7-本の紹介

書評 「梅棹忠夫 語る」(聞き手 小山修三)

「梅棹忠夫」という名前を聞いて、どのような著作を思い浮かべるだろうか。「文明の生態史観」「情報の文明学」あるいは「東南アジア紀行」かもしれない。私は「知的生産の技術」が真っ先に思い浮かぶ。

もちろん、これらの著作だけが梅棹氏の活動の全てではない。氏の活動の広さは本書の巻末に添えられている「梅棹忠夫略年譜」を見ればすぐにわかる。こういう一つのカテゴリに収まりきらない人、今までなかった活動をしてきた人というのに、私は強いあこがれを感じる。

梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ)
梅棹忠夫 語る (日経プレミアシリーズ) 小山 修三

日本経済新聞出版社 2010-09-16
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そういった人が持つ思想や言葉は誰かの借り物ではない。自分の内側から自然に出てきているものだ。だから、ぶれない。

今や「思想」や「言葉」などコピペで簡単に手に入る。そして、コピペされた思想や言葉でやりとりされる議論にはほとんど意味がない、とすら思うときがある。

本書の中で梅棹氏は次のように語っておられる。

とにかく、文章で一番大事なことは、わかるということ。自分もわからないくせに、その言葉を使う。それはかざってるからや。

これはきわめて重要な指摘だと思う。自分なりにわかる言葉を使って、わかっていることを書く。逆にわからないことは素直にわからないと書く。それで十分だ。どれだけ「自分が納得のいく文章を書くこと」ができるか、それこそが一番気にしなければいけないことだろう。

「わかっている言葉」同士で交わされる議論には意味があると思う。しかしながら・・・はまあやめておこう。

引用集

梅棹氏の言葉は至ってシンプルだ。そしてごく当たり前の真理を語る。

メモでもノートでも、あとから自分が見てわかるように書かなあかんわな。

これは当たり前のことだ。しかしながら、この言葉からは「情報はあとから見返すもの」という態度が感じられる。後から使うからこその「情報」である。それが意識されていれば、必然的にメモやノートの使い方も決まってくるだろう。

これ以外にも本書には、知的生産の技術に関する示唆が多く含まれている。いくつか引用しておこう。

技術としては必要があって開発される面もある。

情報とは中身の話や。ところがみんな、やっぱり形式の話で、それはさっきの、インテリ病のひとつやな。

「分類するな、配列せよ」

「コンピュータは、要するにノートと鉛筆だ」

「思いつきこそ独創や。思いつきがないものは、要するに本の引用。ひとのまねということやないか」

「大事なのは、論理的整合性と同時に着想ということです。

どうだろうか。何か「ピピッ!」とくる言葉はあっただろうか。

このような梅棹忠夫の知的生産の心構えと、彼の歩みが平行して語られているのが本書の特徴だ。もう一点付け加えれば、彼自身の言葉で語られているのも特徴と呼べるだろう。

さいごに

こういうのは藪蛇かもしれないが、「梅棹忠夫」に学ぶとすれば、

  • 自分自身の目で「観察」する
  • 自らの着想を大切にする
  • 合理的発想を持つ
  • 自分を相対化する

という事になるだろう。もちろんこんな4行で納得していたのではまったくもって意味がないのはあえて説明するまでもない。

今では梅棹氏と直接語ることはもうできない。しかし、幸いなことに彼の言葉と思考の轍に触れることはできる。まずはそれを自分の目で観察することから始めてみてはいかがだろうか。もちろん、そのときに感じた着想はしっかりと記録しておく事をおすすめする。

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