10代で読んでいなくても恥ずかしくない本の紹介

10代で読んでいないと恥ずかしい必読書 – その1」というエントリーがあった。なにやらTwitterでもこのエントリー引いている人が多かったのでそれなりににぎわっていたのだろう。

もちろん、このリストを見て、「よし、このリストに並んでいる本を上から読もう!」と思った人はいないだろう。もし、いるとすれば水を差すようで悪いがあれはネタである。あのエントリーに絡んでいる他のBlogを見てみよう。

[そのた長文]十代の必読書は自分の好きな本だけ(G.A.W.)

Math – 01者で読んでいないと恥ずかしい必読論文(404 Blog Not Found)

10代でそんなに読むことはないよ(finalventの日記)

まあ、そういう事だ。

率直なアドバイス

私なりに、簡単にまとめると

「読みたい本を読め」

となる。まったく身も蓋もない。でも、それが真実だと思う。読みたくなければ読まなくて良いと思う。

私自身本格的に本を読み始めたのが18歳くらいなので、あのエントリーに上げられているような本を読み始めたのは、10代後半から20代頭といったところだ。だいたい半分ぐらいは消化している。

プラトン『国家』
アリストテレス『ニコマコス倫理学』
ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』
ヘーゲル『精神現象学』
デカルト『省察』
パスカル『パンセ』
カント『純粋理性批判』
キェルケゴール『死に至る病』
ハイデッガー『存在と時間』
サルトル『存在と無』
ベルグソン『時間と自由』
フーコー『言葉と物』
ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』
ラッセル『西洋哲学史』
ニーチェ『道徳の系譜』

こんな所だろうか。本棚にある本もあれば、無い本もある。無い本は図書館で借りて読んだのだろう。なにせ20代頭というのはすべからくお金がないものだ。興味の対象の広さと手元にあるお金のバランスがとてつもなく悪いのだ。

それはさておき、これらの本を私がこれからの若い人に「読んでおかないと恥ずかしい必読書」として上げられるかというと、そういうわけでもない。@finalventさんの「10代でそんなに読むことはないよ」でも書かれているが

けっこうこれらは私は10代で読んだな。背伸びしたいころであった。

私もこういう感覚で読んでいた覚えがある。難解な本を読んでいるという行為自身に価値を見いだしていた頃があった。今から振り返ってみると、正直そのころどれだけ自分で理解できていたかはかなり怪しい。

ただ、読みたいという意欲はあった。読まなければいけないという使命感に似た気持ちもあった。まるで住宅街を訪問して信者の普及活動に努める宗教家が持つ使命感にも似た気持ちだ。

内田樹氏の「街場のメディア論」に次のような文章が出てくる。

「こういう本を選択的に読んでいる人間」であると他人に思われたいという欲望が僕たちの選書を深く決定的に支配しているからです。ジャック・ラカンの言葉を借りて言えば、僕たちの家の本棚は「前未来形で書かれている」と言ってよいでしょう。

私はむさぼるようにして、この「前未来形」を前倒しで読み進めていたわけだ。読書というのは本来そういうものではないかと思う。不特定多数に向けた「読まなければ恥ずかしい本」を読むのではなく、あくまで自分の興味と関心の延長線上にあるものを読んでいく。

たとえ直接的に興味が無くても、自分の目標とする人が読んでいる本だから試しに読んでみる、というのでも「興味と関心の延長線上」に位置していることは間違いない。そうして、人は本棚__つまり読書歴__というものを作っていくのではないか。

もちろん、「教養」を得るために一定のレベルの本を読むことは必要だと思う。それでも、押しつけられて進める読書ほど苦痛なものはない。ましてやそれを吸収できるかどうかとなると、絶望的である。

いくつかの印象深い本

だから、私の「必読書」というものを提示することはできない。ただ若い頃に__今でも若いが_読んだ本の中で、いくつか印象に残っている本をあげることはできる。例えば、ブタの本だ。

ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある
ブッタとシッタカブッタ〈1〉こたえはボクにある 小泉 吉宏

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star何度も読み返したい「心の」書籍
starこんなに単純に人生って楽になれるんだと思った
starついてくの、結構大変

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マンガである。ブタと仏陀が引っかけられている。おちょくったような本だが、ある種の問いを手に入れるには十分な力を持っているだろう。言い換えれば「考えさせられる本」だ。あまり文章に親しんでいない人でもするすると読めると思う。そして読了後には何か消化できないモヤモヤとしたものが残るはずだ。ちなみにシリーズで何本か発売されている。

続いて仕事の本。

仕事は楽しいかね?
仕事は楽しいかね? デイル ドーテン Dale Dauten

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starとてもよかったです
star焦りが消えた。自己啓発本はもういらない。
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今まで読んだ仕事術系の本の中では一番読み返している本。こちらもストーリー仕立てで読みやすい。仕事そのもの、というよりも人生全般に関する考え方の本だ。もしこういう考え方をする人間が日本の大半を占めていたら高度経済成長はおそらく訪れなかっただろう。しかし、今からの日本では求められるかも知れない。

続いて小説。

初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ)
初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ) ロバート・B. パーカー 菊池 光

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ロバート・B・パーカー氏の小説。探偵小説、つまりハードボイルドだ。スペンサーという探偵が主人公で事件を解決するのだが、この本はちょっと異色である。内容に関しては触れないが、小説というよりは自己啓発的な内容が込められている。

もう一つ続いて小説。

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)
ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫) 村上 春樹

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star「人間の精神の一番ややこしい部分」を描ききった名著

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ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫)
ねじまき鳥クロニクル〈第2部〉予言する鳥編 (新潮文庫) 村上 春樹

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star一番洗練されたかたちの復讐
starさあ、ねじを巻こう。
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ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫)
ねじまき鳥クロニクル〈第3部〉鳥刺し男編 (新潮文庫) 村上 春樹

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star歴史に踏み込み 改めて現実社会へと歩み始める
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村上春樹氏の小説。一番面白かった小説は「世界の終わりと~」をあげたくなるが、印象深いという点ではやはりこの本。1部~3部まで通して読み終わった後のあの感覚は他の小説ではなかなか得られないものがある。

ほとんどまったく同じ自分だけれども、僅かに違う場所にいる事に気が付く。それは世界の見え方がほんのちょっとずれているせいなのだ。

こういう評価は長編小説というものを腰を据えて読んだのがこの本が最初だから、というある種のバイアスがかかっているせいかもしれない。しかし、自分の体験の中ではどのような理由があれ、それが真実である。

おそらく、フルマラソンを始めて完走した人も同じような感覚を覚えるのではないかと、密かに推測している。

さいごに

なるべくジャンルをばらけさせていくつかの本を紹介してみた。もう一度言うがこれは「必読書」ではない。どこまでいっても読書というのは個人的な体験だ。だから大上段に「これを読みなさい」というような「アドバイス」はしたくない。

読む本を探すという行為もまた読書の一部ではないだろうか、そういう気がしている。

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