7-本の紹介

書評 「小さなチーム、大きな仕事」(ジェイソン・フリード&デイヴィッド・ハイネマイヤー・ハンソン)

あなたが信じている「現実」は本当に現実だろうか。そういった問いを投げかけてくる一冊である。もしかしたら、多くの人が信じている「現実」はあくまで可能性の一部でしかなく、別の現実の可能性はいくらでも眠っている。そう考えることがスモールビジネスをはじめるスタートになるのかもしれない。

小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice) 黒沢 健二

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大きいことは良いことだ!?

資本主義経済におけるルールは様々ある。その一つが「大きいことは良いことだ」である。
市場を支配する割合が大きければ思い通りの事ができるし、大量生産はコストダウンに繋がり利益を上げる体質を作りやすい。大きな利益を上げられればたくさんの雇用を生み出せるし、納める税金も多くなる。幸福の最大化という点においてみれば、まさに最適解と呼べるだろう。

しかし、これはルールではなくテーゼなのかもしれない。ある特定の状況にのみ成立する、未だ証明されていないテーゼ。もしそうであれば、違った形のルールがあるかも知れない。
まずは、そういう視点で世界を見つめ直す必要がある。

ようこそ、新しい現実

最初に踏まえておきたいのは技術的な革新についてだ。

p12
新しい現実とは、今や誰でもビジネスができるということだ。かつて手の届かなかったツールは容易に手に入る。何千ドルもした技術はほんの数ドルか無料にすらなっている。ひとりで二つ三つの仕事、ときには部署全体の仕事ができる。数年前まで不可能だったことが今日では簡単だ。

グーグルにアカウントを取ってみよう。もう、ほとんど何でもできることに気がつくはずだ。もちろん気の利いた作業はできないかもしれない。プロ仕様の高機能を使うこともできないかもしれない。でも、「とりあえず始めてみるだけ」の機能ならば手に入る。メール、ブログ、表計算、文章作成・・・。スタートアップにはそれで十分だろう。

自分の好きなことをして生きていくというのは、爆発的人気サイトを作って、それをどこかの大企業に売りつける事は全く違う。もちろん巨万の富を稼ぎ出せば、その後の人生を「好き勝手」に生きることはできるだろう。でも、好きなことを仕事にして生きていくのと、好き勝手に生きていくことの間には微妙かつ確かな壁があるように思う。

目指すべきは何だろうか、好きなことをして生きていくことだ。好きなことをして、利益を上げることだ。好きなことをしながら生計を成り立たせることだ。そういった視点に立てば、別に一等地にオフィスを構え、決して名前を覚えきれないようなたくさんの社員を抱える必要はない事に気がつく。そういうのは別のゲームのルールであって、皆がそれに参加する必要はない。

ビジネスにもいろいろな形がある。それを成り立たせるだけの技術はもう十分にそろっている。

これからの日本

ビジネスを始めるというのは、今までの日本においては「大きなリスクを背負い込む」のと同様であった。それは単に資金だけの問題ではない。一度レールから踏み出すという行為は、失敗すればもうそのレールには戻れないことを意味している。レール=安定的な生活を投げ棄てる事は、安定が意味を持つ時代ではほとんど「愚か」と言ってもよい行為だっただろう。少なくともかなりの覚悟が必要であったことは間違いない。

しかし、幸いと言うべきか、その安全路線はもはやほとんど機能していない。レールの上を走る列車が運行していない、あるいは走っている途中に突然レールが無くなる、ということはざらにある。日本における安定性はごく限られた職種の中にしか存在しない。

まとめ

技術革新はグローバルに影響している。少なくとも大抵の先進国においてその恩恵を受けることは難しくない。「小さなチーム、大きな仕事」は「技術があるんだから、とりあえず始めてみよう」というアドバイスが詰まっている。もちろんビジネスを始めた後、どのように運営(経営)していくかについてのフォローもある。しかし、そんな問題はまず始めてから考えればよい。

一つ考えておきたいのは、今の日本において「安定的な人生」はほとんど幻想だ、ということだ。
そういったルールで生きてきた人、あるいは今がっちりとしたレールに乗れている人は、新しい現実を強く否定するかも知れない。あるい馬鹿げていると罵倒してくるかもしれない。

でも、そういうのは素知らぬ顔をして無視していればいい。そのルールが大多数に通用した時代はもう終わったんですよ、と心の中でつぶやいておけば十分だ。

・技術的なバックアップはもう準備されている。
・日本の社会で安定的に生きていくのは大変難しい。

これら二つの前提に立ってみれば新しい現実の形が見えてくるだろう。何もグーグルを作りなさいと言っているのではない。自分なりのやり方で、自分らしいビジネスを作って、継続していけばいい。そのためのコストは三重の意味で下がっている。

  • コンピューターとネットワークさえあれば、とりあえず始められる。(資金的)
  • 仕事をしながらでも始められる。(保険)
  • レールが機能していないから、退職してもさほど問題ない。(職歴)

もちろん、とりあえず始められるからといって、それが簡単というわけではない。しかし、今の日本において「とりあえず会社に就職できたからあとはごますりの技術を磨いて生き残る!」なんてことを目指すよりは遙かにリスクを下げることができるだろう。

もし、成功すれば自分の好きなことを仕事にできるのだ。それは中世ギルドの職人と同じような生き方になるのかもしれない。そういう生き方にほんの少しでもあこがれを抱くのならば、ちょっとはじめてみたって損はない。

p174
何かしたいことがあれば、今しなければいけない。しばらく放っておいて二ヶ月後に取り掛かるというわけにはいかない。「後でやる」とは言えない。「後で」ではそんなにやる気満々でもないだろう。

4月。何かを始めるには「良い理由」になると思うが、皆さんいかがだろうか。

編集後記:
当エントリーは「「新年度の始まり」に本を読んで書評を書こう!企画」への参加エントリーです。

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