感想群

ウメサオタダオ展に行ってきました(上)

昨日は大阪の万博記念公園内にある国立民族学博物館の「ウメサオタダオ展」に行ってきました。
※開催:6月14日(火)まで。

シゴタノ!で「R25世代の知的生産 」という連載を書いていますし、『知的生産の技術』なんて何回読み返したかわからない私ですので、梅棹忠夫先生の「情報カード」が見られるとなれば足を運ばざるを得ません。

というわけで、えっちらおっちらと電車を乗り継ぎながら行ってきました。

入館まで

こちらは、太陽の塔。
太陽の塔

国立民族学博物館。
建物

入り口。
入り口

「カメラ撮影OK」とのこと。
注意書き

さすがにシャッター音が気になるので、OneCamさんの存在は非常にありがたかったです。しかし、あまりカメラをバシバシ撮影している人も、メモに必死に書き付けている人も見かけなかったので、館内で若干浮いていた感じも否めません。

展示概要

展示内容は1Fと2Fで異なった切り口を使って展示が行われています。

1Fは「比較文明学」「山と探検」「知的生産の技術」「情報産業論」といったテーマごとのセクションがあり、それに関係する著作や梅棹先生の手書きのノートなどが合わせて展示されているという形式。

一回の中央にはデスクが。重厚な存在感があります。
作業机

カラフルなスケッチノート。
スケッチノート

圧巻の情報カード。
情報カード

2Fは「ウメサオタダオ」という人間の歴史を時系列で追いかけていくというもの。年譜が壁一面に並んでいます。あとは、「ウメサオ検定」や「はっけんデジキャビ」といった、閲覧者が一緒に参加するような展示物もありました。

1Fの展示物

展示内容について受けた示唆はさまざまあるのですが、ちょっと一言で要約できるものではありません。「情報について」「人間という生物について」「個人における国防」とか、書き出したメモはいくつもありますが、その辺は「情報カード」が蓄積してから、またアウトプットしてみたいと思います。

実際のノート、情報カード、あとファイルの使い方なんかを見ても非常に合理的な部分が多く、しかもその根本の発想がデジタルでも十分適用できるという点が改めてスゴイところだと思います。

例えば次のような文章が垂れ幕で掲げられています。

「日々成長し、新陳代謝する住所録。」

これはカードシステムを使った住所録の管理方法についてのことでしょう。Evernoteで名刺管理をしていればこれと似た感覚を感じる事ができます。

あるいは、切手のコレクションを行い、その発行場所を地図上に示していく、ということもされていたようです。Evernoteを使っている方ならば、自分の履歴が「地図上で示される」体験の面白さをご存じでしょう。でも、そういうことをEvernoteが存在する遙か前から実践されいた人がいたということです。

その他にも蒸留酒のラベルを集めて貼り付けたノートなんかも展示されていました。

ログが持つ力を信じる

垂れ幕には次のようなものもあります。

「自分自身の経験の記録を、着実につくってゆこうというのは、資料の蓄積ということのもつ効果を信じているからにほかならない。」

この世界観、あるいは哲学というのはライフログに通じるものがあるでしょう。記録一つ一つが持つ意味合いは小さくても、それが蓄積していくことで一定の価値や効果が出てくる、そう信じられるからこそちょっとずつでも記録を残していく。

幸いなことに、大量の情報カード購入したりしなくても現代では簡単に自分自身の記録を残していくことができます。単なる数字からインスピレーションまでその対象はさまざまです。使い方に制約もありません。ただ、自分が記録したいことを記録していくだけです。

「人生を歩んでいくうえで、すべての経験は進歩の材料である。」

この垂れ幕が意味することと、記録を残していくという考え。そこにはつながりがあるのかもしれません。

参加するということ

この展覧会全体は非常に面白かったのですが、中でも印象深かったのが閲覧者がここに「参加」できたことです。

2Fにはいわゆる京大式カード(B6サイズの情報カード)が置いてあって、展示物を見て「思ったこと」「感じたこと」「考えたこと」を書きましょうというコーナーがあります。

そのカードが1Fと2Fをつなぐ階段の壁に貼ってありました。私はそれをじっーと眺めていました。たぶん展示物でも一番時間を使ったのではないかと思います。

壁一面に貼られている京大式カードは、本当に「個性的」でした。
参加者のカード

細かい字でびっちりとまじめな感想を書かれている方もおれば、仮面ライダーのイラストとシンプルな感想を書いている方、ウメサオ先生への感謝の言葉を書いている方、カードとパソコンのデータベースを比較されている方、・・・。それらを眺めていると、不思議な感覚が湧いてきました。

何か一番近いものをあげるとすればツイッターのタイムラインです。あるテーマがホットになっているときは、多くの人がそのテーマについてのつぶやきをされます。その視点はさまざまで、まじめな人もいれば、皮肉な人もいます。茶化す人もいれば、全然関係ない人もいます。

こういうのを眺めていると、本当にさまざまな「世界の切り取り方」があるんだな、と感心してきます。

そして、これらのカードが一つの「コンテンツ」になっているというのがポイントでしょう。自分の作ったカードが展覧会の一つのコンテンツに加わること、これは参加以外のなにものでもありません。しかも、その参加のスタイルが「知的生産」です。

知的生産の技術とは、要するに「素材から新しい情報」を生み出すための技術です。自分が見たものや考えたことを、複数集めていって、それを一つの成果物にまとめ上げる。そういった一連の行為が「知的生産」です。階段横の壁で繰り広げられていたものも、ある意味では一つの生産物と言えるでしょう。

つまり、展覧会に参加できるという事と共に、知的生産の作業も体験できるという二つの意味合いがこの「情報カード」書きには込められているような気がします。

ちなみに、それぞれのカードは「デジキャビ」という装置でスキャニングして取り込まれ、一つのデータベースの中に放り込まれることになります。この「デジキャビ」はかなり楽しい装置だったので、次回エントリでもう少し詳しく紹介します。

さいごに

次のようなパネルがありました。
思想は使うもの
これは思想だけに限ったことではありません。知的生産の技術についてもそうです。昔は学者ぐらいしか使うことがなかった、情報を扱う技術は今ではごく普通の生活する人々に求められている技術になっています。

それはブログやツイッターを含むソーシャルメディアが「市民」のものであるということにも関係していることです。

つまり、学問から仕事へ、仕事から生活へ、といった感じで情報を扱う場所が変化してきているということです。人とツールとの関係、人と情報の関係、そういったことをもう一度じっくり考えてみる必要があるのかもしれません。

▼参考リンク:
ウメサオ タダオ展

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