7-本の紹介

書評 『日本一の「実行力」部隊 ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術』(田中雅子)

コンビニの店長の仕事と言えば、やはり「店舗マネジメント」になるのだろう。

人を動かし、お金を動かし、商品を動かす。加えて自分自身もスタッフの一員として日常業務にも参加する。巷で言うところの「プレイングマネージャー」というやつだ。

22歳の時、右も左も分からないまま、その仕事に就いたときの状況は、今から考えるとかなり無謀に近かった。それでも試行錯誤を重ねて、「店舗運営」を一定のレベルまで持って行くことができた。そういう悪戦苦闘の思い出が、本書を読んでありありと思い出されてきた。

日本一の「実行力」部隊 ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術
日本一の「実行力」部隊 ユニクロで学んだ「巻き込み」仕事術 田中雅子

ダイヤモンド社 2011-05-27
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概要

本書は、著者がユニクロの中で学び、実践してきた「集団的問題解決法」の紹介である。章立ては以下の通り。

序章:100%の実行力は「巻き込み」から生まれる
第1章:「ないないづくし」でも必ず変化は起こせる!
第2章:中間から「中心」になってメンバーの「データベース」を集める
第3章:「巻き込み」で大ヒット商品誕生の土壌をつくる
第4章:できない・やらないと言わせない「巻き込み強化法」
第5章:ユニクロ流「プロフェッショナルマネージャー」5つの条件
第6章:伝え方を激変させる!即効「巻き込みフレーズ19」

第1章は著者のユニクロでの「経歴」を紹介。第2章から第4章までは「巻き込み仕事術」の具体的な方法が述べられている。

第5章はユニクロの現場で共有されている「マネージャーの心得」について。第6章ではコミュニケーションのポイントとその際に使える具体的なフレーズが紹介されている。

個人的には第5章が興味深く読めた。ここでは紹介しないが、5つの条件はとてもシンプルでありながら非常に力強い。こういう現場感覚の心得は非常に参考になる。

また紹介されている柳井社長の原典となった「プロフェッショナルマネージャー」という書籍もアマゾンの欲しい物リストに加えておくことにした。

ユニクロで求められているもの

ユニクロで求められているのは社員の徹底した「実行力」であるという。

「努力します」「検討します」などは許されず、不景気も天災も言い訳として扱われる厳しさがあります。現実の中で社員一人ひとりがいかに問題を見つけ出し解決するかという実行力が、何よりも問われるのです。

ひたすらに指示待ちしている人間や、指示を上から下に伝え得るだけの人間、あるいは問題を傍観している人間。こういった仕事にコミットメントしていない人間は評価されないということだろう。「最低限の人数・時間で最大限の成果をあげる」という超効率的経営を目指しているユニクロならでは、という印象を受ける。

当然一人一人の社員は、常に何かしらの仕事をしている。余裕などは存在しないだろう。しかし、何かを変えるためには時間と人手がどうしても必要だ。多くの企業がここに資源を投下できないために、現状維持に甘んじている。

このような状況について、ドラッカーは『プロフェッショナルの条件』で次のように書いている。

私の知るかぎり、アイデアが不足している組織はない。創造力が問題ではない。そうではなく、せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。みなが、昨日の仕事に忙しすぎる。

そういった環境の中で、著者が自分の仕事__「すべてを変えること」__を成し遂げるために実行してきたのが「巻き込み」仕事術、というわけだ。

「巻き込み」仕事術とは

マネージャーというのは、自分が頑張ればそれで良いというわけではない。周りの人に動いてもらう必要がある。

そのためのアプローチにはいくつかの種類があるが、もっとも致命的なのが「頭ごなしに命令すること」である。もちろん、これでも「人」は動かせる。しかし、人の心までは動かせない。

「巻き込み」仕事術が目指すところは、それとはまったく逆方法のアプローチだ。

巻き込みとは、自分以外のメンバーを徐々に増やしながら、彼らに無理やりやらせるのではなく、彼らのモチベーションに火をつけながら、自発的に動いてもらうことを意味します。

無理やりやらせるのではなく、自発的に動いてもらう。これは単純に人間関係を良好に維持するためだけではなく、その人のスペックを最大限発揮してもらうのにもこれが一番良いという点も見逃せない。

しかしながら、これは「言うは易く行うは難し」の典型例でもある。人に対して頭ごなしに命令することほど簡単なことはない。対して「彼らのモチベーションに火をつけながら、自発的に動いてもらう」のは難しいし、また手間や時間もかかる。が、それをやるだけの価値は必ずある。

具体的にこれをどのように進めていくのかは、本書に直接当たってもらうとして今回は「私の体験」を少し紹介しておこう。

厳しい制約

超大手企業ユニクロとコンビニの1店舗を比較することなど、おこがましいをはるかに通り越してしまっているわけだが、著者の置かれていた状況と私のそれとには共通点を見つけることができる。

