「タスク」の研究

効果的にやる気をなくさせる方法

さぁ今からやろう!、と思っていたことを
「さっさとやりなさい」
と命令されると、とたんにやる気がなくなる、という経験をお持ちではないだろうか。

私はかなり天の邪鬼なのでそういった経験はたびたびある。たぶんそれほど天の邪鬼でない方も、あるいは素直な方でも同じような経験をされているかもしれない。これは単に「へそまがり」の心理というだけではない、何かが潜んでいるのではないだろうか。

今回はこれについて考えてみたい。心理学的な要素からも応援を頼みつつ、ToDoリストとどう付き合うか、どう付き合ってはいけないか、にも言及してみる。

無力感の習得

まずは無力について。「オプティミストはなぜ成功するか」(マーティン・セリグマン)から引用しておく。

p19
無力とは、自分がどんな選択をしようと、これから起こることに影響を与えることはないという状態だ。

これはつまり「あきらめ」の状態とも言い換えられるだろう。問題はそれがどのようにして起きるのか、という点だ。前著よりもう少し引用する。これは犬を使った実験が失敗に終わったときの話だ。

p43
つまり、実験の早い段階で、犬たちは無気力になることを教えられたのだ。だから、犬たちはあきらめてしまったのだ。音はこの際関係なかった。パブロフの条件づけの間、犬たちはもがいても、跳び上がっても、吠えても、何もしなくても、そんなことにはかかわりなく、ショックが与えられたり、やんだりすると感じた。犬たちは自分が何をしても関係ないことを”習得”したのである。だから逃げようとはしなかったのだ。

この実験の「失敗」が意味するところは大きい。

無力の定義を逆から見れば、意欲的な状態とは自分が選んだ選択や行動によってこれから起こることに影響を与えられると思える状態の事になる。ある種の環境をコントロールできると信じるに値する状況、それが人の意欲に関わっているということだ。

そして、コントロールが及ばない事を知ると犬は「あきらめ」た。さて、人間はどうだろうか。三度「オプティミストはなぜ成功するか」より引用しよう。これは犬に対して行った実験のと同様の実験を人間に対して行った研究者の台詞だ。もちろん実験は電気ショックではなく、不快な音を使って行われている。

p57
「マーティ、今度の実験の結果は、ひょっとしたら大きな意味を持っているかもしれませんよ。最初に逃れられない音を聞かされた人々は、シャトルボックスで大部分そのままじっと座っていたんです!信じられますか?」ヒロトが専門家らしい落ち着きを保とうとしながらも、興奮しているのがわかった。「まるで自分には音をとめる力がないと悟ってしまったかのように、やってみようともしなかったんです。時間も場所もすべて違っているというのに。音に対する無力感を新しい実験にまでずっと持ち越してしまったんです。

どうやら人間も同様に、「無力感」を学習してしまうようだ。

人間も環境が自分のコントロール下に無いことを体験すれば、あたかもそれが「世界のルール」であるかのように振る舞う、ということだ。ただし、これは改善できると、著者は述べている。その辺りは割愛するので興味のある方は直接この本を読んでいただきたい。

長過ぎるToDoリストの弊害とその対策

人が無力感を習得してしまう事と、ToDoリストにはどのような関係があるだろうか。要点だけ言えば、

「長過ぎるToDoリストは無力感を生み出す」

ということだ。それは単にそれを眺めてうんざりする、というだけではない。物理的に達成できないToDoリストはそれを見る人に無力感を突きつけてしまう。

「結局どんなに頑張ってもこのリストは消化しきれない」

という事を何度も体験することは、無力感を学習しているのと同じ事だ。だから、長過ぎるリストを書く人はいずれそのリストを見なくなってしまう。

さて、それを踏まえればどのようにToDoリストと付き合えばよいかが見えてくる。

・できうるToDoしか書き込まない
・リストを操作する

この二つだ。

前者は「これだけできたらいいなという理想」ではなく自分の持てる時間でこなせる量のタスクだけを書き込む事だ。これがある程度できていれば無力感を突きつけられる事はかなり少なくなるだろう。この辺に関しては「残業ゼロの1日1箱仕事術」(佐々木正悟)が参考になると思う。まず実際に自分がどれだけの作業をこなせているのかを記録するところから始まるだろう。

後者へのアプローチは多数存在する。要点はリストに自分のコントローラーを渡さないということだ。リストをコントロールしているのはあくまで自分という感覚を失えば、無力感につながってしまう。

リストを並び替えたり、先送りしたり、前借りしたり、シチュエーションで抽出したり、かかる時間が短いもので並び替えたり・・・リストに対してできる事はいくらでもある。そういうちょっとした事でも自分とリストの関係性を確認する上では重要な事だ。

まとめ

今回は無力感とToDoリストについて考えてみた。誰か他の人に対してやる気を失わせるには、自分がどう動いても何も状況が変わらないということを突きつけ続ければよい。非常に簡単だ。気まぐれでワンマンな社長などはその典型だろう。

自分とToDoリストの関係も同様といえる。はなからできもしないリストを書く事に意味は無い。むしろ有害とすら言える。

ToDoリストはあなたの秘書であって、上司ではない。その関係が逆転してしまうとリストは機能しなくなるだろう。

参考文献:

オプティミストはなぜ成功するか
オプティミストはなぜ成功するか 山村 宜子

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