カバン

カバンが一つある。ショルダーでもビジネスでもナップサックでも、ハンドバッグでもなんでもいい。とりあえず、一つのカバンだ。

君は、好きな本を選んでそのカバンに詰めていく。あれも読みたい、これも読みたい、そんな風に興味に任せるまま、どんどん詰め込んでいく。

そのたびごと、カバンは少しずつ重くなる。一冊一冊は手にすると軽い。でも、それをカバンに入れていけば、確実に重さは増していく。

それはまあ、かまわない。自分で持ち運べる量であれば、誰からも文句は言われない。

ただ、いつかは満タンになる。新しく本を入れようとしても、どこにもスペースが見あたらない時がやってくる。

そういうときは、潔さが必要だ。

一度カバンを下ろして、全ての中身を出してから、一つ一つ「いれるべきか、いれざるべきか」を再検討してもよいだろう。あるいは、新しく手にした本は全て諦めるという選択も十分あり得る。一冊入れるたびに、底にある本を投げ捨ててもよい。なんであれ、どこかに線を引かなければいけない。

カバンの限界を超えて、本を詰めようとすれば、いずれ取っ手がちぎれてしまう。そうなってしまえば、もうカバンはカバンの役割を果たさなくなる。

たぶん、その時初めて「持って運べるのがカバンの役割だ」と気がつくかもしれない。そう気がついた後、もし運が良ければ新しいカバンが手に入ることもあるだろう。でも、それは絶対100%保証されるものではない。ちぎれた取っ手を手にしながら、呆然と立ちすくむしかない、ということだって起こりうる。

だからといって何もカバンに入れないのはもったいない。何かを運んでこそのカバンだ。

何も詰め込まなければ確かにカバンは軽いだろう。でも、そのカバンに意味はない。どれだけつまらないものでも、どれだけ短い距離でも、Aという地点からBという点に移動させること。それがカバンの一つの役割だ。

もし、今カバンを手にしているならば、扱い方には十分注意を払った方が良い。取扱説明書なんて、どこにもないのだから。

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Rashita
物書きをやっております。実用書から小説までなんでもござれのハイブリッド物書きです。 ライフハックや仕事術、知的生産などに興味があります。

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