前回のエントリーで名前だけ紹介した「はっけんデジキャビ」について。今回はもう少し詳しく紹介したいと思います。
Evernoteユーザーならビビッとくるシステムであることは間違いないでしょう。
「デジキャビ」とは?
名前の通り「デジタル」のカードキャビネットです。
カードシステムは、京大式と呼ばれるB6サイズの情報カードを使い、そのカード一枚に一つ一つの着想を書き付けていき、それを蓄積することで巨大な知のデータベースを作り上げるというのが目的です。
カードは取り回しが良いのがポイントですが、時間の経過と共にその数が膨大になっていきます。そうなると物理的スペースとの制約に直面せざるを得ません。この点においてはデジタルは圧倒的に有利です。
というわけで、カードが持つ特徴を活かしながら、それをデジタルベースで構築するというのがデジキャビの特徴です。
実際のもの
これが全体像。
Evernoteに比べるとやや大げさ感はあります。大雑把に、スクリーンとデスク部分の二つに分かれています。
スクリーン部分は後回しにして、まずはデスク部分から。デスクは4つのツールから成り立っています。左右の液晶ディスプレイ、中央のダイヤル装置、そしてカメラ。
カメラはスキャナ的役割です。手書きで書いた「情報カード」をデジキャビ内に取り込むために使います。
その際Evernoteで言うところの「ノートブック」を指定するのがダイヤル装置です。展示会内のカテゴリーに対応する数字があらかじめ設定されているので、それに合わせればOKです。
取り込まれたカードは、スクリーン部分に表示されます。その時カードが「上から降ってくる」のがなかなか面白い所。郵便受けとか書類受けにカードが入ったような感覚があります。このスクリーン部分には最近のカードが表示されているようです。
右のディスプレイは、情報カードの保存キャビネット。
カテゴリーごとに「引き出し」が設定されているので、それを選択すればカード群が表示されます。その差い現実の情報カードの用に、上の部分(見出しが書かれる部分)だけが顔を覗かせていて、ぱぱっと必要そうなカードを探すことができます。カードをタップすれば、そのカードが拡大表示されます。
現実のカードキャビネットの引き出しを開け、目的のカードを探し、カードを引き出すという操作が実現されているわけです。
対して左のディスプレイは机の上にカードを広げたような状態を再現しています。
一束のカードが連なって表示さており、それらを指で移動させることができます。iPadを使っているような感覚で、カードを集めたり、くっつけたり、移動させたりといったことができます。このあたりもリアルの「カードを使う感覚」を再現しようという試みが見て取れます。Evernoteは現状こういう機能が備わっていないので、完璧なカードシステムとしては物足りない感があります。
実際どういう動作をするのかが気になる方は下にyoutubeの動画リンクがありますので、それで確認してみてください。
スマートフォンとの連携
このデジキャビへの「情報カード」の登録は、リアルのB6カードに書くだけにはとどまりません。実は専用のiPhoneアプリがあります。
スマートフォンを持っている方はそのアプリをダウンロードしていくとスマートフォンが「情報カード」代わりになります。展示会内ではwifi環境が準備されていて、それを使って「情報カード」をデジキャビ内に放り込めるというわけです。ちなみに、入場時にiPod Touchを貸してくれるサービスもあるようです。
※未確認。
でもって、この専用のアプリが非常に気に入りました。
「デジキャビ」という無料のアプリです。展示会場にいるときと、そうでないときの動作が少し違うのですが、概要だけ紹介します。
アプリを起動すると「情報カード」の入力画面になります。
入力環境は、手書き、キーボード入力、写真の3つ。それが一つのアプリ内で実現します。写真を撮って、その横に手書き入力で何かを書くなども簡単にできます。これはまさに「情報カード」を使っている感覚ですね。
個人的にFasteverとFasteversnapはそれぞれがとても便利なのですが、できれば単一のアプリでまとまって欲しいという欲張りな欲求があります。そして、この「デジキャビ」は私のEvernoteに送るだけのメモアプリとして理想的な作りになっています。
※すでにあったら誰か教えてください。
ちなみに、展示会場内では入力前に「年齢」と「性別」を記入し、その後「カテゴリー」の選択もできます。このカテゴリーはダイヤルで合わせたのと同じで、会場内のカテゴリーに対応しています。そして保存すれば、先ほどのスクリーンに「カード」が放り込まれるという仕組みです。
私はEvernoteを使っているので、ものすごい感動はしませんでしたが、Evernote未体験ならばかなりグッときたのではないかと思います。まさにデジタル版のカード・システムといった感じです。
さまざまな場所で作ったカード(アナログ・デジタル)が一つのキャビネット内に取り込まれていくという情景はEvernoteを「体験」したときに感じたものとほとんど同じでした。ただし、Evernoteは自分の家の中だけではなくクラウドにそれをおけるという点が一段の飛躍を持っています。
対して、この「デジキャビ」はもともとの「情報カード」システムを念頭に置いて作られているので、リアルのカードを使う感覚が再現されているのが特徴です。
やはり「カードをくる」という感覚はそれ自体が何かしらの意味を持っているなと、今回会場内でデジタルのカードを操作しながら感じました。
理想的な環境について
少しだけ理想の話をしましょう。
まず、アプリは一つ。起動すれば即入力画面が出てくる。手書きメモ、キーボード、写真を単一のアプリから入力できる。もちろん一つのノートにそれらを共存させることもできる。
そして、入力を終えた次の操作は「保存」だけ。あとはEvernoteに送られる。もちろん位置情報も付いている。
Evernote上でそれらのカードが管理される。整理などはEvernoteクライアントで。
もしカードの操作が必要ならば、ノートブック単位で一時的にそれらを別のアプリにエクスポート。
そのアプリでは、一つ一つのノートがカード的に表示され、自由に移動させることができる。もちろん追記や新規カードの作成も可能。操作が終わればカードの変更や追記部分を加えた上でEvernoteにインポート。
めでたしめでたし。
という感じで、中心となるEvernoteを特に変えずに、インプットのために特化したアプリ(スマートフォン)と、カードとして操作するためだけに存在するアプリ(Mac or iPad)の二つがあれば、Evernoteをこの「デジキャビ」的に使うことができます。そういうのが実現したらいいよね、という感じです。
さいごに
ちなみに会場外でも「デジキャビ」は普通に使うことができます。
カードの記入部分そのものはまったく同一で、カテゴリー選択などが省略されています。
「保存」を押せばスクリーンショットがカメラロールに保存されるので、一日の最後にそれらのノートをPictShareすれば・・・
▼参考リンク:
ウメサオタダオ展に行ってきました(上)(R-style)
Youtube_Digital card cabinet (Japanese)
デジキャビ(iTunesプレビュー)
ウメサオ タダオ展(国立民族学博物館)
▼こんな一冊も:
EVERNOTE「超」知的生産術 |
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倉下忠憲
シーアンドアール研究所 2011-02-26 |
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