コンビニの品薄感について

『ザ・ゴール』で有名なエリヤフ・ゴールドラットの『ザ・クリスタルボール』という本がある。『ザ・ゴール』やその他の本と同じように小説形式で書かれている。舞台はホームテキスタイル(家庭用繊維製品)を扱うハンナズショップ。主人公はそのボカラントン店の店長でもあり、社長の義理の息子でもあるポール・ホワイト。

サブタイトルが「売上げと在庫のジレンマを解決する!」となっているように、このポールがさまざまな体験と試行錯誤を繰り返しながら、小売店の売上げを改善する方法論を「発見」していくという流れで話は進む。

この方法論の要点は、

「その日お客さんが買う分だけを在庫として持っておき、細かい納品でそれを補う」

となる。実際は一日分の在庫+αを持つわけだが、考え方としてはだいたいこんな感じである。

一日分+αの在庫を持つ→一日の在庫分が売れる→一日ごとに売れた分を補充

この流れを確立しておけば、店舗内の在庫を最小化しながら、機会損失(売れるべき時に在庫がないという状況)をゼロに近づけていくことができる。

この場合の問題は、「一日分の販売量」をなるべく正確に把握することと、補充の体制をしっかり作ることの二つだ。一日分の販売量が見積もれなければ、在庫量を推定することもできない。もちろん、補充がうまくまわらなければ、そもそもこの方法論自体がうまくいかない。

とまあ、いろいろ書いているが、実際今の日本のコンビニはこの方法論がデフォルトである。コンビニに限らず大手スーパーもこれに準拠した形になっている。店舗内で大量の在庫を抱えずに、納品サイクルにあわせた在庫量を調整するというやり方だ。

簡単に品薄になるコンビニの棚

コンビニでは一日3〜5回納品というサイクルでデイリー商品の納品を回している。一番ゆっくりなもので一週間に2〜3回というサイクルだ(これはタバコ)。平均的にみて、一日ごとのサイクルで商品の補充サイクルが回っていると考えておいてもらって問題ない。

ということは、どういうことかというと、ごく少数の人でも「いつもより余計に買っておくか」という方が増えると、コンビニの棚上では一気に在庫が無くなる、ということだ。なにせ「標準的な」一日分プラスαの在庫しか抱えていないのだから。

基本的には、そうして売り切れても一日から二日で再び商品は納品される。「在庫不足」というのは店舗上の「見せかけ」であり、全体の大きな倉庫には在庫があり、工場では生産されていて、流通が動いている間は、商品は「時間」がたてば自然と入ってくるのだ。

が、例えば「いつもより余計に買っておくか」という方が増えてしまうと、店舗側の「一日分の販売量」予測も変化してしまう。一日5個売れていて、毎日5個納品していた商品があったとして、ある日10個売れたとする。そうすると、次の発注は10個に、できる店員なら15個発注するだろう。

平時ならばこれで問題ない。大きな倉庫に在庫はたくさんあるし、毎日生産された商品がそこに流れ込んできている。細かい調整ぐらいならばいくらでも可能だ。

が、もし、多くのコンビニでこのような事態が起こったら全体のキャパがおかしくなってしまうことは想像に難くない。2万店、いや1万店クラスでも十分に「多い」量だ。
※ちなみにコンビニは4万店舗以上ある。

こうなると、本当に必要なところがどこなのかを見極めるのが難しくなる。結果として「発注制限」といった発注数の上限が決められ、店舗あたりに入ってくる商品の数が一定になる。
※常時に一日5個売れているお店でも、25個売れているお店でも10個までしか発注できない。

これがますます「品薄感」を出してしまい、「いつもより余計に買っておくか」という気持ちを盛り上げる、という悪循環を生む。

さいごに

現状は、「いつもより余計に買っておくか」の方たちの増加と、被災地向けに優先的に在庫が振り分けられている事の二つで、品薄感はより強いと思う。

しかし、それはモノ自体が全然無いわけじゃないし、今後一切手に入らないというわけではない。ちょっと買う人が増えたら、コンビニの棚というのはスカスカになってしまうものなのだから、そのことに対して必要以上に不安を感じることはないと思う。

工場のラインが動いていて、流通が機能していれば、時間はかかるかもしれないが商品はいずれ納品される。

結局の所、何が言いたいかというと「今ものすごく必要ではないもの」に関しては、いつも通り買い物をしていれば良いと思う。すくなくとも「品薄感あるから買っておこう」という行為は、別の品薄感を生み出してしまうし、必要なところに必要なものがいかない可能性もわずかに生みだしてしまう。

塵も積もれば山となるという言葉は、小さな善意の積み重ねにも使われるが、こうした「ちょっとした行動」が集まると全体に影響を与えてしまうことにも当てはまる。

▼参考文献:

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
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