3-叛逆の仕事術

来年の目標・・・その前に

15日にもなると12月ですらあと半分。否が応でも「年末」を意識せざる得ません。そしてその先の「来年」も。

すでに多くの方が来年の手帳を手に入れていることでしょう。そしてその新しいパートナーを携えてワクワクしながら「来年の目標」について考えておられるかもしれません。年末に来年の目標を立てたり、あるいはその初日に新しい一年の計画を立てる、という事を想定されているかもしれません。

目標のその前に

実際、これらの「目標」は多少でも自らを向上させていこう意志を持っている人にとっては必要なものです。かのドラッカーも『プロフェッショナルの条件』で次のように書いています。

コンサルティング、執筆、授業のそれぞれについて、次の一年間の優先順位を決める。もちろん、毎年八月につくる計画どおりに一年を過ごせたことは一度もない。だがこの計画によって、私はいつも失敗し、今後も失敗するであろうが、どにかくヴェルディの言った完全を求めて努力するという決心に沿って、生きざるえなくなっている。

計画通りに行く事はなくても、自分の出来ることを少しでも向上させていこうという意志を確認すること、それはとても大切な事だと思います。

でも、「目標」や「計画」を立てる前にすべきことがあります。それは「振り返り」です。

「振り返り」があるから「新しい計画」が立てられる

箱から出したばかりのような新しいMacBook Airを手にした時の気持ちを持って新年に臨めることは確かに心躍ることです。でも、そういうウキウキ感だけで目標を立ててしまうと、案外「古くさい」目標を立てがちです。その「古くささ」とは去年の目標とほとんど変わらない、という意味での古さです。つまりアップデートされていない目標という事です。

ドラッカーは同じ本で成長と自己改革を続けるための手法の一つとして次の方法を紹介しています。

第五に、きわめて多くの成功してきた人たちが、十六世紀のイエズス会やカルヴァン派が開発した手法、つまり行動や意志決定がもたらすべきものについての期待を、あらかじめ記録し、後日、実際の結果と比較してきている。

つまり、目標を単に立てるだけでなくそれを記録する事。そしてそれを実際の結果を比較すること、この二つが成長を続けていくために役立つということです。

多くの人はたいてい目標を立てたものの、それっきりにしたままです。そしてそれと似たような「新しい目標」というのを立てる。これではいつまで経っても循環です。

しかしながら、目標を見返すというのは苦痛な作業だと思います。あのドラッカーですら「いつも失敗」しているわけですから、凡庸な私たちだって失敗の連続でしょう。そんなものを振り返ってわざわざ落ち込むような事を新年にしたくはない、そういう気持ちが出てくるのは当然です。

そしてそれが「当然」であるが故に、意識的に行う必要があります。

「意識的」とは?

例えば、こういう手法の事を

「あぁPDACサイクルだろ」

と理解したとしたら、もうそれで終わりです。

もちろんもともと出来ている人はそれで問題ありません。しかし「PDACサイクル」という存在を知りながらも適切な振り返りが出来ていない人は、おそらく年末になっても「その年の目標の振り返り」などは行わないでしょう。心理的な気持ちではそれは「不快」な要素で、「何となく」の気持ちでは人間は行わない類の行為です。

ワークフレームとして「PDACサイクル」という言葉を知っている事は、「何にそれを適用することができるか」という知識を持っている事とイコールです。しかし、それは「何にそれを適用するのか」という行動とイコールではありません。この二つの間には単に差というよりもブラックスワンとも呼べる認識の相違が存在しているように思います。

人は強い必要性を感じない限りは、「不快」な行為に近づこうとはしません。近づかないというのは、「実際に行動しない」というだけではなく「見ない」「聞こえない」という認識の拒否でもあります。

例えばある種の「面倒さ」を含む行為は、徐々にそれをやろうと思う発想すら出てこなくなります。「あぁ〜面倒だな」と思えている内はまだ回復可能で、時間が経つとそういう行動を行おうという考えすら意識に上ることを棄却されるようになります。つまり「忘れる」わけです。

