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書評 「ライフハック心理学」(佐々木正悟)

ライフハック心理学 ―心の力で快適に仕事を効率化する方法
ライフハック心理学 ―心の力で快適に仕事を効率化する方法 佐々木 正悟

東洋経済新報社 2010-10-29
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佐々木正悟氏の新著である。メインのタイトルは、ご自身が主催のブログのタイトルと同じ。いかにも堅そうなタイトルだが、表紙をみるとふじたきりんさんによるかわいらしいアイコンがのせられている。この奇妙なバランスが堅さと柔らかさを印象づける。実際、本の内容も「堅さ」と「柔らかさ」がうまく配置されている。

読み始めて最初に驚いたのが文体だ。私の本棚にある佐々木氏の著書はすべて「ですます調」(敬体という)で書かれているので、思い切り先入観を持って読み始めたのだが、「である」調(常態)で書かれていた。いかにも堅めの文体だ。しかしながら、内容が堅いかというとそうでもない。佐々木氏の個人的なエピソードや感想などが心理学のエッセンスの周りに配置されている。そういう面では非常に読みやすい本だと思う。所々に佐々木さん特有の言い回しがでてきて、日頃ブログを拝見させていただいている一読者としてはニヤニヤと読むことができた。

サブタイトルは「心の力で快適に仕事を効率化する方法」。

これだけみると、いかにもうさんくさい。しかしながら、私たちの行動や判断を考える上で「心の力」「無意識の影響」というのは決してバカにすることはできない存在だ。行動経済学が示す人間の性質というのは、「合理的に動いているかもしれないが、決して理性的ではない」というものだ。「合理的」「理性的」という言葉をどのように定義するかにもよるが、要するに自分の意識していることだけで、自分の行動を100%制御できるわけではない、ということだ。このあたりは行動経済学の関連書籍や「スイッチ!」という本を参考していただければよいだろう。

そもそもライフハックとは?

さて、「ライフハック」とはなんだろうか。佐々木氏は前書きの中で次のように書いている。

「ライフハックとは、ちょっとした工夫を仕事や生活に施すことで、面倒だったことが急に楽にできたり、やりたくなかったことが面白そうに見えてくる。そういう工夫のことです」と。

未だに正確な定義のないライフハックだが、これもまた一つの定義として有効だろう。ポイントは「ちょっとした工夫」というところだ。大がかりな工夫ではライフハックとはいえない。重ねて佐々木氏の言葉を借りれば「ちょっとだけ行動を改善する習慣がライフハック」となる。

皆さんが「ライフハック」にどのようなイメージを持っているのかはわからないが、あくまで小さい階段を一歩一歩上っていくようなものがライフハックであると私は考えている。

「ライフハック」にはおそらく二つのアプローチがある。一つは機械的なアプローチ。これはギークとかハッカーと呼ばれる人々がパソコンでよく使う手法だ。もう一つが心理学的なアプローチ。人間の行動をどのように変えるのか。精神的な余裕をいかに持つのか。そういうことを心理学を用いて考える手法だ。

私自身どちらが正しいとは考えない。要するにライフハッカー一人一人に「それぞれのライフハックアプローチ」がある、と考えている。そして佐々木氏は後者のアプローチで「ちょっとだけ行動を改善」し続けてきているのだろう。そしてそれらのエッセンスがこの本の中に詰まっている。

内容

本書は6つの章立てになっている。

第1章 無意識の力で仕事に集中する
第2章 無意識の底からアイディアを発掘する
第3章 無意識の力で人に好かれる
第4章 心の力で危機を乗り切る
第5章 心の力で悪癖を克服する
第6章 心の力で打たれ強くなる

前半3つが「無意識」、後半が「心の力」をテーマに扱っている。

今回は簡単に第一章を紹介してみる。

無意識の力で仕事に集中する

最初に要点だけ書くと無意識の力で仕事に集中するためには、「ほどよい緊張感」を持って仕事にあたれ、ということらしい。

確かに自分自身の体験を振り返ってみても、緊張しすぎない程度の緊張感を持って仕事に当たれているときは、おどろくほどスムーズに仕事ができていると思う。この辺は山下富美代さんの「集中力」という本を思い出す。その名の通り「集中力」のメカニズムとその発揮のさせ方について書かれた本である。その本でも心的状況やまわりの環境によって人間の能力が影響を受けることが指摘されている。

さて、「ほどよい緊張感」を持って仕事にあたればよいとすれば、次に出てくるのは「どうすればほどよい緊張感をもって仕事に当たれるのか」という疑問だ。これが解決できなければ何の意味もない。

そもそも、振り返ってみて今自分は仕事に対して「ほどよい緊張感」を持てているのか、から自問する必要がある。もしYesならばこの先は行き止まり。Noならばいろいろ考えてみる必要があるだろう。

佐々木氏は一つの提案として

「自分にふさわしい仕事術をひとつマスターすること」

と書かれている。さて、「自分にふさわしい」とはどのような仕事術だろうか。これは逆説的ではあるが「自分の緊張感を適切なレベルに調整してくれるもの」という事になる。

つまりタスクがきれいに一覧できたり、簡単に追記できたり、すばらしいリマインダ機能がついていたり、誰かに自慢できたり、といった事ではなく、その仕事術を使いこなすことで「緊張感」がどのようにコントロールされているか、という事に注目する必要がある、ということだ。

たとえば、GTDという仕事術にはストレスフリーとか安心感という言葉が必ずセットになって語られる。一ついえることは、「ストレスフリー」という感覚は一度以上ストレスを感じていないと、理解することができない。言い換えれば「すっきり」するためには一度ため込んだ状態を体験しておかないといけない。

GTDではとりあえずinboxにありとあらゆるものを入れ(ため込んだ状態)、その後に一気にそれを整理していく(すっきり)。このように緊張感がコントロールされていると人はテンションを維持しやすい、ということだろう。

当然のようにストレスばかりの環境は苦しい。しかし、ストレスと無関係(ストレスレス)で生きていこうと思えば、「何をやってもよい」あるいは「何もしなくてよい」という環境に身を置くしかない。そういう環境を見つけるのはなかなか難しいだろう。

結局のところ、現代社会で生きる私たちはストレスとのつきあい方を考えるしかない。そして適切にストレスをコントロールできれば、つまりほどよい緊張感を持つことができれば、自分自身のパフォーマンスを発揮できるようになる、というわけだ。

さいごに

書きたいことはまだまだあるのだが、あまり書きすぎるとこれから読む人の楽しみを削りかねないので自重しておく。ただ興味深い内容がいくつかあったので、またブログの記事として取り上げるかもしれない。

それと、本書には「とあるブロガーさん」が引用されている。このお二人の向いている方向性は近いと思うので、将来は共著なども期待できるかもしれない、なんて考えている次第である。

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