ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法 |
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デビッド・アレン 田口 元
二見書房 2010-11-26 |
「ストレスフリーの仕事術」「ストレスフリーの整理術」に続く第三弾。監訳も同じく百式管理人である田口元さん。
第一弾の「ストレスフリーの仕事術」はウェブサイトに記載されていた文章をまとめ直したもので、エッセイ風の仕上がりでした。対して「ストレスフリーの整理術」はGTDという大きな一つの枠組みを提示したもので、かなり「ガッツリ」系の内容になっていました。若干わかりにくいという評判も聞きましたが、あの一冊を読めば「GTD」について大まかな理解をすることができるはずです。
ただし、「ストレスフリーの整理術」には足りていない部分があります。まず各フローの具体的な意味合いについての説明。手順についての説明はありましたが、それが何を意味するのか、についてはまではフォローされていませんでした。本書では今まで使われていた用語をよりわかりやすいものに変え、フローの意味することを詳しく解説してあります。
もう一つが「垂直的視線」の話。この縦方向の話がないと「GTDでボトムアップすぎて・・・」という評価になってしまいます。このあたりも「〜の整理術」ですこし触れられてはいましたが、水平と垂直の統合という部分に関しては掘り下げ具合が弱かったように思います。本書ではそのあたりもかなり詳しく説明されてあります。
今回の第三弾は「実践編」と銘打っていますが、むしろ「GTDについての理解」をより深めていくための一冊だと思います。
大まかな内容
サブタイトルは「人生というゲームと人生というビジネスに勝利する方法」。
章立ては以下の通り。
第1章 イントロダクション GTDの新しいレベルへ
第2章 GTD現象
第3章 すべてを機能させる
第4章 自己管理の基礎
第5章 状況のコントロール 収集
第6章 状況のコントロール 見極め
第7章 状況のコントロール 整理
第8章 状況のコントロール 見直し
第9章 状況のコントロール 取り組み/行動
第10章 状況のコントロール 人生と仕事に活用していく方法
第11章 将来への見通し
第12章 将来への見通し 次にとるべき行動
第13章 将来への見通し プロジェクト
第14章 将来への見通し 注意を向けるべき分野や責任を負っている分野
第15章 将来への見通し 目標とゴール
第16章 将来への見通し 構想
第17章 将来への見通し 目的/価値観
第18章 将来への見通し グレイシーズガーテン再訪問
第19章 GTDを総合的に活用する 実践編
第20章 最後に
章立てを見てもらえばわかりますが、「状況のコントロール」と「将来の見通し」という二つの大きなカテゴリーが中心的なテーマになっています。。そしてこの二つこそがGTDの肝といってもよいでしょう。
GTDが目指すところは「集中して物事にあたること」です。完璧な整理システムを作ることでもないし、一日24時間をフル活用することでもありません。GTDがやっていることは、ある意味では「集中力マネジメント」と呼べるかもしれません。
人は「これは自分のやるべき事だ」とはっきり認識していれば、自然と集中できます。もし集中できないのなら、他に気にかかる何かがあるか、あるいは「これって本当に自分がやるべき事なんだろうか」という疑問を持っているか、そのどちらかでしょう。
GTDを構成する要素は、「集中して物事に当たるための準備」として捉えることができると思います。そう考えるとちょっと違って視点からGTDを見つめることができるかもしれません。
新しい時代の技術とツール
あまりにもこの本から得られた示唆が多すぎるので、一回の書評で書ききることはできません。このあたりはメールマガジンの連載か、ブログなどで少しずつ消化していきたいと思います。
本書を読む中で、GTDとEvernote、そしてドラッカーのマネジメント、これらがある種同一の方向性を示しているという弱めの確信(あるいは強めの気づき)を得ました。これからの社会で要求されるものは、いままでの社会とは違ったものになっていくでしょう。
そして違った社会の要求に応えるためには、違ったアプローチが必要になってきます。それがGTDの「考え方」であり、Evernoteが提供するものであり、マネジメントの手法である、と強く感じます。
さいごに
本書は前著で足りなかった部分を補い、さらに深めることが意図されているようです。
というわけで、本書を読む前に未読の方は「ストレスフリーの整理術」を読まれた方がよいと思います。そして少し自分なりにGTD形を作ってみてもよいでしょう。その上で読み始めれば、本書はぐっと理解しやすくなると思います。
最後に一節だけ引用しておきます。
本書は、あなたがやらなければならないことのために何をやらなければならないかが曖昧なときに、それを見極めるようにするための指南書である。
意味の取りにくい文章ですが、言わんとすることは伝わってきます。こういうアプローチを持っているかどうかで、人生の「バランス感覚」というのは大きく変わってくるのではないでしょうか。
▼こんな一冊も:
ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則 |
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デビッド アレン 田口 元
二見書房 2006-05-18 |
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 |
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デビッド・アレン 田口 元
二見書房 2008-12-24 |
EVERNOTE「超」仕事術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2010-08-18 |
マネジメント – 基本と原則 [エッセンシャル版] |
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P・F. ドラッカー 上田 惇生
ダイヤモンド社 2001-12-14 |
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