基本、やらない

この振り返りという作業も面倒だし落ち込みそう、といった負の要素が強いものです。だからまったくやったことが無ければ、「やろう」と思って意識的に行動するか、あるいはどこかの時点で意識に上るように仕組みを作っておかないとまずやりません。

例えば、私がここで年末のレビューの良さをいかに力説してもたいていの方は実際にやることはないでしょう。心の中で「うん、これはよいやってみよう」と思ったとしてもきっとやらない人の方が多いと思います。でもって、それはすごく自然な事です。人間の行動は「うん、これはよいやってみよう」というだけでは変わりません。知識を得たとしても行動はなかなか変わらないのです。特にその行動が面倒さを含む場合は顕著です。

「今年一年を振り返ってみてBlogで得たライフハック・仕事術の知識をどれだけ活かせたか振り返ってみよう」なんていうのもすごく効果がありそうです。でも絶対にやりませんよね。私だってあんまりやりたくないです。仕組みがなければまずやらないでしょう。

目標を振り返る事の有意義さ

ということを書いておいてから書きますが、年末にその年の目標を振り返る事はとても有意義です。かなり面倒でへこむ要素もたっぷりあると思いますが、これをやることで初めて目標が目標としての意味を持ちます。

まず、かなり少ないかもしれませんが目標を立てて自分が実行できた事が確認できます。全て出来なくても50%ぐらいはできた、という事も確認できます。これが確認できたら、それは自分の「強み」の発見でもあります。目標をいくつか立ててみるとよりはっきりしますが、自分がこうやろうと思って実現できることというのはそんなに数多くはありません。でもってそれは大半の人が同じ状況です。だから「目標を立てて実際に出来ていること」というのは自分の基盤になる可能性を秘めています。

第二に、できないことでやるべきでない事がわかります。年のはじめはメラメラと意欲に燃えていたことも、一年経ってみて「それほどじゃなかった」と思えることがあります。一夏の恋と同じです。そういう行為は次の年の目標にする必要はないでしょう。しかしながら、振り返りを行っていないと、何かしらの本・ブログなどを読んでまたメラメラと気持ちが燃え上がる事がでてきます。一夏の恋と同じです。そういう危ういループから抜け出せるというのが二つ目の有意義さです。

  • 出来たことは出来たと確認したうえで、少しハードルを上げられる
  • 出来なかったことは今からでもそれをやりたいのか確認してその道を棄却できる

あとおまけとして、「目標を立てていなかったのに実現出来たこと」というものの存在も明らかになります。

これらは目標を振り返ってみないと実現出来ないことです。この「実現出来ないことです」というのも、実際にやってみないと実感できないかもしれません。人は目標を立てただけでは本当に忘れてしまうものなのです。それはもう「潔い」という形容詞が当てはまるぐらい忘れてしまいます。

カレンダーに書き留める

かなり回りくどい内容になりました。まとめてみれば、すっきりしたものです。

  • 目標を書き留める
  • あとでそれを振り返る
  • 新しい目標を立てる

ただ、これだけ。でもこの「知識」だけでは何も変わりません。もし、このエントリーを読んで「そういえば今年の目標を手帳に書いておいたな、あとで振り返って来年の目標を立ててみるか」と思った方がおられるならば、一番最初にすべきは「年次レビューをする」というタスクをリストに書き込むことです。

あるいは年末のどこかの時点のカレンダーに「年次レビュー」という項目を書き込む事です。年末のスケジュールが未だに未定ならば、今週の週末のカレンダーに「年次レビューのスケジュールを決める」という項目を書きましょう。もしその週末になっても「年次レビューのスケジュールを決める」というタスクが消化できなかったら、次の週の週末カレンダーに「年次レビューのスケジュールを決める」と再び書き込みましょう。

それでもまだそれが実行できないのならば、きっと「それほどやる必要はないかな」と心の奥底の方で感じておられるのだと思います。だったら別にやらなくてもよいでしょう。少なくともカレンダーやタスクリストに書いておけば、「あれほど書いておいたのに結局やらなかった。ということは俺は別に真剣にはやろうとは思っていなかったんだな」と振り返る事ができます。これが書き留めて振り返ることのわかりやすい事例です。

▼こんな一冊も:

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