最近、改めて「場」が持つ力は大きいなという事を感じた。キッカケは「東京ライフハック研究会」だ。
第一回はTwitterとユーストリームで流れを追いかけていただけだが、その熱気は十分感じることができた。
これは「名古屋ライフハック研究会」を見ていても感じることだ。たんに優れた仕事をしている人、効率の良い仕事をしている人の集まりというのではない。むしろ参加されている方々を見ていると、前向きに進んで行こうとするエネルギーの大きさ、あるいは少しでも人生を楽しんでやろうという姿勢、そういったものに圧倒される。
こういった研究会は「場」を作っていると思う。そしてその「場」がもつ力が存分に発揮されていると思う。今回は「場」についてちょっと考えてみたい。
「場」とは何か?
ここで言う「場」とは物理的な場所を示すものではない。ではどのような意味か。まず「場」という言葉が持つ意味を辞書で引いてみよう。以下は旺文社国語辞書より
- 場所。いどころ。
- 場合。とき。
- 映画や劇の一場面
- [物]物体やエネルギーの存在する場所
- 取引所の立ち会い場
私が言う「場」というのは4の意味にほんの少し1を加えたような意味合いだ。ちなみに辞書にもあるとおり、4の意味は物理学で使われている。電磁場とか重力場といった感じだ。以下はウィキペディアより。
場(ば、field、工学では界と訳される)とは、物理量を持つものの存在が別の場所にある他のものに影響を与えること、あるいはその影響を受けている状態にある空間のこと。
まさに、「東京ライフハック研究会」や「名古屋ライフハック研究会」はこの「場」とも呼べる存在になっているのではないだろうか。
例えば、その辺の人間を無作為に10人なり20人集めればそれで「場」が出来上がる、ということは無い。そこには確固たる軸や方向性が必要になってくる。あるいは中心となるエネルギー源と言い換えても良いかもしれない。
攻殻機動隊(2ndGIG)の世界で難民が久瀬の電脳に引かれるように、同一の志向性を持った意思が集まる場所それが、「場」ではないだろうか。
「場」が持つ力とは
さて、「場」という物のイメージが出来たところでそれが持つ力について考えてみたい。
まず第一に上の4の意味での「場」が持つ力だ。これが意味するところは、感化していくエネルギーと言えると思う。あるいは伝播される熱量と言い換えても良い。「場」の中心にいる人は大きなエネルギー(熱意)を持っている。そのエネルギーで人を引っ張っていく、というのではない。そのエネルギーが参加者に伝わるというのが「場」が持つ力ではないだろうか。
もう一つの「場」の力は1の意味合いだ。つまり「いどころ」の提供だ。今までの日本のサラリーマンは基本的に会社と家庭という二つの「いどころ」しかなかった。愛社精神に溢れたサラリーマンならば会社しか「いどころ」が無かったとしてもおかしくない。
それが、正しいか間違っているかはわからない。しかしリスクフルであることは確かだ。人の精神はその「いどころ」に大きく依存する。もし会社しか「いどころ」が無い人間が運悪くリストラで早期退職のターゲットにされたらどうなるだろうか。人によって程度の差はあれ、アイデンティティーが大きく傷つくことは避けられないだろう。
現代のビジネスパーソンは「会社」に寄りかかる危険性を熟知している。しかも、現代では選択肢は昔とは比べものにもならないくらい多様化している。「NPO・NGO」「趣味のコミュニティ」「ネットのソーシャルなつながり」「副業」・・・と会社や家庭以外にも「いどころ」を得られる場所はいくらでもある。逆に考えてみれば、これくらい「いどころ」があるというのは、それだけ人々が求めていると言うことでもあるのだろう。
このあたりをツッコミ出すと長くなるので、端的に言えば、「共同体」としての機能を「場」が担うのではないだろうか、ということだ。
実践する「場」を提供することの意味
さて、「場」についていろいろ考えたところで「東京ライフハック研究会」についてすこし考えてみたい。「東京ライフハック研究会とは?」を公式ブログより引用させてもらう。
- 平たく言えばライフハックや仕事術の勉強会
- 敷居が高そうに見える仕事術やライフハックをもっとカジュアルに!
