前回のエントリーではベンジャミン・フランクリンの自らを向上し続ける姿勢を紹介しました。この「刃を研ぎ続ける」姿勢を見ていると、あるものが連想されてきます。
プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編)) |
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P・F. ドラッカー Peter F. Drucker 上田 惇生
ダイヤモンド社 2000-07 おすすめ平均 |
成果を上げるための6つの要点
ドラッカーは成果を上げてきた人々を観察することで、実際に成果を上げるための「いくつか簡単なこと」を6つにまとめています。
第一に、努力を続けること
第二に、仕事において真摯さを重視すること
第三に、日常生活に継続学習を組み込んでいること
第四に、自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込んでいること
第五に、行動や意思決定がもたらすべきものについての期待を、あらかじめ記録して後日それを実際の結果と評価すること
第六に、仕事や地位や任務が変わったときには、新しい仕事が要求するものについて徹底的に考えること
これらは何一つ特別な事ではありません。そこには才能といった魔法の杖は存在しません。誰しもが描く成功のための道のりを、そのまま歩いているだけです。ただ一つ重要なことは
成果をあげ続け、成長と自己変革を続けるには、自らの啓発と配属に自らが責任をもつということがある。
という点です。プロフェッショナルは「自己啓発しなさい」や「この場所で頑張りなさい」と誰かから言われたからそうするのではありません。自分の内にある価値観に従って、そうすべきと感じるから、真摯に仕事をこなし、継続的に学び、仕事について問いかけるわけです。
知識社会を生き抜く知識労働者は、このような自らの学びをコントロールする、つまり自分をマネジメントできる力がなければ成立しないものになっていくのでしょう。
本書はそういった知識労働者のための、自分マネジメントの考え方が詰め込まれています。
主な構成
Part1では社会構造の変化を説きます。企業の寿命が短くなっていく一方で、働く人々の労働期間は長くなってきています。必然的に、一つの企業だけで働く力だけでは長い労働人生をやっていくことはできません。企業のあり方を抜け出る「仕事の技術」が必要になってくるのが、これからの社会です。
最近のノマドブームやセルフブランディングといったものに注目が集まっているのも、現代を働く若いビジネスパーソンがそのような状況を肌で感じているからでしょう。
Part2では「働くこと」が中心的テーマになっています。
「生産性をいかにして高めるのか」
「なぜ成果があがらないのか」
「貢献を重視する」
この3つの章は、今を生きるビジネスパーソンにとって必要不可欠といっても過言ではない内容が含まれています。
Part3では「自分のマネジメント」に焦点が絞られています。
「私の人生を変えた七つの経験」
「自らの強みを知る」
「時間を管理する」
「もっとも重要なことに集中せよ」
この4つの章は、タイトルだけで興味を持つ人がたくさんおられるのではないかと思います。特に「自らの強みを知る」「もっとも重要なことに集中せよ」というのは、セルフブランディングにおいても、タイムマネジメントにおいても意識すべき事柄だと思います。
Part4では意思決定について、Part5では自己実現と社会の変化について語られています。
知識労働者のための仕事術のバイブル
注目したいのは、Part2とPart3です。もう一度章のタイトルだけを抜粋します。
「生産性をいかにして高めるのか」
「なぜ成果があがらないのか」
「貢献を重視する」
「私の人生を変えた七つの経験」
「自らの強みを知る」
「時間を管理する」
「もっとも重要なことに集中せよ」
もし、あなたが知識労働者ならば、あるいは将来的に知識労働者でありたいと思うならば、この7つの章に答えは全て詰まっています。あるいは、必要な問いかけが全て詰まっています。じっくりと本と向き合い、単に読むだけではなく自分なりに実践の方法を考えて、行動に移せるならば、知識労働者向けの仕事術本はこの一冊だけで足りるかも知れません。
ただし、この本の内容はぎゅっと凝縮されたものです。もちろん具体的なやり方やノウハウというものは解説されていません。そういった部分を他の仕事術系の本で埋めていくという進め方はあるでしょう。
私のような仕事術マニア(高尚に言えば研究家)に存在価値が生まれるとすれば、それはこのドラッカーの思想をわかりやすく、使いやすい方法論と共に、ビジネスパーソンの元に届けることができた時でしょう。
「もし新米のビジネスパーソンがドラッカーの『プロフェッショナルの条件』」を読んだら」
とかね。
▼合わせて読みたい人は:
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら |
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岩崎 夏海
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