7-本の紹介

書評 「俺の考え」(本田宗一郎)

以前「ほぼ日」で糸井さんが読んだという話題を聞いて以来、「なんだか、すごいタイトルだなぁ」と印象に残っていた一冊。本屋で発見してついふらふらと購入した。

少しの期待を持って読み始めた本だが、予想を上回る面白さであった。

俺の考え (新潮文庫)
俺の考え (新潮文庫) 本田 宗一郎

新潮社 1996-04
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おすすめ平均 star
star面白いオヤジ
star本田さんのエッセイをまとめたものです
star新鮮な驚きがたくさん詰まった一冊

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本田宗一郎のことば

著者の本田宗一郎氏は、改めて説明するまでもないが「ホンダ」の創業者である。ビジネスパーソンで知らない人はいないだろう。なんて考えていたら、以前二十代半ばのスーツ姿の男性(先輩風)が「松下幸之助」についてもう一人の男性(後輩風)について丁寧に説明しているシーンを見かけたことがある。案外「本田宗一郎」という名前もそれほど「常識」ではないのかもしれない。

その「松下幸之助」氏の言葉はゆっくりと諭すような、ふんわりと包みこむような雰囲気がある。それに対して本田氏の言葉は、痛烈だ。攻撃的でもあり、「オブラートに包む」という選択肢も特に無いようだ。しかしながら、あるいはそれが故にその言葉が持つ力はは力強い。厳しいジャングルの中で生き残ってきた野生動物が持つギラギラとした牙を彷彿とさせる。

例えば次のような言葉がそれだ。

戦後天皇絶対から主権在民になった。主権在民になれば、それにふさわしい経営をしなければならん。今までの経験は全然役に立たないのだ。

まるでドラッカーのようにはっきりと言い切る姿勢とその言葉は、現代から振り返ってみても示唆に富むものが多い。

果たして、どれぐらいの日本企業が「主権在民」にふさわしい経営を行えているだろうか。

「国の庇護」「業界の庇護」の中でしか、存続できない企業ははたして主権在民にふさわしい企業なのだろうか。

そのような疑問はさらなる問題定義を引き出す。それは、「個人」の生き方への波及だ。

現代の生き方

社会における「企業」の占める位置づけが小さくなる中で、「個人」自身が自分の人生をマネジメントしていく必要が出てくる。であれば、主権在民に「ふさわしい生き方」というものもあるのかもしれない。

現代でもそういったことが徐々に意識されてきている。「会社に人生を預けない生き方」というのもそういったものだろうし、「ネットに履歴書を作る」生き方も同様だ。

先程引いた言葉の続きを引いておく。

日本人がはじめて受けた、百八十度転換したイデオロギーの中でわれわれは仕事をしなければならん。ということは、だれも経験者はいないということである。

このイデオロギーの転換は、戦前と戦後という敗戦によって導かれた転換だ。これによって社会(国)と企業の間にある関係性の変化が起きた。

これと同じことが、今組織(企業)と個人の中で起きているという気がする。

そういう世界に生きる私たちにとって、戦後新しいイデオロギーの中で技術から事業を創りだしてきた本田宗一郎の後ろ姿には学ぶべきことが多い。

組織に必要な事

本書から感じられるのは「確信」と「謙虚さ」という一見相反する二つの要素だ。

本田氏が持っていた「確信」はおそらく次のようなものだろう。

  • 企業は良い製品を作ることで社会に貢献すべし
  • 良い製品を作るには高い技術力が必要だ
  • その高い技術とアイデアを支えるのは社員である

だからこそ、「技術」にこだわり、「人間」の扱いにもこだわる。そうした哲学がホンダの成長を産み出してきたのだろう。誰もそれを否定することができないくらい、ホンダは大きく成長した。しかし、自分を必要以上には決して大きく見せない。自分が万能であるとは決して考えない。

自分は技術研究所の所長で、本当の社長は藤沢武夫だ、という言葉からもそれを感じることができる。自分のことを有能と考え、周りの人間に信を置かない人が社長になり会社を切り盛りするところは、一時的には大きな成長をするかもしれないが、それだけだ。そこには「継続性」というものが無い。

「組織」というものの存在意義があるとすれば、それは「人が集まることで個人の弱みを消しながら、長所を発揮させる場を作る事」だろう。そして「ひとりの人間の意志を次の世代に残していく事」もある。この二つがあるからこそ「継続性」が生まれてくる。

これは「企業」だけではなく、ありとあらゆる「組織」に対して言えることではないだろうか。

さいごに

本当は引用したい文章がたくさんあるのだが、できるだけ自重して本書を紹介した。そのあたりはまた別エントリーでじっくりことこと煮こんでいく予定である。それがまちきれない方はぜひ直接本書を一読されるとよいだろう。ドラッカーの本に違和感を覚えないならば、驚くほどスムーズに読めるはずである。逆に「自分は利益がでれば後はなんだっていい」と考えている方は時間の無駄なのでこの本はスルーされた方がよい。

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