7-本の紹介

書評 「野村総合研究所はこうして紙を無くした!」(野村総合研究所ノンペーパー推進委員会)

ペーパーレス環境に興味を持っていたので、特に中身も確認せず購入。たいして期待はしていなかったのだが存外に面白かった。全然予期していなかった発見が多数あった。正直タイトルの付け方を間違えたのではないかと思う。私ならば「ワークスタイルイノベーションのつくりかた」というタイトルにすると思う。

野村総合研究所はこうして紙を無くした! (アスキー新書)
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単に紙を無くすという事ではなく、仕事場(オフィス)をいかに改善するか、オフィスに求められているものは何だろうか、という考察を踏まえて進められていく「ノンペーパー推進委員会」の活動は非常に興味深いものがある。

PCの普及によってデータが電子化していく中で「ペーパーレス活動」が起こるのは必然とも言える。野村総合研究所の当初のペーパーレス活動は、結果として紙を増やすことになったという皮肉な現象を起こした。紙にかかるコストを削減したり、プリンタの高機能化を進めれば、紙を使うことの「心理的ハードル」は低くなってしまう。結局オフィスから紙が溢れる状態は解消できなかった。

印象的なのはその次の取り組みだ。

p7
そこで、第二段階として、仕事のやり方、つまりワークスタイルの側面から取り組むことになっていく。これまでの取り組みを振り返り、先行事例、そして社員である自分の働きやすさとは何なのかなど問題の背景を深く理解することで、紙にとらわれない働き方、おsれはペーパーレスでも、ペーパーフリーでもない”ノンペーパー”スタイルを醸成することを目標とするに至った。

つまり、現状の職場の環境を変えずに、単に「紙を使うのを減らしましょう」というアプローチではいつまでたっても、「ノンペーパー」にはたどり着けない、ということだ。もっと根本的な所から見直していかなければ、「紙にとらわれない働き方」を実現することはできない。

実際に紙を無くして仕事をする環境を得られたというのも大きな成果だが、この取り組みの一番重要な点は「自分たちの働き方」を見直すことができた事ではないだろうか。

p9
それは、紙をなくすというよりも、紙を買い、資料を作ってから、どう使い、捨てていくのかまでのプロセスをもう一度見直し、「紙にとらわれない」業務スタイル=”ノンペーパー”スタイルを築いていくことなのである。そして、それは、紙を使わないというのではなく、使っていてもそれを溜めこんでしまわないようにして、誰もがその情報にアクセスできるような状態に仕事場を保つことが重要なのである。

この本で紹介されている事例はオフィスという大きな環境においての話だ。しかし、これは仕事術というもの一つ取ってみても同様の事が言えるのではないかと思う。現状の仕事のスタイルに大きな問題や不満がある場合、部分的な改善を行ってみてもどうしようない事が多い。紙を減らそうと思っても減らせないというのと同じ事だ。

そうではなくて、もっと根本的な所からの改革というものが必要になってくるのだろう。

暗黙知を活かすために必要なこと

興味深い事例はいくつもあるの。その中でも「情報共有化」については単にオフィスを超えてこれらかのネット社会でも参考になりうる部分だろうから少し紹介しておく。

情報の共有化のポイントは「ノウハウ」+「ノウフー」だ。

p138
「情報共有化」を有効に行っていく上では、ノウハウ(Know How)に加え、ノウフー(Know Who)を重視していくことも意識すべきである。形式化された技術情報に留まることなく、一人ひとりが持っている属人的な知恵として、形式化されていない情報の交換も可能にしていくための環境を整えていかなければならないのである。

知識というのはたいてい言葉や文章で提示されるものだ。しかし各個人が持っている知識がすべて文章化されているかというと、そうでもない。自分が「当たり前」に思っていることが他の人からみると有用な知識だったりすることは多い。それは大抵「疑問」に触発される形で引き出され文章化される。言い換えれば「知っているけども、聞かれるまでは言葉になっていない」知識ということだ。そういうものがたくさんある。

そういった眠れる知識を活用するために必要なことは

・どの分野の情報について誰が詳しいのかが分かる環境
・その人にアクセスできる環境

の二つだろう。

この文脈においてTwitterなどのソーシャル・ネットワークは大きな可能性を秘めていると言って良いだろうし、実際にそれを体感しておられる方も多いかも知れない。私も何気なく質問したことの解答が、140字以内(たいてい一文)でまとめられて返ってくることに驚きを感じることが多々ある。そういう解答は示唆に富んでいることが多い。

野村総合研究所の中のある本部では「ちえのわ」というシステムが運用されているらしい。ユニークで非常に的を射たネーミングセンスだと思う。

まとめ

本書はどうやって紙を無くすかの方法論を提示した本ではない。「オフィスを改革していくためには何が必要なのか」についての本である。そしてオフィスの改革はすなわち働き方の改革に繋がっていく。本書の言葉を借りれば「ワークスタイルイノベーション」ということだ。

今、日本企業に求められているのは目先のコスト削減などではなく、この「ワークスタイルイノベーション」ではないだろうか。本書を読んでそれを痛烈に感じた。

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