7-本の紹介

書評 「超ヤバイ経済学」(スティーヴン・D・レヴィット スティーブン・J・ダブナー)

この本を読んだところで経済学者にはなれない事は保証しておく。役に立つかどうかすら不明だ。それでも、読み出したらビュンビュン読んでしまうような面白さはあると思う。

超ヤバい経済学
超ヤバい経済学 スティーヴン・D・レヴィット スティーヴン・J・ダブナー 望月 衛

東洋経済新報社 2010-09-23
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なんといっても痛快なのはこのタイトルだ。翻訳者の勝利とも言えるかも知れない。

前作「ヤバい経済学」もインパクトのあるタイトルだった。これは「Freakonomics」の日本語訳だ。「Freak」は一風変わったとか奇っ怪なとか、そういう意味だ。もう少し語感が強いかも知れない。

それとエコノミクス(経済学)との華々しいコラボが「Freakonomics」である。これを「ヤバい経済学」と訳したのが凄い。字面通り訳していたのではこうはいかないだろう。

本書の原題は「SuperFreakonomics」。なんのひねりもなく頭に「超」を付け加えればそれだけで、「超ヤバイ」となる。日本語として立派(?)に成立している。最近ではヤバいと同じ用法でエグいという言葉も使われているようなので、次は「エグい経済学」になるかもしれない。まあそれはそれで違う内容の本を想像してしまうが。

タイトルと同じような感じで、本書の文体はいわばブロークンジャパニーズである。講義というよりも会話に近い。例えばこんな感じ。

歴史を通じて、男はいつも女より楽をしてきた。はいはい、話を一般化しすぎてますよ、はいはい、例外もありますよ。でも、大事なところでは、いつも女は男より辛い思いをしてきた。

しかも、著者達はとっても楽しげだ。語られている話題の中には深刻な問題もふくまれている。しかし、著者達の口調に変化はない。むしろ深刻に語られべき問題をごく客観的な視点で見つめ直そう、つまり相対化しようという試みとすら感じることができる。

ちなみに、上に引いた文章に反発したい人は、次の点を考えてみて欲しい。

  • 戦争や狩りや力仕事のほとんどを男性がやっていたのにも関わらず、女性の方が平均寿命が短かった事
  • 魔女狩りの存在(魔男狩りを見かけたことはあるだろうか)

もちろん、これを踏まえての反論も十分にありえる。ただ、ちょっと頭の片隅には置いておきたい事だ。

インセンティブに反応する

第一章は、女性に関係する問題に焦点が当てられている。タイトルは、

「立ちんぼやってる売春婦、デパートのサンタとどうしておんなじ?」

である。なぜこの二つのジョブが同じなのかについては本書を当たってもらうとして、その章の中では売春婦にまつわる「経済学」がデータを用いて解説されている。

そこでは、前もって準備された「善」と「悪」というフレームワークはない。数字を持ち出して、それぞれの売春婦の行動を分析するだけだ。なぜ100年前と今では春を売る値段が違うのか。売春婦の格差とは。ポン引きの「価値」とは。

経済学的アプローチで面白いのは、結局の所「人はインセンティブに反応している」という考え方だ。つまり、その人なりの合理的な理由で行動を決定しているということ。それは目に見えるお金という形だけではなく、さまざまな要素が絡み合ってくる。それを精査に分析することはできないかもしれない。

ただ、ある人がある行動をとっている(あるいはとり続けている)とすれば、それが自分なりの「利益」を最大化するとその人が考えている(あるいは無意識に判断している)からなのだ。これはゲーム理論のナッシュ均衡に通じるものがあるように思える。

例えば男女の賃金格差について。

稼ぎが少ない女の人を負け犬だなんて考えるのではなくて、女の人にとってお給料が高いことは男の人ほどには意味のあるインセンティブではないだけだと考えるのだ。女の人が子どもに弱いのと同じように、男の人はお金に弱いってことなんだろうか?

もちろん、これは一般化した話だ。でも、そういう考え方もある。「求めよ、されば与えられん」ではないが、男の人はお金に弱いから、それを多く求めるような行動をとり続け、結果として男性の方が賃金が高い構造がうまれたのかもしれない、というわけだ。

これが正しいのかどうかはわらかない。でもこう考えてみると世界は違ったように見えてくる。すくなくとも、この理屈にたてば「男女平等」が等しい賃金構造に置く事とイコールにはならないことになる。ではどのような体制を作ればよいのか?そういう疑問から新しい何かが生まれてくることになる。

さいごに

最近行動経済学の本をいくつか読んでいるので見知った話は割と多くあったのだが、第二章の「自爆テロをやるなら生命保険に入ったほうがいいのはどうして?」は面白い発見があった。
その答えは「テロリスト・サーチエンジン」にあるわけだが、詳細は割愛する。

こういう話を読んでいると、どうしようもなくワクワクしてくる。

「これってどういう事なんだろうな?」というあの科学者特有のあれだ。私自身は科学者とは縁遠い存在だが、彼らのワクワク感をこういった書物で吸収することができる。

彼らは好奇心が原動力なのだろう。エンジンでありガソリンなのだ。もしかしたら好奇心は永久機関なのかもしれない。

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ヤバい経済学 [増補改訂版]
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東洋経済新報社 2007-04-27
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star雑学の書として面白い。「経済」の部分に期待すると肩透かしを食うかも。

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