7-本の紹介

書評 「もっとも美しい数学 ゲーム理論」(トム・ジーグフリード)

私はあまり文庫本の後ろについている「解説」を読まない。理由の一つとして「別の人の文章を読むためにその本を買ったわけではない」と考えているからだし、もうひとつはそこに書かれている文章が「頼まれたからとりあえず書いておいた」というレベルの文章が見受けられるから、である。要するに「時間の無駄」と考えているわけだ。

もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)
もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫) トム ジーグフリード Tom Siegfried

文藝春秋 2010-09-03
売り上げランキング : 2741

Amazonで詳しく見る by G-Tools

しかしながら、本書の「解説」はしっかりと読んだ。というよりも「解説」を読むためだけに買った、といっても過言ではない。解説を書いているのは@finalvent氏。「極東ブログ」を運営されている方だ。私はこのブログを愛読させていただいているので、Twitterで「解説を書いた」という話を聞けば本を買わずにはいられない。あぁ、すばらしきかなソーシャル・マーケティング、である。

というわけで、「解説」に釣られて買った本だが、非常に面白い本であった。「ゲーム理論」というと戦略に関する理論という風に捉えられがちで、実際ビジネスパーソン界隈ではそのような扱いをうけている。

私自身も、「行動経済学」の関連でなんとなく読んだことがある程度で、実際にそれがどのような「可能性」を持っているかについてはほとんど知らなかった。本書はさまざまな学問の領域でその「可能性」について検討する本である。

以下は解説よりの引用。

ではこの本は何かというと、ゲーム理論がどのように森羅万象を解き明かす究極理論となるか、その可能性を知的に探求するルポタージュである。

@finalvent氏が解説内でも指摘しているように、本書からはSFのニオイがプンプンと漂ってくる。それはある人にとっては嫌悪感を呼び起こすだろうし、またある人にとっては非常にワクワクしてくるあのニオイだ。

「SF」を非現実的だと考えるのか、それとも未だ現実になっていない_つまり未現実だと考えるのか、がその嗅覚の境目だろう。

「ゲーム理論」誕生の歴史を追いかけながら、生物学、脳神経学、人類学、社会物理学、ネットワーク、量子力学、とゲーム理論の応用領域を探り続けていく。

正直なところ、この本を魅力を伝えるのは私の手に余る行為である。それは「解説」をじっくり読んでもらえばよいだろう。

ゲーム理論から学べること

この本から学べることを何か上げるとすれば、それは「ゲーム理論」の本質と可能性だ。

第四章の中で以下のような文章がある。

自分が生き残れるかどうかが他者の行動にかかってくるとき、その生命体は、否も応もなくゲームに参加していることになる。

こういう意味合いにおいて、私たちは人生というゲームに参加している。そしてそのゲームの中にもさまざまな「ミニゲーム」が存在している。私はよく「ゲームのように楽しむ」なんていう表現を使うが、正確なところは「ゲームから逃れることはできない」という事なのかもしれない。どうであれ、重要なのは戦略だ。

ゲーム理論が提示する戦略は絶対的な一つの方法を占める単純戦略ではない。ゲームの内容は複雑であれば、複合戦略が必要になってくる。複合戦略とはどういう戦略をどんなバランスで組み合わせるかというある種の戦略ポートフォリオだ。

この戦略の組み合わせは環境の変化によって変わってくる。

本書から「ゲーム理論」がもたらす教訓を引き出せば、

・唯一絶対的な戦略に頼りすぎるのは危険
・戦略に多様性を持たせることが必要
・変化に対応するために状況を観察する必要がある
・自分が望むものと自分の実力(とりうる戦略)について知っておく必要がある

となる。

しかし、こういう「教訓」は置いておいて、「ゲーム理論」が持つ可能性について酔いしれてみるのがこの本の楽しみ方だと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です