「タスク」の研究

「タスクを細分化する」

タスクを細分化する、というのはどこから始まった流れだろうか。

ライフハック心理学の「タスクを小分けにして書き出すことは正しいことでも、それをしたくなくなる心理」の記事を読んでいて、ふと気になった。

仕事術といえば、真っ先に思い浮かぶのが『だから、「仕事がうまくいく人」の習慣』である。効果的に仕事を進めていくための肝は、ほぼこの一冊に収められている。が、この本の中には「タスクを細分化せよ」という教えはない。

一番近いものを上げるとすれば「法則7 行動を起こすために明確なイメージを持つ」になるだろうか。

漠然としたものでは、十分とは言えない。はっきりとイメージすることが必要である。

タスクを細分化する事の意味

タスクを細分化することの意味合いはいくつかの側面から考えられる。

例えば、「タスクに対する印象を変える」。

これは面倒だ、やりたくないという気持ちがあったとしても細分化していけば一つ一つの作業は、さほど面倒そうではなくなる。だから取り組みやすくなる、というものだ。これは「見通しを付ける」にも通じる。作業を細かく分解していけば行くほど、それぞれの行程にかかる時間は計算しやすくなる。だから、これぐらいやれば終わり、というのがイメージしやすくなる。

両方に通じる事は、「取りかかるために必要なエネルギーを最小化する」という事だろう。物事を静止状態から移動状態にするにはかなりのエネルギーが必要になってくる。惰性が好きな人間の脳でも同様だ。だから抵抗値をできるだけ下げる、というのがこのアプローチの姿勢だ。
※逆にモチベーションを上げて対応するのは、押し出すエネルギー量そのものを上げるというアプローチになる。

細分化できないのは、なぜか

さて、ややこしいのはここからだ。

「タスクを細分化する作業」も一つの動作でありタスクである。つまり「取りかかるためのエネルギーを最小化する」行動を起こすためにもエネルギーが必要になってくる。しかもタスクを細分化する作業は何ら生産的ではない。

このように書くとたぶん反発の声が上がるだろう。
「タスクを細分化すれば、作業が進めやすくなるわけだから生産的と言えるのではないか」
こういう意見だ。これは至極ごもっともである。私もそう思う。

が、現実的にタスクを細分化する事を面倒がる人がいる。面倒がるということは「ある行為をやることによって得られるメリットに対して使うコストが大きい」と感じていると言える。この場合のコストは手間や時間だ。

だから「タスクを細分化する」というTipsを知っていても実行しない人は、それをする事に生産的なメリットを実感していない、という事だろう。

ややこしい話を、さらにややこしくするとこうなる。「タスクを細分化する」作業が進んでいないのならば、対応するのは

  • 「タスクを細分化する作業」を細分化する
  • 「タスクを細分化する作業」に対するモチベーションを上げる

この二つだ。前者は循環構造に陥る可能性を秘めている。後者であれば実際に細分化することで作業が進むことを体験してもらえばよい。が、そもそも行動を起こすためのモチベーションが不足して、実行されないからこそこのような事態に陥っているわけだ。

だとすれば、これは自力で脱出不可能な迷路なのかもしれない。

細分化についていえる二つの事

こういうややこしいところを通り抜けて、話をスッキリとしたところに戻す。

タスクの細分化によって作業を進めやすくする、という行為については二つの事が言えると思う。

一つは、まず最初は普通に作業を進めていって、何か手が付けられないタスクに遭遇した時に、始めて試した方がよい、という事。タスクの細分化はあくまで実行を補助するためのものだ。わざわざ細分化しなくてもできる作業まで細分化してしまえば、その行為によるメリットがぼやけてしまう。メリットがぼやけてしまえば、次に取りかかる時のモチベーションが下がる。これは是非とも避けたい。

ある程度、そのメリットを体感できたら先回りしてタスクを細分化する作業に着手できるだろう。とりあえずタスクを細分化することを目的にしてはいけない。

もう一つ言えることがあるとすれば、「細分化」は細かくすることが重要というわけではない、ということ。あくまで「イメージ可能な単位にまで落とし込む」というのが要点だ。これを意識しておくと無意味な細分化は避けられる。

人の心の中には「一連の作業」としてセッティングされているものがたくさんある。歯磨きでも車の運転でも、特に意識しないでできる複数の動作は数限りなくある。つまり「歯磨き」という動作がすでにイメージ可能な単位になっている、ということだ。

そしてイメージできるレベルということは、「やろうと思えばできる」レベルということだ。この二つは綿密に関係している。

例えば私はこのブログの更新を「Blogを更新する」というタスクだけでこなすことができる。というか、すでに習慣になっているのでタスクに登録する必要すらない。しかし、これからブログを始める人にとっては、「ネタを探す」「本文を書く」「タイトルを考える」「アップロードする」という風に細分化しないと取りかかれないかもしれない。

イメージできるレベル・ややろうと思えばできるレベルは、人によって違う。同じ人でも時間が経てば変化する。だから、「細分化の目安」というのはその人独自のものになる。だから「できるだけ細かく分解しましょう」というアドバイスよりは「自分で行動を具体的にイメージできるまで分解しましょう」のほうがより実際的なアドバイスになるだろう。

さいごに

今回はタスクの細分化について、若干回り道をして考えてみた。

生産性を補助する方法は、

  • 行動を起こすための抵抗値を減らす
  • 行動を起こすためのエネルギーを増やす

この二つのアプローチがある。

どちらが正しいわけではない。両方のアプローチをうまく使っていく事が必要なだけだ。

▼こんな一冊も:

だから、「仕事がうまくいく人」の習慣―その差は、整理力・デジタル力だったのか篇 (PHP文庫)
だから、「仕事がうまくいく人」の習慣―その差は、整理力・デジタル力だったのか篇 (PHP文庫) ケリー グリーソン Kerry Gleeson

PHP研究所 2003-06
売り上げランキング : 597788

Amazonで詳しく見る by G-Tools

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です