7-本の紹介

書評 『40代を後悔しない50のリスト』(大塚寿)

編集者さまより献本いただきました。ありがとうございます。

と、最初に書いたのは、献本でもされない限りはまず手に取らない本だからだ。なんといってもまだ30代だし、しかも、それすら一年間も体験していない。そういう訳で、「40代〜」と書いてある時点で、選書フィルターに引っかかってしまう。

40代を後悔しない50のリスト 1万人の失敗談からわかった人生の法則
40代を後悔しない50のリスト 1万人の失敗談からわかった人生の法則 大塚 寿

ダイヤモンド社 2011-02-18
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でも、読んでみていくつか面白い発見があった。今回はそれを軸にして書いてみようと思う。

仕事が要求するものの変化

20代の後半あたりからよく「落ち着いてますね」とか「年齢のわりに・・・」みたいなことを言われていた。つまりおっさんくさい、というわけだ。まあ、そういうのも個性みたいなものだから、特に気にしてはいなかったのだが、やはりそういった評価を受けるのにも理由があるんだな、というのがなんとなく理解できた。

例えば、著者は40代を次のように表現している。

四〇代は、仕事においては、やっと自分で自由に仕事ができるようになる年代です。

なるほど、そうかと改めて確認した。そういえば会社員的ロードを一切経由しないで生きてきたので、年代ごとで仕事の取り組み方が違うという発想をあまり持っていなかった。20代や30代からの変化という点では、次のような説明がなされている。

具体的には、それまではプレーヤーとして個の力を発揮することに集中していればよかったものが、今度は自分一人ではなく、まわりの力を発揮させて、さらにそれぞれの力を結集することだけではなく、その力を発揮する方向まで描くことを求められるようになるのです。

私で言えば、23歳の時に店長になり、そこから7年ほど店舗運営および経営の仕事をしてきた。その最初の一年で痛感したことが、まさにこれと同じ事だ。

店員→店長

一従業員、一店員という立場ならば自分が頑張るだけでそれなりの評価をもらえた。が、店長という立場ではそれだけでは全然足りない。というか、別の方向のスキルが求められる。

例えば、予約商材。ご存じの方は多いだろうが、一年間を通してコンビニには結構な数の予約商材がある。おせちからはじまり、恵方寿司、母の日・父の日・お中元、お歳暮、クリスマスケーキ、年賀状印刷、と実際に数え上げればキリがないほどだ。

立場が店員ならば、周りのコネを駆使して数を集めればそれでOKだ。例えばクリスマスケーキの予約20個取ってきました、といえばかなりの「成果」と言えるだろう。が、これが店長という立場だとそうはいかない。確かに20個の予約を取ってくること自体は店の利益に貢献しているが、それは「店長」の仕事ではない。

店長の仕事は、20人の店員に一人一個ずつでも予約を取ってきてもらえるようにすること、である。

仕事の質の変化

でもって、これは自分一人で頑張ることに比べると遙かに難しい。そして難しいことであるがゆえに、効果は大きい。単純にお店の雰囲気が同じ方向を向いているという感覚を作り出すことができるし、一人一個が一人二個になれば、20個の予約が40個になる。非常にレバレッジが効いている。

もちろん、そういった環境を作るためには、それ以前に「どの商材に力を入れて、どの商材はスルーするのか」という判断もきっちり行わなければいけない。

こういった「仕事」は単純に頑張ればそれでOK、というわけにはいかない。周辺に目を配り、環境をつくり、情報収集を行い、意思決定を行う必要がある。私がマネジメントに興味を持ちだしたのもこの頃だったと思う。つまり実地で必要だったのだ。

おそらく多くのビジネスパーソンの方々がある程度の年齢になってから経験する仕事を割合早い段階でやっていた、というのが私がおっさんくさいと言われる理由なのだろう。

そして、本書が指摘するように確かに仕事の質が変われば求められるスキルも変わってくる。

ドラッカーも『プロフェッショナルの条件』で「新しい仕事というものは必ず、前の仕事とは違う何かを要求するものである。」と書いている。だから、仕事(職種、地位、環境、役職、任務、肩書きect)が変わったのならば、その仕事には一体何が求められているのかを徹底的に考える必要があるだろう。これは年齢が何歳であろうと、知っておいて損はないと思う。

