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書評 「人生における成功者の定義と条件」(村上龍)

Posted on 2010 年 4 月 11 日 by Rashita
Tag:
  • 企画
人生における成功者の定義と条件
人生における成功者の定義と条件
NHK出版 2004-08-27
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star《成功者》の定義と条件。
star生活費と充実感を保証する仕事を持ち、信頼できる小さな共同体を持ってる人
star自助の精神こそ・・・

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2004年8月25日初版。6年も前の本であるにも関わらず、この本で提起されている問題に明確な答えは出ていない。その問題とは一言で言えば「言葉不足」となるのかもしれない。

p6
社会のシステムや考え方が変化すると、人びとの価値観や判断基準や生き方の選択も変化していく。終身雇用が当たり前、という考え方が過去のものになろうとしているが、それは雇用システムだけの問題ではなく、生き方の根幹に関わることなので、当然人びとの考え方や価値観も変化を迫られることになる。だが、とういった変化に言葉や概念はうまく対応できていない。

最近ではようやく「ノマド・ワークスタイル」や「ギルド型社会」といった言葉が生まれ、普及してきた。しかしそれで全てが表現できているとは思えない。終身雇用の崩壊というフレーズはすでに見飽きたが、その後の社会を定義する言葉が存在しない。結局これからの社会に対して「不安定な社会」という漠然としたイメージしか湧いてこない。

これは、「社会」に対する言葉だけではない。「成功者」という言葉においても同様だ。著者はで旧来の「成功者」の概念を以下のように定義している。

p8
成功者というのは、法の範囲内で平均以上に金を儲けた人と出世した人を指す言葉だった。

確かにそうだ。そしてその成功者になるためのルートは実にはっきりしていた。良い高校、良い大学、そして大きな会社や役所。そういったルートを通っていれば何一つ考えることなく成功者になることができた。幸か不幸かこのルートを通っている間は「自分は本当に何がしたいのか」「何に興味があるのか」という事について考える必要はなかった。

そして現代だ。終身雇用が幻想化した時代の中で成功者になるためのルートは限りなく狭くなった。あるいは無くなったと言えるかもしれない。こういった社会では成功者という概念そのものが変化する。しかし、それは6年経った今でもうまく定義されていない。

それはなぜなのだろうか。

「成功者」の言葉

この本は村上龍氏と5人の著名人それぞれとの対談という形で構成されている。ラインナップは豪華といっても差し支えないだろう
※以下敬称略

  • 安藤忠雄
  • 利根川進
  • カルロス・ゴーン
  • 猪口邦子
  • 中田英寿

それぞれの「成功者」が自分と仕事の関係性について話を進めたり、村上龍氏が成功者の定義を訊いたりする中で、さまざまな事が浮かび上がってくる。

それぞれの対談の中から印象深い部分を引用してみる。

安藤忠雄

p19
人間の力の源となるのは、やはりこの<感動>なのでしょうね。その後、建築設計を仕事に選び、今まで四十年間続けてきたのは、結局その<感動>が私の原典にあったからのような気がします。

利根川進

p121
ある目標があって、そこへ向かって一生懸命努力しているときに、人間はハッピーに感じるんです。それで目標に到達しちゃうと、もうハッピーじゃないんですよ。次の目標が必要になってくる。

カルロス・ゴーン

p151
人間は物理的にも変わっていくわけだから、生きているならば常に変革し、適応して成句を目指すべきです。唯一変わらないのは死者だけです。死んだものは変わりません。

猪口邦子

p199
社会によって解決法を処方してもらうちうのではなくて、個々人が自分の時代の問題としてそれをOWNする。

中田英寿

p246
近くで見ていて「うまいな」と思う人がいると、考えるじゃないですか。「ああなるんはどうすればいいんだろう」と考えながら練習するとうまくなる、ということはあると思います。

新しい「成功者」とは?

上の引用からおぼろげながらに見えてくるものがある。それは

・自分の感動に根差した目標の重要性
・成功は到達点ではない
・成功のあり方は個人に依る

ということだ。そしてこれが「成功者」という言葉が新しい文脈に置き換わらない理由なのかも知れない。

既存の成功者というのは「成功した人」つまり過去あるいは完了形の結果を表すものだった。しかし、現在の「成功者」は「充実感を感じながら仕事ができている人」というような進行形の言葉である。それは終わってしまった行為ではなく、継続している状態の事だ。つまり成功者はスゴロクのアガリではない、ということだ。この決定的な差異が「成功者」という言葉の機能不全を起こしている原因だろう。

成功が個人の充実感と結びつくならば、成功の形も人によってそれぞれ違う。ある人は文章を書くことに満足感を覚えるかもしれないし、ある人は面白い本を他に人に紹介することかもしれない。読者とプラットフォームを結びつける事に興味を覚える人もいれば、他人に本を売ることをおもしろがる人もいるだろう。その興味と実際の仕事の結びつき方には様々な可能性がある。

だから「こうすれば成功者になれますよ」という均一的なアドバイスは存在しない。むしろ我々に必要なのは充実感を持って仕事をしている人々の存在である。それを「お手本」として自分なりの仕事やその関わり方を見つけていくしかない。

まとめ

著者は成功者の定義の仮説を打ち出している。

p13
人生の成功者というのは、「生活費と充実感を保証する仕事を持ち、かつ信頼できる小さな共同体を持っている人」という仮説を立ててみたい。

確かに、そういった人生の送り方は「あこがれ」を感じる。自分自身そのもので生きているという感覚がするに違いない。

幸い私たちはいろいろなツールを現代で手にしている。そして仕事のあり方は多様化している。ネットを基盤とした小さなコミュニティーの力強さはTwitterをやっている人ならば感じていることだろう。村上氏が定義する成功者になるための土台は整いつつある。

でも、もしかしたら誰しもが人生の成功者にはなれないのかも知れない。しかし、今までよりはずっと間口が拡がっていることは間違いない。それは一つの希望となりうるだろう。

限られた一握りの人間だけが華々しく飾られた「成功者」の名札を付けられるということは無くなってきている。むしろそんな物にたいした価値はない。現代の「成功者」ならばそのような名札は直ぐにでも破り捨てることだろう。

過程を楽しむこと、ワクワクできる目標を持つこと、自分の好きなことに専念すること。それが「成功者」への道のりだ。そしてその道を歩むためには「自分は何が楽しめるのか」「どんな目標ならばワクワクできるのか」「自分の好きなことは何か」ということを知る必要がある。もしあなたが現代の「成功者」になりたいと願うならば、自分自身と向き合う所から始める必要がある。

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編集後記:
当エントリーは「「新年度の始まり」に本を読んで書評を書こう!企画」への参加エントリーです。
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