7-本の紹介

書評 クラウド時代の知的生産の技術(倉下忠憲)

初版は2010年4月1日。ブログで活躍する著者が「クラウド時代においてどのような知的生産の技術が必要なのか」という視点で基本をまとめた一冊。アプリケーションの操作方法などの詳しい説明はほとんどないが、ツールをどのような哲学で使うべきか、というエッセンスについては詰め込まれている。

クラウド時代の知的生産の技術
クラウド時代の知的生産の技術

この本は、タイトルからもわかるように梅棹忠夫氏の「知的生産の技術」を現代版焼き直しを目的としていると言って良いだろう。

しかし、かの時代、知的生産の技術を必要としていたのは限られた人間だけであった。学者や研究者あるいは作家と呼ばれる人々。そういう人々が情報を集め、発信するためには何が必要か。

そういった技術は簡単には伝達されないもので、一冊の本に集約した功績はかなり大きかったと言える。そこにまとめられた内容はパソコンが一人一台以上になった現代においても通用する部分がいくらでも見つかる。

ただ、それを行う人という点で見れば現代は大きく様変わりした。経営者、コンサルタントだけではない。ごく普通のビジネスパーソンや大学生ですら情報を発信する必要がある。終身雇用という言葉が桃源郷と似た響きを持つようになってすでに長い年月が経つ。現代においては個人が個人として_つまり組織を介さずに_仕事をする事が当たり前になっている。プロジェクトはクラウドを通して管理され、構築されていく。そもそもの人材募集ですらスタートはクラウドの中にある。クラウドに無いと存在しないも同じというのは、データでも履歴書でも同様なのだ。

印象的なのは著者が現代の状況を例えた以下の文章だ。

p8
我々よりも少し前の世代は、ネットという海を泳ぐ術を必要としました。情報はまるで波のように毎日、毎日、人々に押し寄せてきました。無料で。
しかし、現代では海を泳ぐ術など基本でしかありません。我々は空を飛ぶ技術が必要なのです。クラウドとクラウドを飛び回る技術が。

確かに2000年頃からインターネットが当たり前になり、ごく一般の人々でも圧倒的な量の情報にアクセスできるようなった。そこでは情報をかき分ける術が強く求められていたことは間違いない。現代ではさらに自ら情報を発信し、自らの「商品価値」をアピールし、新しい価値を生み出していく事が求められている。

確かにこれらをうまく使いこなせる人は、普通の人ができないような物事を成し遂げることができるのだろう。確かにそれは「空を飛ぶ技術」と言えるかも知れない。

単に新しい情報を生み出すだけでは、そこに価値は生まれない。それを常に発信し続けていくことが求められている。それが新しい時代の「知的生産」である。

章立ては以下の通り。

第一章 ネットからクラウドへ
第二章 便利なツール・ソーシャルアプリ
第三章 クラシック・メソッド
第四章 あなたの「履歴書」をクラウドで
第五章 空気を読むよりも、空気を作ろう
第六章 クラウドのその先へ

章ごとの詳しい解説は割愛するが、初心者の方は第一章~第三章が参考になるだろう。ビジネスパーソンで普段クラウドを活用している人は第四章以降を読んで自分なりの「メディア」作りを目指すのが良いだろう。

まとめ

もはや時代はクラウド抜きには語れない所まで来ている。忌み嫌おうが、避けようとしようが社会全体がその方向に進んでいるのだからあまり意味はない。であれば、すこしでもそれを有効に活用する事に意識を向けた方がいくらか建設的だろう。

一部の人間が「知識」を独占し、それが力になった時代は終わりを告げた。我々には「自由」と共に「自ら発信する」義務も得た。「知は力」から「共有は力」の時代に移り変わるこの現代で、いかに生きていくか。基本的な技術と心構えを知る上で有用な一冊だろう。

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編集後記:
あえて書くまでもないですが、エイプリルフール用のエントリーです。全くの架空の本ですのでアマゾンで必至に探さないで下さい(笑)。記事中の本の画像は「頭がよくなる知的生産の技術」(三木光範)をちょこっと改造しました。現代よりももう少しクラウドが進んだ社会ではどんな本が必要なのかをイメージして、仮想的な本の書評を書いたものです。本の存在自体はウソですが、そういう社会が刻々と近づいていることは間違いないと思います。


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