7-本の紹介

書評 「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」(アトゥール・ガワンデ)

「世の中は複雑すぎる」

そうお考えならば、私からのアドバイスの一つは、「チェックリストを作って、それを使おう」である。

もちろん、それで世界がシンプルになるわけではない。世界はいつだって複雑だし、しかもその複雑性は日々増大しているようにすら感じられる。そんな世界に、シンプルなチェックリストを導入したからといって一体何が変わるのだ、という疑問はあるだろう。

ビフォーアフターするのは「世界」ではない。人間自身だ。その変化は、長時間の経験によるスキルアップや、瀕死の状態からの奇跡的な回復による戦闘力の爆発的な上昇__といったものではない。

その人自身の技量は変わらない。ただ、「余力」が変わるのだ。

本書は、その変化__つまり、「チェックリストが一体私たちに何をもたらすのか」、を解説してくれる一冊である。

アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】 アトゥール ガワンデ 吉田 竜

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出会いと結果

現在、既存の仕事術の再構築の為、ToDoリストについていろいろ考えている。

当然書店で「チェックリスト」というタイトルが目に入れば、一応手には取ってみたくなる。別に買うつもりはなかったが、帯の後ろに「スティーブン・D・レヴィット」の推薦文を発見して、そのままレジへ。大好きな『ヤバい経済学』の著者が薦めているならば買うしかない。

タイトルから「チェックリストで俺はこんなに成功したんだぜ!」的なお話が待っているかと想像していたが、まったく違っていた。個人的に好きなタイプの本だ。内容に興味が持て、話題に広がりがあり、話がうまく流れていく。読みやすいし、示唆__考えのヒント__も多く得られた。

概要

本書の内容を簡単にまとめると、一人の医師が医療現場に「チェックリスト」を導入するために悪戦苦闘していく、というストーリーだ。その中で「チェックリスト」がどのような効果を持っているのかが、事例と共に語られていく。

例えば、

  • 「巨大な高層ビルを安全に建てる方法」
  • 「操縦が複雑な爆撃機を安全に飛ばす方法」
  • 「不況の真っ只中でも次々と投資を成功させる方法」
  • 「毎晩150人の客に美味しい料理を確実に提供する方法」

などだ。それぞれの状況で「チェックリスト」がどのように機能しているのかが紹介されている。

チェックリストの導入

よくよく見渡して見ると、仕事の現場では当たり前のようにチェックリストを活用しているところが多い。「巨大な高層ビルを安全に建てる方法」などは、まさにPM(プロジェクトマネジメント)のお話だ。SE業界におられる方であれば、おなじみだろう。

しかし、これが全ての仕事に適応されているわけではない。その一つが著者が所属する「医療業界」だったというわけだ。その「いままでチェックリストが存在しなかった世界」に、新しいルールを導入していく。

当然、反発も大きいだろうし、「チェックリストはいかにあるべきか」という大きな問題も残る。それらを一つ一つ潰していく過程で、著者が「チェックリスト」の本質に迫っていく流れを、私たちも追体験できる。

私は、ある種の業界におけるチェックリストの適応ではなく、「自分の管理」__セルフマネジメントの手段としてToDoリストとどのように接すればよいのか、という視点で読んだ。

チェックリストとセルフマネジメント

「序章」の中で著者は、膨大な知識や高い技術を持つ人々でも失敗を起こしている現状を指摘した上で、次のように書いている。

ということは、これらの失敗を防ぐには別のやり方が必要なのだ。私たちの経験と知識を有効活用しつつ、人間の限界を補ってくれるようなやり方が。

この「やり方」の一つが、「チェックリスト」というわけだ。そしてこの考え方はGTDと非常に似通っている。人間の限界を前提としてシステムの組み立てだ。

これをやっておかないと、日常の大半は無難に過ごせたとしても、精神への負荷が大きくなったとたんに破綻してしまう。あるいは、無難に過ごせているように見えても、実は「認知コスト」を余分に支払っているのかもしれない。

そういう状況への対応が「チェックリスト」だ。

  • 日常の「うっかりミス」を減らし
  • 非日常でも最低限の対応を行い
  • 限られた資源である認知リソースを節約する

こういう効果がチェックリストにはある。

さいごに

私たちの脳は、非常に高度な処理ができる反面、その性能にはやや難もある。

記憶は不確かでコントロールしにくく、複雑な世界をヒューリスティックな色眼鏡で捉えてしまう。そんな状態で、世界の複雑性に対抗するというのは、鎧を装備してダッシュするようなものだ。やってやれなくはないが、あまり心地よいものではないだろうし、タイムも早くはないだろう。

本書で紹介されている事例を見れば、「チェックリスト」がいかに便利なのかを知ることができるとともに、チェックリストだけではダメだ、ということも分かる。本書内で何度か指摘されている「チェックリストはマニュアルとは違う」という点は理解しておくべきだろう。

ちなみに、巻末には「チェックリスト作成のためのチェックリスト」が添付されている。日本のビジネス書だと、このチェックリストそのものがメインにきてしまうことが多いように思える。でも、それだけでは十分ではないのだ、ということが本書を読めばよくわかる。

▼こんな一冊も:

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1件のコメント

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