かつて私が置かれた環境は、文字どおり味方ゼロ、たった一人からのスタートだったのです。

私も22歳の時、新しい店舗に勤め始めたときは、まったくの一人だった。すでに組織の中ではグループが出来ていて、私は「新参者」であり、現状に対する「抵抗勢力」として認知されていた。こういう状況でお店の改革を進めるというのは、とても難しい。

また、

  • 予算がない
  • 人が足りない
  • 時間がない

という制約も同じである。

もともと、コンビニというのはそれほど予算があるわけではない。人件費もかなりきつきつだから、当然人を増やすこともできないし、時給を上げてモチベーションを維持させることもできない。人手が足りないことは、私の業務時間も増やすことにつながり、マネジメントにとれる時間も減少させてしまう。

ユニクロもコンビニも365日営業という点は共通だが、コンビニはさらに二四時間営業という制約も乗っかってくる。こういう状況で何かを変えるというのは、かなり難しい。少なくとも「一人で頑張れば」的精神では、まず追いつかない。

データベース作りから

新しい店舗に入って、私が一番最初にやったことは「他のスタッフと徹底的にコミュニケーションを取る」ということだ。仕事の話だけではなく、趣味に関すること、学生ならば学校に関することなどを聞いて回った。

その時は何かを意識していたわけではないが、本書で提唱されている「データベース」を作っていたということになるのだろう。

その対話の中で、そのスタッフ__パート・アルバイト__の仕事観、趣味・特技、誰と仲がよいのか、などの情報を集めていった。これを積み重ねていくと、頭の中に店内相関図というのが出来てくる。これがあるとないとでは、仕事の進め方に大きな差がうまれてしまう。

例えば、夕方のスタッフに新しい仕事をしてもらうときは、まず誰に話をすれば良いのかがわかる。そのスタッフに同調してもらえば、自然と他のスタッフを巻き込んでくれる人が必ずいる。

また、接客が得意、絵を描くのがうまい、発注や売り場作りが好き、場をコントロールするのが得意など、個々のスタッフの特徴を把握しておくと、業務をスムーズに進められるし、また仕事を任せやすい。

そして、仕事を任せると責任感が生まれ、自主性が出てくる。ここまでくると定期的なフォローだけで、あとは勝手に仕事をしてくれる。時に私が想像もしないレベルで仕事をしてくるスタッフ__自宅のパソコンで自作のPOPを作ってくる__なども出てくる。こういうのを発見するのはとても嬉しい。マネージャー冥利に尽きるというものだ。

「自分の仕事」という感覚

その時から、おぼろげに抱いていた目標がある。それは、スタッフがこの店舗のことを「バイト先」ではなく、「うちの店」と呼ぶようになってもらえることだ。
※「うち」=「じぶんの」の関西弁

ありていに「帰属意識」と言ってしまえばそれまでだが、「自分の店」と思ってもらえれば、それは「自分の仕事」になる。そうなれば積極性も出てくるだろうし、また不正を行う確率も下がるだろう。そういう感覚を持ってもらうことが、マネージャーとしての私の仕事の一つだと考えていた。

ユニクロの柳井社長は「チームで仕事をしてください」ということをおっしゃるらしいが、その「チーム」としての感覚を持ってもらうと言い換えられるかもしれない。

つまり、「お店」を中心軸にしてそこにいる人をリンクさせていくという方法なわけだが、その手をつなぎ合わせるためには、まずこちらから歩み寄る必要がある。そのスタートが私の場合「みんなの話を聞く」ということであった。

今から振り返ってみると、そこからスタートして本当に良かったと思う。もし、私が独自のルールを作ることから始めてしまえば、いつまでたってもスタッフとお店との距離は縮まらなかっただろう。むしろより遠ざかっていたかもしれない。

相手の話を聞くというのは、「あなたのことを理解しようとしていますよ」というメッセージを出すことでもある。それが相手からの理解を得るための下地になる。

その相互的な理解の方向性がない状況では、いつまでたっても「うちの店」などとは思ってもらえないだろう

さいごに

本書を読んでいるうちに、想起したことが沢山でてきたので長々と書いてしまった。

言いたいことは、「プレイング・マネージャー」というのはなかなかしんどいポジションだが、やりこめば面白い仕事になる、ということだ。

一人でコツコツ頑張って実績を出すというのも、それはそれで面白いものだが、他の人を巻き込んで企画を進め、それを実行し、完成させたときの楽しさはまた別格のものがある。

それは自分自身もやりがいを感じるし、また参加した人がやりがいを感じているだろうということも感じられるからだ。

公安第九課の荒巻課長は、「チーム」について次のように述べている。

我々の間には「チームプレイ」などという都合のいい言い訳は存在せん。
あるとすれば、スタンドプレーから生じる「チームワーク」だけだ。

個々人が、一つの目標に向かって自分のできることをやる。そして、その総体として結果を出す。全ての組織にこの手法が適切であるかどうかはわからないが、こういう環境に置かれたら、その人は自分のポテンシャルをあますことなく出してくれるのではないかと思う。

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