失敗の面白さ

本書に書いてあることで、思わずうなずいたのが次のような文章。

成功の話を聞いていて気づいたのは、成功以上に失敗の話のほうが格段に面白く、惹きつけられるものがあるという点です。

私もまったく同感。例えば、『仕事は楽しいかね?』がマックス翁の成功ヒストリーだったら全然面白くなかっただろうと思う。あれは、主人公の「失敗」とそれに対する教訓という形で書かれているからこそ、私たちの心に染み入る何かが生まれるのだ。

さらに言えば、大半の「成功体験」には再現性がないものが多い。勝負事の世界には「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し」という言葉があるが、まさにその通りだと思う。この言葉が紹介されている羽生善治氏の『大局観』では、次のように書かれている。

勝負事には「幸運な勝利」はあっても、「不運な負け」はない。「負け」には何かしらの理由がある。
一体何が負けの原因だったのか、きちんと検証し、反省する必要がある。

つまり、重要な事は「失敗から何をどうやって学んだのか」ということ。その教訓と姿勢こそが私たちが身につけるべきものなのだろう。

後悔リストの使い方

本書は50のリストとして、さまざまな後悔、つまり失敗の紹介とそれに対する著者の解決法が書かれている。もちろん、それをそのまま実践するのもよいだろう。ただ、私は本書を読み始める前に、それぞれの「後悔」に対してすこし自分なりに答えを考えてみるのも良いと思う。

例えば、一つ目の後悔は

「自分にとって大切なこと」を優先できなかった

である。50代の自分を思い浮かべて、自分にとって大切なことをないがしろにしてきた状況を想像する。うまく想像できなければ『クリスマス・キャロル』を開いてもよい。

で、そこから

「自分にとって大切なこと」をどうしたら優先できるだろうか?

という問いを立ててみる。この答えを出すためには、「自分にとって何が大切なのか」をまず知る必要がある。その後、仕事について、時間の使い方についていろいろなアイデアが浮かぶかもしれない。こういった行為は自分の価値観を見極め、行動修正への方向を示してくれる。思い浮かんだものはどこかに書き留めて、時折見返せばよいだろう。

もちろん、答えがでないこともあるはずだ。そういう時は本書に提示されている解決方法を使っても良いし、他の誰かの解決法を使う事もできる。どんな解決法を使うのかは、それほど重要ではない。真に重要なのは、この問いそのものだ。

「自分にとって大切なこと」をどうしたら優先できるだろうか?

という問いさえ心の中にキープしておけば、やってみた解決方法が合わなくても、いつでもスタート地点に戻ってこれる。

そういう意味で、本書の50のリストは自分なりの問いを立てるために活用できると思う。おそらく全ての「後悔」に共感はできないだろう。しかし、逆に言えば現時点で共感できる「後悔」には何かしら対応していく必要がある。言い換えれば「後悔」の芽を摘んでいく必要がある。

それはつまり、現時点からの自分の行動を変えていくということだ。そしてそれは、自分の認識を変えるということでもある。そのためには心の中に「問い」を持っておく必要があるだろう。

さいごに

私自身は、著者のように一万人の失敗談を聞いた経験はない。しかし、多くの人々が抱えるであろう後悔については、さまざまな種類の虚構__つまり物語__から吸収してきた。まあ、それはそれなりに役立ってきたのだろうと、おぼろげながらには思う。

なんといっても人生は一度きりの体験だ。そして失敗からは多くを学びうる。であれば、他人様の失敗談は突然の雨に降られた時の相合い傘のようにありがたいものである。

▼こんな一冊も:

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7件のコメント

  1. こんにちは。

    40代の半ばを迎えようとしている私には
    気になる本です。

    でも、この本は40代で
    それなりの地位に居る人のための
    本のような気がします。

    私はかなり出遅れています。
    すでに後悔しているのです。
    40代から挽回するための本。
    ご存じないでしょうか。

  2. >とっちゃんさん
    すいません、私はまだ30代ですのでこのあたりの本はあまり読んでおりませんので、40代から挽回するための本は存じ上げません。

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