前回のエントリーでノートを機能ごとに3つに分類してみました。3つの分類は以下の通り。
- 綴じっぱなしノート
- とりあえず綴じてるノート
- そもそも綴じてないノート
今回は、デジタル時代に不遇の扱いを受けかねない「綴じっぱなしノート」について考えてみます。
綴じっぱなしノート
紙の形で連続性を持って綴じてあるものです。後から破り取ったりはせず、綴じたまま使うことが前提です。
これは連続性のある内容か、時系列でまとめたい内容を記入するのがベストでしょう。次は鎌田浩毅氏の「ラクして成果が上がる理系的仕事術」より。
まずノートだが、これには連続性のある内容を記録する。たとえば半年間の講義、何回か連続して聴講する講演会、数日にわたって朝から夕方まで行われる学会などで記帳する手段である。同一のテーマ、または似たような内容で、連続的に情報を書きとめるのだ。
これは非常にわかりやすいですね。なぜこうすれば良いのかというと、情報を後から利用するシチュエーションを想像してみればいいでしょう。
「あの講演会の」→「○○先生が話していた」→「内容に関するメモ」が欲しい。
おそらくこういう感じで過去の記録を参照すると思います。内容に関するメタ情報によって分類してしまうと、そのメタ情報が何であったのか思い出せなければそのメモを探し回ることになってしまいます。
ビジネスパーソンでも、「会議の場で出た意見」「商談中の先方からの提案」という感じで欲しい情報を思い出すのではないでしょうか。記憶を探るキーとしてこういう「状況」が持つ力はかなり強いものです。もちろん時系列も強力なキーと言えます。
この二つを軸として情報を探せるようにしておくのがポイントでしょう。そのための「綴じっぱなしノート」というわけです。
向いているもの
考えられるのは日記と勉強ノートです。
日記は後で見返すためのものですし、基本的にその検索キーは日付です。しかも、前後の日に何があったのかもわかるのが日記の特徴といえます。
つまり、一日の流れ、一週間の流れ、一年の流れを再現できるのが日記の特徴です。これをわざわざバラバラに分解できるものに書く必要はないでしょう。
勉強ノートも綴じっぱなしノートが良いと思います。基本的に「流れ」が重要なはずなのでわざわざ順番を入れ替える必要はありません。ルーズリーフ+バインダーの組み合わせでも同じような感じになるでしょう。
※学生がルーズリーフバインダーを使うのは、順番を入れ替えるためではなく、必要な部分だけ持ち運べる+複数の教科を一冊でカバーできるため。
デジタルとの組み合わせ
綴じっぱなしノートの最大のメリットは「その情報がそこにある」という安心感です。そのメリットが逆に「情報を動かせない」というデメリットにも繋がります。
その弱点を補うのがデジタルツールです。
例えば、ページごとにスキャンしてEvernoteに放り込んでおけば、綴じノートでありながら、ルーズリーフのような運用をすることができます。あるいは家の書類棚に置きっぱなしになっている過去のノートもPDFでスキャンしておけば、スマートフォンでいつでも参照できるようになります。
しかし、これはあくまで弱点を補う意味合いでしかありません。もし、スキャンすることが前提であれば綴じっぱなしノートではなく「とりあえず綴じてある」タイプのノートの方がはるかに便利です。「状況」や「日付」などもEvernoteでタグとして管理すれば1テーマ1ノートと同じような感じで運用することができます。
PC、クラウド、スキャナ、スマートフォンという環境下では綴じっぱなしノートのメリットはあまり感じられません。「その情報がそこにある」感覚はEvernoteの方が強力です。
ただ、全くないかというとそうではありません。
綴じっぱなしノートの意味
個人的な考えですが、クラウド時代に「綴じっぱなしノート」を使う意味は二つあると思います。一つは「スイッチ」。もう一つは「作品づくり」です
スイッチ
簡単に言ってしまえば「気分を切り替える」です。場所という環境が人間の気持ちを切り替えるのに役立つように、使っているツールにも似たような事があります。ある状況において同じツールを使っていると、そのツールを目にしたとき・手に取ったときに自然と気分が「そのモードになる」という事です。
デジタルツールでも同じような感覚はあるでしょうが、「特定の情報だけを集めたノート」というのは特にそのスイッチが入りやすいのではないかと思います。そういう頭の切り替え、気持ちの切り替えに「綴じっぱなしノート」は役立つと思います。
作品づくり
私が今、綴じノートとしてメインで使っているものは、「ほぼ日カズン」「立ち止まりノート」「ブレスト手帳」「インスピ手帳」にメモ帳としての「re-collecton」です。
それらはそれぞれテーマを担っています。「カズン」は計画と行動記録を、「ブレスト手帳」は「アイデアだし」を、「インスピ手帳」は着想だけを書いてあります。これは先ほど述べた「スイッチ」の効果もあるのですが、それ以外に「読み返していて楽しい」という効果もあります。
それぞれ形は違いますが、自分がどんなことを考えてきたのかというのを振り返ることができます。表現を変えれば、自分の思考の跡を「読み返す」ことができます。つまり情報として「見る」のではなく、ある種の作品として「読んでいる」わけです。
そういう事を考えながらカズンをぺらぺらと読み返していたら1月1日に次のような事を書いていました。
ほぼ日カズン式手帳の使い方は想像以上に良い。手帳に何か書いている、というよりも自分の頭の中をモチーフにした一つの作品を作り上げているような感覚を覚える。
私の言いたいことはすでに過去に語られていましたが、要するにそういう事です。
綴じっぱなしノートの未来
今の時代、情報を活用していくためにはデジタルデータで残しておくのが一番良いと思います。環境整備にある程度お金をかけられるならばそういうツールはすぐに揃えることはできます。そしてデジタルとアナログを「組み合わせる」という視点では、「綴じっぱなしノート」の選択はやや不利です。
しかし、別の観点から捉えることもできます。綴じっぱなしノートは「形」として残しておくことができます。自分の仕事の記録でも、日記でも、勉強ノートでも、書き終えて後から見返したときに「あぁ、こういうのあった」という質的な感覚を記憶に与えてくれます。
仕事の記録は自分なりのビジネス書、日記は物語、勉強ノートは参考書。そういった「作品づくり」のような趣が綴じノートにはあります。
重ねて言いますが現時点でデジタルデータとの併用を考えた場合、綴じっぱなしノートは不利な選択と言わざる得ません。それはドキュメントスキャナにかけにくいからです。わざわざ断裁するならば、初めから綴じてないノートを使った方が賢明です。
しかし、それはまだ技術の方が追いついていないだけかもしれません。実際に本を断裁せずにスキャンする機器も開発されています。ScanSnapのようにセットすれば勝手にスキャンを終えてしまうような、そんな綴じノート向けのスキャナもいずれ手軽に購入できるようになるでしょう。
そういう時代が来たとき、綴じノートの魅力が再発見されるのかもしれません。
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