない情報を提供するために、あの月額4000円を提示されたとして納得して払う人がどの程度いるだろうか。

携帯向けサービスについて

詳しく解説するのも面倒なので、以下のページをご覧いただきたい。当然かのようにすっぽりとスマートフォンへの言及はない。
http://www.nikkei.com/guide/mobile/index.html

果たしてこれでよいのだろうか。そもそもこのサービスはどの辺りの「客層」を狙ったものなのだろうか。若い世代はテレビも新聞も見ないし、パソコンもあまり触らない。依存度でいうと携帯が一番高い気がする。もっと絞り込んだサービスで携帯のみの課金サービスがあってもよいのではないだろうか。

理不尽な宅配サービス

一番疑問なのは、有料会員の最上位版である「宅配と電子版のサービスの提供」である。一体全体これに何の意味があるのだろうか。誰が得するのだろうか。もし有料会員によって提供されるサービスが月額4000円支払う価値があるならば紙の新聞など必要無いはずだ。パソコンで読めるんだし、検索もできるし、印刷だってできるだろう。あきらかに「紙の新聞」ありきの発想のこのサービスとその料金には納得ができない。

すこし考えてもらいたいのだが、紙の新聞はその広告料で収益を得ているはずだ、でもってそれは発行部数で担保されるものだろう。電子版を読みたい人は、日経新聞が求めるそのビジネスモデルからは外れている人だ。そのような人から課金したいからこその法外とも呼べる月額の料金であり、上限を超えた分の検索料金であろう。

そのモデルのみの課金では成り立たない不安があるから、紙の新聞で利益を出そうとしているのかもしれない。しかしながら、発想はまったく逆ではないだろうか。むしろ、電子版を申し込みながらも紙の新聞つまり利用者から見れば、鍋の敷紙か、広告にしか意味が無い物を受け取ってもらうならば、「値引きする」という方法をとるべきではないだろうか。そうであれば、多くの人が宅配ありを選び、その結果形だけの発行部数を維持する事ができるはずだ。

もちろん、広告を出す側が、そのような広告に魅力を覚えるかどうは不明であり、しかもそれで収益が成り立つのかも不明である。しかしながら、今の日経新聞電子版は有料会員になる人はかなり限られてしまうだろうことは予想に難くない。

フリーミアムのビジネスモデルは基本的に低コストで運用できるからこそ、多くの無料会員と、一部の有料会員という構図が成り立つ。日経新聞ははなしてそんな事ができるのだろうか。どうみても、これによってコストを抑えようという発想はみえてこない。

むしろ、既存のビジネスモデルをいかに延命させようかという発想しかないと思う。

まとめ

私は紙の日経新聞はとっていない。Ⅰ面の見出しをみて気になるときは買うという程度だ。そんな買い方だから140円が160円になっても別に気にならない。多分200円でも買う・買わないの判断は変わらないだろう。

しかしながら、現状で月4000円の料金を支払いたいとはちっとも思わない。本格的に情報収集をしようと思えば、そんな金額では足りない事が目に見ている。今の20代ならば「別にいいや」という私と同じ発想に至るだろう。

他の新聞社も同様の手法をとるならば、新聞と若い世代の距離はますます開くばかりだろう。もちろん、それはそれで良い、読みたい人だけがお金を払って読んでくれれば、という姿勢ならば、一つの企業戦略であり外部の人間がとやかく言う事ではないだろう。しかしながら、これで「新しいマスメディア」を標榜する気ならば、いささか拍子抜けである。先も述べたが、これは既存のビジネスモデルの延命処置でしか無く、しかもそれ自体が失敗する恐れの方が強い。

「日本経済新聞電子版」を見て強く感じる事は、「あぁ、もうだめだ」ということではなく、国民と新聞(ジャーナリズム)の間にあるギャップこそが、新しい何かを生み出すコアになるのだろう、という予感だ。現状にイライラを感じている人はすくならからずいるだろうし、その不満が新しいものを生み出す原動力になると思う。すくなくとも、私はそうなることを願うばかりだ。

参考文献:

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1件のコメント

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