書評 「リアルタイムウェブ」(小林啓倫)

東京行きの新幹線の中でこの本読んでいた。

リアルタイムウェブ-「なう」の時代 (マイコミ新書)
リアルタイムウェブ-「なう」の時代 (マイコミ新書) 小林 啓倫

毎日コミュニケーションズ 2010-12-25
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目的地は「東京ライフハック研究会」。豪華絢爛のゲストパネラーの中ではなかなか肩身は狭いものの、クラウドについてわいわい語ろうというコンセプトは楽しそうだ。読書しながら、時折休憩がてらにぼーっと窓の外を眺めていると、とある風景が目に入ったので、ふとつぶやいてみた。

Twitterをやっていない人から見れば、ほんとになんてことなつぶやきにみえるだろう。もしかしたら、私が今どこにいるのかが(前のつぶやきの文脈から)分かってしまうので、プライバシー的に危険だ、と考えられるかもしれない。確かにそういう可能性があることは否定できない。

しかし、会場について「お、rashitaさんはいま静岡あたりかぁ〜、なんて楽しみにしてましたよ」というような事を言われると、やっぱりこの本で提示されている変化というのは今まさに起きている最中なのだと思う。それは、おそらく質的に決定的な変化だ。

本との出会い方の変化

本書の著者は、小林啓倫さん。正直この本を買うまでは何をしておられる方なのかはまったく知らなかった。では、なぜこの本を手に取ったかというと、それは著者プロフィールの最後にある「ツイッターIDは”akihito”」、つまり@akihitoさんを私がフォローしているからだ。

そのフォローのきっかけも、誰か別の人がフォローしていたからフォローした、あるいはRTで印象に残る発言をされたか、のどちらかだったと思う。少なくとも存在を知らない人をはじめからフォローすることはできない(まあ、あの「おすすめユーザー」なら話は別だが)。

で、私のタイムラインにこの本の書評なり感想なりが流れてくるので「ふうむ、面白そうじゃないか」という感じで手に取ることになったわけだ。私はアマゾンランキングとか、アルファブロガーの書評とか、当店売れ筋ナンバーワン、などはまず選考の評価にはしない。そういうのを基準にして本を読んでも別に「面白く」ない。
※アマゾンランキング上位の本が面白くないわけではなく、私が面白いと思う担保にはならない、ということ。

その点、タイムラインはなかなか優秀なフィルターだ。自分の興味・関心とマッチする人を多くしておけば、必然的に興味・関心とマッチする本の情報が流れてくる(可能性が高い)。そういう本は書店の平積みにはなっていないかもしれないが、面白く読める可能性は高い。

と、あらかじめお断りしておくが私のタイムラインに流れてきていた「リアルタイムウェブ」の感想などは、だいたい@akihitoさんのつぶやきである。これを、著者の宣伝行為だからうっとうしいとか、まあ多めに見てやれよとか、これもキュレーションの一部だ、といろいろなとらえ方があるとは思う。私自身は自分で実行するのも、人のを見るのも別に気にならない。それはともかく、私がフォローしていた人が皆この本を褒めていたわけではない、という事は書いておく。

激しく前置きが長くなったがこんな経緯でこの本を読み始めたわけだ。ようするに「ツイッターをやっていたからこそ」読んだ本である。そして、こういういったリアルタイムウェブがどういった背景で生み出され、社会的影響を持ち、秘めた可能性にはどのようなものがあるのかを、示しているのがこの本だ。

3つのポイント

新書というサイズで、古いネットから新しいネットへどのような変換が行われつつあるのか、をコンパクトにまとめてある。技術的なお話も押さえてあるので、ふだん無意識的ににソーシャルメディアを使っている人も、「ふんふん」となる知識があるかもしれない。
※ちなみに、本書の内容上当たり前といえば当たり前なのだが、注釈で引かれている参考文献の大半がWebソースであった、というのが非常に印象的だった。

章立ては以下の通り。

第1章 「グーグルの10年」の終わり
第2章 リアルタイムを実現するウェブ技術
第3章 モバイル技術の重要性
第4章 社会環境の変化
第5章 リアルタイムウェブ時代のグーグル
第6章 リアルタイムウェブと社会の未来

非常にわかりやすく書かれているので、概要を書くことはしない。本書で指摘されている点で抑えておきたいポイントは、

  • ウェブ2.0とソーシャルメディアの違い
  • リアルタイムウェブを支えるもの
  • リアルタイムウェブの可能性

の3点つだ。

ウェブ2.0とソーシャルメディアの違い

おそらく、個人レベルではこれが一番重要だろう。なんだかんだ言いながらもウェブ2.0というのは確かに個人が情報発信できるようになった変化なわけだが、そこにはマスメディアと同じような構造があった。つまり、「有名な人の情報だけが多くの人に流れ込む」という構図だ。

ソーシャルメディアはその構造をひっくり返しつつある。有名人やアルファブロガーは今でも影響力を持っているが、そうでない人々の情報発信が広がる可能性が生まれている。それは、人々の情報入手ソースがマスからソーシャルへと移行しているからだ。私がこの本を手に取った経緯がまさにそれだ。

リアルタイムウェブを支えるもの

新しい技術やそれによって生まれるガジェットはユーザーの間口を広げる場合もあるし、そうでない場合もある。技術だけが先行してユーザーが追いついていかない場合も多いだろうし、ユーザー体験が技術を下支えするということもあるだろう。このあたりはクラウドツールにも似たような部分があるかもしれないが、ここでは言及しない。

ようはリアルタイムウェブを支えている技術はすごいかもしれないが、それだけが全てではない、ということだ。日常生活の至る所で、情報収集かつ情報発信できる環境。そして、それを実際にする行為。この二つがリアルタイムウェブをリアルタイムウェブたらしめている。技術と共に、ユーザーの生活レベルでの変化があるからこそ、影響力を持つ存在になっている。

リアルタイムウェブの可能性

本書では、後半にリアルタイムウェブが持つ可能性について言及されている。マーケティングレベルの話ならばすでにいくらでも転がっているし、エピローグで書かれているような災害が起きたときの情報交換ツールとしての使い方もある。おそらく今後はさまざまなレイヤーでソーシャルメディアが注目・研究されていくだろう。

もちろん、何も問題がないわけではない。いままでに無かったリスクや時代の変移に伴う混乱があろうことは本書でも指摘されている。しかし、もはやこの流れを止めることはできないだろう。それは、スマートフォンの増加にも見て取れる。単純な数字レベルの話ではない。電車に乗っているときにスマートフォンを持っている人を本当に多く見かけるようになった。その人たちはその人たちの「つながり」を持っているのだろう。

だが、リアルタイムウェブは、ウェブ技術とモバイル技術を組み合わせることで、文字通り「リアルタイム」で社会を映し出す史上初のメディアになろうとしている。そこでは無数の一般人が情報収集に参加しており、しかも従来のメディアには決して現れることのなかった、ごくささいな行動や感情の揺れまでもが吐露されている。

きっと、これが当たり前の風景になっていくはずだ。

さいごに

本書の最後にはある種の期待を込めて「日本発リアルタイム文化」の可能性が示唆されている。私自身はそれほど楽観的には捉えていない。日本は良くも悪くも独特な存在だ。狭い日本で醸成されるリアルタイム文化が他の国に同じように適用できるのかどうかは判然としない。

が、リアルタイム文化が日本そのものを面白い方向に変化させていくだろうことは予想できる。というかすでにそうなりつつある。あとは、その世界でどのように生きていくか、それだけだ。

▼合わせて読みたい:

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