第三回までで、「デジタルとの連携」を主眼としたアナログノートの機能について大雑把に考えてみました。
このブログの大きなテーマの一つでもある「クラウド時代のアナログ力」というのは、アナログの良さとデジタルの良さを組み合わせるところにあります。アナログ一辺倒でも、デジタル原理主義でもなくそれぞれの良さを使いこなす、それが目標とするところです。
データの編集や検索だけではなく「持ち運べるデータ量」に関してはデジタルの得意分野です。情報量が増えれば増えるほどそのメリットは大きくなっていきます。
では、アナログツールの魅力とはなんでしょうか。アナログツールならではの機能やその価値について考えてみたいと思います。
即アクセス
まず、第一に思い浮かぶのは「起動時間」の早さでしょう。ページが100を超えるノートであっても、付箋なりしおりがあれば最新のページに即アクセスすることができます。
ページを開いたら、そのまま書き始める事も可能です。iPhoneやiPadはノートPCなどに比べて、起動時間やアクセスする速度を上げてくれたものの、単純な速度ではまだアナログノートの方が早いと言っていいでしょう。
「すぐにメモをとりたい」という場合ではアナログノートやメモの方が有利と言えます。
「起動時間」の早さは書き込む場合だけではなく、見返す場合にも影響してきます。デジタルツールは「探そう」と思ったときには便利ですが、「パラパラ見返す」という使い方はしにくいと思います。この辺りは、新しいツールの登場で変化するかもしれません。
電源いらず
関連する事として電気が必要無い、というメリットもあります。
電源やバッテリーの量を気にする必要がないので、使えるシチュエーションはPCなどの端末に比べて多いでしょう。
フリーフォーマット
フォーマットの自由さもアナログツールのメリットです。
たとえ、罫線を引いてあるノートでもその罫線を利用するかどうかは使う人の自由です。文字を書かくことも、図を書くことも、何かを貼ることもできます。
アイデアを書き出しているときに図化したくなれば、それをそのまま書く事ができます。グラフが書きたくなれば、線を引くだけでOKです。アプリやツールを切り替える必要はありません。
つまり、「書きたいと思った事がなんでも書ける」という点がアナログの魅力です。「面倒だな」と感じてしまえば、頭の中から出ようとしたアイデアが引っ込んでしまうかもしれません。
デジタルのツールでも自由度が高いノートアプリが徐々に出てきつつありますが、「思うように書ける」レベルはアナログノートの方が上でしょう。
質感のある「物」
「物」としての価値、というのもアナログノートの魅力の一つです。
これは、直感的には分かりにくいかもしれません。
書き込まれている情報がまったく同質であったとしても、それがテキストデータとしてPCに入っているのと、ノートという「形」として残っているのとでは、私たちが感じる安心感は違っていると思います。
もしかしたら、それはデジタル・ネイティブな世代が持つ感覚とは違うのかもしれません。しかし、私たち(すなくとも私は、ということですが)オールドタイプは「物」として目に見える「形」でそこに存在するという事に安心感を覚えます。
それは論理的に考えれば滑稽な事かもしれません。しかし、そう感じてしまうのであれば、その「感覚」は無視しないほうが良いでしょう。
また「質感」という物も考えられます。単純に、書き心地の良いノートは「書く」という作業にインセンティブを与えます。キーボードを軽やかに叩く事に心地よさを感じる人も入れば、手書きの「感触」が好きな人もいるでしょう。
その感覚は単純に「機能」で劣っているからと否定できるものではありません。端的な言葉でいえば、「好きなんだから仕方が無い」という事です。
こういったツールは基本的に使い続けていく事が重要です。そこに「好み」の要素があれば使い続ける助けになるでしょう。逆に自分の嗜好にあわないものは、ハードルになってしまいます。
まとめ
例えば音楽が好きな人は、レコードにこだわって他のものでは聞かない、という人もいるでしょう。あるいはもっと雑多に、家ではレコード、外ではMP3プレーヤーを使い分ける、というやり方も「一つの方法論」でしょう。
私自身は、書くツールとしてそういう雑多な使い分けをしたいと考えています。データの保存やこうした原稿書きはデジタルで行ないますが、ちょっとしたメモ、アイデアのラフスケッチ、気になる事の書き出しなどはアナログツールで行なっています。
それが、私の中で一番バランスが良い構成だからです。私の方法論が別の人に通用するわけではありません。
ただ、それぞれの「良さ」を意識して使い分けるという考え方は今の時代に必要ではないかと思います。それはノートだけではなく、手帳やそれ以外のツールでも同じ事でしょう。
単純に機能の比較をして優劣を決めるのではなく、それぞれの良さをうまく使い分けて機能を活かす、そういう発想は何事においても使える考え方ではないでしょうか。
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