- 聞くだけの講義中心ではなく、参加者自らが手と頭を動かす実践中心の場
- リアルタイムアウトプット経験とコラボレーションによる価値創造経験を重視
ブログのトップでは「仕事術をもっとカジュアルに!」がアピールされている。これはこれで一つ有効な試みだろう。以前待合所かどこかで書いたが「翻訳者」が今求められているのではないかという気が私もしている。
しかし、この会の一番重要な点は
「聞くだけの講義中心ではなく、参加者自らが手と頭を動かす実践中心の場」
この点にあると思う。もし私が「この研究会で差別化できる点が何かありますか」と尋ねられれば間違いなくこの点をプッシュするだろう。
セミナーでも勉強会でもそうだし、ビジネス本でも同じなのだが、それらは基本的には「知識の受け渡し」でしかない。もちろんそれ自身に意味はある。が、それだけでは充分ではない。
かのドラッカーはこう言っている。
「知識は、本の中にはない。本の中にあるものは情報である。知識とはそれらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。」
知識を得ただけでは、何の成果にもなっていない。そして今までのセミナーなビジネス本は基本的にそこどまりの物が多いのではないだろうか。だから、どれだけセミナーに参加してもビジネス本を読んでも、人生が変わらない。
だから「実践中心の場」というのは、本当に意味ある学びをしたければかなり重要な要素だと思う。
さらにドラッカーはこうも言っている。
「人に教えることほど、勉強になることはない。人の成長の助けとなろうとすることほど自らの成長になることはない。」
これは私の実体験でもそうだし、多分皆さんの経験でもそうだろう。人に教えることほど自分が学べることはないのだ。これは人生おいて数少ない真理の一つだと思う。
最後にもう一つだけドラッカーから引用しておく。
「仕事こそが自己を成長させる最高の道具」
この言葉が持つ意味は深い。ここでいう「仕事」というのは「会社の中でやるタスク」の事だけではない。例えばこういった研究会で会の運営をしたり、実際にLTで発表したりするのも「仕事」の一つと考えてよいだろう。
その「仕事」に関わる中で得られる物は多いだろう。
事前の準備で学ぶこと、実際にやってみて気がつくこと、最後に振り返ってみて気がつくこと。これらは成長する上で欠かせない要素だ。同じ事が「会社の中でのタスク」でも言える。実践する中でしか学べない物があるならば、実践している数が多い方が成長できる。シンプルな理屈だ。人より練習していていれば、それだけ能力があがる。
東京ライフハック研究会が目指すところがどのようなものかは、部外者の私にはわからない。でも、それは普通の人が「挑戦できる場」ではないかな、という気がする。これは裏返せば失敗できる場だ。絶対に失敗してはいけない場で挑戦することはできない。
人は、考え行動する中で成長していく。
そういう意味で、その辺に転がっているビジネス書を20冊読むよりも、この実践の場に身を置いてみる事の方が成長するために有益だと思う。何か話を振られたら「安請け合い」してみればいい。興味があったら自分で分科会を立ち上げてみればいい。それだけで目の前の世界はきっと変わる。「そんなに単純なものじゃないだろう」と斜に構えている人こそ、チャレンジして欲しい。人生の風景はいつだって一瞬で変わりうる。
まとめ
長くなったのでまとめだけは簡単にしておこう。「場」が持つ力は今現代で強く求められているだろう。場は熱量を伝播し、貢献心を揺さぶる。共同体としての機能を持ち、人の居場所を提供する。
今の流行は「わかりやすさ」と思われている。もちろんそれもある。でも、その後ろに隠された心理的な意味合いは「私も参加したい」だと個人的に考えている。「わかりやすさ」は理解したい欲求の現れだし、「理解したい」というのは「それに関わりを持ちたい」という事だろう。
私が、若いビジネスパーソンに贈る言葉があるとすれば、
成長したければ、失敗し、後からそれを振り返りなさい。
である。もちろん失敗するためには挑戦する必要があるのは言うまでもない。
▼参考リンク:
東京ライフハック研究会
名古屋ライフハック研究会
ウィキペディア 場
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