最近は「物の考え方」に注目が集まっている気がする。ドラッカーの人気が本物ならば、そうなるのは必然だろう。ノウハウや解説ではなく、その元となる「物の考え方」を習得すればあとはいくらでも応用が利く。
タマゴを買うのではなく、鶏を飼うわけだ。
物の考え方と言えば、ジョン・ネスビッツの「マインドセット」というそのままなタイトルの本がある。これは「未来を読み解くものの考え方について」の本である。監訳者前書きの中で本田直之氏が次のように書いておられる。
重要なのは、未来を予測する本をただ読むことではない。どういう考え方に基づいて、先々の方向性を自分なりに判断していくか、ということである。
この「考え方」が「マインドセット」というわけだ。いくつか著者の言葉を引いてみよう。
確かに、私は何年もものの考え方を磨き、情報をふるいにかけるための一定のルールをつくってきた。
ものの考え方は、雨(情報)の降る土地であり、私たちそれぞれが持つものの考え方によって違った結論につながる。
マインドセット、つまりものの考え方というものは、飛行機の風への対し方と同じような働きをする。
情報をいくら集めても「ものの考え方」が無ければ何も意味を生み出すことができない。あるいは大きく間違った結論を導いてしまうこともあり得る。
「マインドセット」の中で著者が掲げる11のマインドセットは次のようなものだ。
- 変わらないもののほうが多い
- 未来は現在に組み込まれている
- ゲームのスコアに注目せよ
- 正しくある必要はないことを理解せよ
- 未来はジグソーパズルだ
- パレードの先を行きすぎるな
- 変わるか否かは利益次第である
- 物事は、常に予想より遅く起きる
- 結果を得るには、問題解決よりもチャンスを生かすべし
- 足し算は引き算の後で
- テクノロジーの生態を考える
それぞれのマインドセットがどのような意味なのかは直接本書にあたってもらうとして、今回はこれをアレンジして私なりの11のマインドセットを作り上げてみたい。
R-style11のマインドセット
- 変わらないものを見つけ出す
- 現在を未来に組み込む
- ゲームの流れに注目せよ
- 「正しい」事なんてない、ということを理解せよ
- 未来はミステリーだ
- パレードの法則の先をゆけ
- 変わるか否かは象次第である
- 物事は、常に予想しない事が起きる
- 結果を得るには、問題解決よりも問題そのものに注目すべし
- 引き算した後に、掛け算すべし
- 情報の生態を考える
それぞれ少しだけ見ていこう。
変わらないものを見つけ出す
変化はたくさんある。そして私たちの目には「変化」のほうが目に付きやすい。でも、それに惑わされることなく「変化していない」ものをじっくりと探すこと。それが「原則」や「基本」を作る手助けになる。
現在を未来に組み込む
現在の姿から未来を予想するのではなく、未来の姿を想定してそれにフィットするように現在からの状態を作っていく。
ゲームの流れに注目せよ
目に見えている数字の大きさよりも、その数字がどのように生まれたのかに注目する。数字そのものよりも変化率。速度よりも加速度に注目する。
「正しい」事なんてない、ということを理解せよ
「正しい」は常に後付か、結果論からしか分からない。下した判断が「正しい」かどうかを事前に検査することはできない。
未来はミステリーだ
マルコム・グラッドウェルの「失敗の技術」より。
パズルの場合、事態が悪化したときに原因を見つけるのは簡単だ。原因は情報を隠し持っている人間にあるからだ。だがミステリーの場合、原因はそれほど単純ではない。情報が不十分なときもあれば、情報を読み解くほど頭が良くないときもある。答えが出ないときもある。
人生はパズルではなく、ミステリー。
パレートの法則の先をゆけ
全体の20%が重要ならば、その20%の中の20%にも注目する。あるいは全体の80%の中の20%にも注目する。
どこもかしこもパレートの法則を使っているならば、ターゲットから外されている層がかならず存在するはず。
変わるか否かは象次第である
これはチップハース・ダンハースの共著「スイッチ!」より。象とは人間の感情。ここを動かせれば人に変化を促すのはそれほど難しいことではない。
もう少し正確に言うと、変わるか否かはインセンティブ次第。ごもっともな「理屈」だけで変化は起こせない。
物事は、常に予想しない事が起きる
これはナシーム・タレブ「ブラックスワン」(上・下)より。人間の「予想」なんてたかがしれている。
「想定しない問題が起きたときの対応」を事前にすることは大変難しい。事前に想定できていれば、それは「想定外」の出来事ではないから。でも、実際そういう事が起きる。
要はゲームに参加しないか、別のゲームをするか、どんな状態になっても対応できるようにリスクを設計するか、の3つの方法しかない。
結果を得るには、問題解決よりも問題そのものに注目すべし
問題解決のみの焦点を絞ると、どうしても対処療法に目がいきがちになる。
そうではなくて、「なぜそのような問題が起きているのか」、「その問題の何が問題なのか」という所に注目すると視点の違った新しい解答がでてくることもある。
引き算した後に、掛け算すべし
集中と選択。コミットメントの対象を絞り込んで、それらの力が複合的に働くようにすれば「レバレッジ」が生まれる。
情報の生態を考える
インプットだけの情報は何一つ「生かされていない」。
情報をどこから仕入れて、どこに流すのか。情報の棲み分けや食物連鎖について考えてみること。どこかで流れが滞っていないだろうか。
さいごに
今回は元ネタがあってのアレンジでした。こうして考えてみると改めて自分の物の考え方というのが見えてきます。書き出していく中で、他にもいくつか自分なりのマインドセットが発見できたのですが、それはまた別の機会に。
皆さんは自分なりのマインドセットをお持ちでしょうか。それはどのようなものでしょうか。
▼こんな一冊も:
マインドセット ものを考える力 |
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ジョン・ネスビッツ 本田 直之
ダイヤモンド社 2008-05-16 おすすめ平均 |
マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選2 失敗の技術 人生が思惑通りにいかない理由 (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選) |
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マルコム・グラッドウェル 勝間 和代
講談社 2010-08-06 おすすめ平均 |
スイッチ! |
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チップ・ハース ダン・ハース 千葉敏生
早川書房 2010-08-06 おすすめ平均 |
ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質 |
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ナシーム・ニコラス・タレブ 望月 衛
ダイヤモンド社 2009-06-19 おすすめ平均 |
ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質 |
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ナシーム・ニコラス・タレブ 望月 衛
ダイヤモンド社 2009-06-19 おすすめ平均 |