6-エッセイ

宇多田ヒカルライブUstreamの感想 あるいは代用がきかない何か

昨日は、原稿を執筆ながら宇多田ヒカルさんのライブをUstreamで見ていました。
メインチャンネルとサブを合わせて9万人を超えるビューアーがいたというので驚きです。回線は比較的安定していましたし、画質や音質もたいしたものでした。
Twitterを眺めていても、その技術力の高さに感心している人が多く見られました。その辺には疎い私ですが、きっとすごいことなんだろうなと思います。

「当たり前」の技術

でも、その反面でたぶん「当たり前」にこのUstreamを見ていた人は多かったのではないかとも思います。ニコニコ動画を見ているような感覚で。

おそらく今後似たような試みが増えていけば、ますますそれらが「当たり前」になっていくのだと思います。それは別に悪い事ではありません。技術というのは、日常生活者の中で「当たり前」になって初めて実用性を得たと言えます。

例えば、私たちは日常的にテレビのリモコンを使っていますが、「おぉ!スイッチ回さなくてもチャンネルが変わる」みたいに驚くことはありません。ごく「当たり前」にリモコンを使いこなしています。技術というのは当たり前に使われるようになって、初めて意味があるのだと思います。

当たり前にさまざまなコンテンツがUstreamが見られる社会になったとき、一体どのような変化が訪れるのか、今から楽しみではあります。

ボーダーを越える

さて、ライブの内容ですが。実際どんなライブだったのかは「宇多田ヒカル WILD LIFE@横浜アリーナ」(音楽にまつわるヨタ話)のエントリーなんかをご覧いただければよいかなと思います。

私が感じたのは、これが彼女なりのボーダーの越え方なんだな、という事。

指摘するのも蛇足すぎますが、ジョン・レノンが無くなったこの日に行われたライブには宇多田さんの想いが込められていたのでしょう。

ライブ中の「地球を意識していきましょう」という言葉には、はっとさせられるものがありました。

ライブ会場にいる人、映画館で見た人、そしてネットに接続してそれを見ている人。これらの人々が「同じ体験をすること」。もちろん、それは実際的な意味において「同じ」と言えるものではありません。しかし、ライブを見て楽しい、面白い、うれしい、感動するというその心を動きをシェアできる環境を作る事には、「結局の所、人ってみんな同じなんだよね」というごく当たり前の事を再確認させてくれる効果があるような気がします。

マーケティング的にみると

さて、話は変わって非常に実務的な話ですが、例えばマーケティング的に考えた場合、このライブの意味ってどんな感じなんだろうな、というのもちょっと気になるところです。

普通に考えられるのは「フリーミアム」。要するにサンプル的にライブを見せておいて、「実際のライブいきて〜な」と考えてもらうこと。これはわかりやすいですね。昨日のエントリーでも書きましたが、「体験」への需要は高まっていますし、しかも言語化するのが難しいという制約もあります。おそらく昨日のライブの映像を見た人は、ライブの良さを宇多田さんの歌だけではなく、ライブで盛り上がっている人からも感じられることができたと思います。そういう意味で「ライブ体験」の無い人にそれを伝える効果はあると思います。

もう一つが「プレミアム効果」。ファンではない人がごく無料で見られるという状況があれば、ファンは「わざわざお金を払って、現地まで行く」行為により満足感を覚えることになると思います。そういうのは馬鹿馬鹿しいと考えられる方もおられるかもしれませんが、ファン心理というのはそういう「わざわざ感」に価値を見いだすものです。

総じてUstreamでライブを流す事は、相対的に価値を上げるものではないかと思います。この辺はセミナーなんかにも通じるものがあると思います。結局の所ライブの売り物は「その時提供されている楽曲+ライブ感」であり、しかもその比重は「ライブ感」の方が大きいのではないでしょうか。
※私はあまりライブには足を運ばないので断言はできませんが。

電子書籍が出てきたことにより、相対的に紙の本の良さが再確認された事と同じように、ライブがUstreamで流されることにより、ライブの良さというものが再確認される、という事もあるかもしれません。

さいごに

たぶん特殊なものを除いて、これからはUstreamでライブを流したら損する、という考え方ではなく、Ustreamでライブを流さないなんて損、みたいな方向に流れていくと思います。そういう流れは否定しても意味があるわけではなく、逆にその技術をいかに効果を上げるために使うのかを考えた方がいかにも建設的です。

最近ではテレビメディアがネットを活用してきている事例を見かけますが、要するにネットとそこに連なる技術は、新しい可能性を生み出すものではあっても、古いものを根本的に駆逐する存在ではありません。もちろん変化に対応できないものは脱落していくでしょうが、もともと存在する「もの」の価値をより広く・早く・多く伝えていくように使えば、共存・補完が可能なものだと思います。一番重要なのはその「もの」が持っている本来的な価値とは何なのか、を見つけることでしょう。他のなにものにも代え難い、本質的な価値を。

▼その他記事:
今夜1万人熱唱 ジョン・レノン射殺30年ライブ オノ・ヨーコさん、奥田民生さんら 未公開写真も(産経新聞)

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