「意識の矛先はふらふらと揺れ動く 〜集中環境作りの第一歩〜」の続き。
人の集中は基本的には続かないもんなんだ、意識はついふらふらとしちゃうもんなんだ、ということを踏まえて「じゃあ、その中で集中が続くようにするのはどうすればよいのか」というのを考えてみます。
方向性は二つ。
一つは、「意識の逃げ先を封鎖しておくこと」。
もう一つは、「意識の逃げ先をあらかじめセッティングしておくこと」。
意識の逃げ場を封鎖
一般的に「集中できる環境」というと、こちらを指すのでしょう。ホテルに缶詰したり、私のようにSNSにアクセスするハードルを上げたり、あるいは特別なエディタを使ったり、といったアプローチがこれです。
野口悠紀雄さんは「新幹線は自分の書斎だ」というようなことをおっしゃっていましたが、他にすることがなく、かつ外部的な割り込みが発生しにくい状況であれば、「集中しさすさ」にプラスに働く面はあるでしょう。
つまりは、そもそも意識の対象を切り替えにくくする、という方法。言い換えれば意識を檻の中に閉じ込める、となるでしょう。
かなり効果的ですが、万能であるとまでは言えません。
一つには、環境そのものを変えられない場合があること。誰しもがホテルに缶詰して作業を進められるわけではありません。もう一つが、これが案外疲れること。ぐっと意識を集中して、作業を行うと確かに作業は進みますが、その分結構疲れます。多分「時間的な制約」がある中で、うまく機能するものなのでしょう。まる一日の作業の中でこの方法論が適応できるかは、検討の余地があります。
最後のポイントは、意識を檻に入れて、鍵をかけるのは自分自身ということです。「今日は、SNSでも見ようかな〜」なんて一度でも思い立ってしまえば、環境そのものが破綻します。「集中力を働かせて作業をしよう」というテンションが無いと、そもそもこういう環境に身を置こうという発想にはならないのではないか、という懸念があります。
意識の逃げ場をコントロール
もう一つのアプローチは、意識を檻の中には閉じ込めないやり方です。注意が逸れてもOK。ただし、その行き先を誘導します。檻のアプローチを動物園方式と呼ぶならば、こちらはサファリパーク方式となるでしょう。
前回も紹介しましたが、「016 SNSを「仕事向き」の環境に変える」は、こちらのアプローチです。この方法だと、SNSにはアクセスするんだけども、結局その作業に関連ある情報にアクセスすることになります。つまり、意識の矛先が変わったとしても、それは「同じカテゴリ内」にとどまり続けます。こうしておけば、元の作業に戻ってくるのも比較的容易です。
DoingリストやiPhoneアプリの「TaskPort」などの場合であれば、順路指定ということになるでしょうか。目の前の作業から一端意識は逸れるのですが、逸れた先に「あなた今これしてましたよ」という看板が待っていることになります。これで元来た場所に戻れます。
なので、これらは「すぐ目につく場所」に置いておく必要があります。PCで作業していて、紙でDoingリストを作っているならば、PCのすぐ横に置いておかなければなりません。PCから視線を外したら、そこに目が行くような場所に置いてあることが必要です。決して引き出しにしまってはいけません。これは当たり前のように思えるかもしれませんが、デジタルツールを使う場合、特に意識しておいた方が良いことです。
視線の逃げ場
上と同じようなことですが、私は大きな企画を進める場合には、必ず「プロジェクトノート」というのを作っています。一番最初はA5の大学ノート、次にEvernoteで、最近ではiPadでそれを実装しています。これら3つのツールを使い分けてみて初めて気がついたことがあります。
例えば、原稿はMBAで、cotEditor + ATOKというような環境で書くわけですが、その横に現在の章に関するプロジェクトノートのページを広げることになります。Evernoteであれば、ノートブック、iPadであれば、UPADのノートです。
これらの3つの媒体でアクセス出来る情報が同じだとして__明らかに違いますが__も、私の作業に与える影響は違ってきます。その影響は「視線」です。あるいは「目に入るもの」と言い換えられるでしょう。
人のインプットの多くは「目に入るもの」から行われます。そして、インプットがその時の自分の「コンテキスト」をの形成に影響を与えます。でもって、この「コンテキスト」がやる気とか集中力に関係してくる、というのはまた別の話なので割愛します。なんにせよ、「目に入るもの」というものをバカにすることはできません。
紙のノートは、視線の逃げ先として最高です。液晶ディスプレイとは違って目に負担を書けませんし、開いているページはずっと同じ情報を提示し続けます。ページに書かれているのは、その章に関するさまざまなことがらです。エディタから視線を外しても、意識はまだ同じ事柄の中を漂うことになります。こうすると、スムーズに作業に戻ってくることができます。
その次にiPad。こちらも視線の逃げ場としてはうまく機能します。ただし、目が疲れたな、というのにはあまり対処できないかもしれません。問題点は、スリープしてしまうこと。画面が真っ黒のものは、視線の逃げ場にはあまりなりません。が、この辺は設定で変えらます。
最後にEvernoteクライアント。エディタからの視線の逃げ先としてはあまり機能しません。なんらかのジェスチャでウィンドウを切り替える手間が必要です。ただし、マルチディスプレイなどを使えば問題は解決します。
私は、「プロジェクトノート」を心理的な面で、長期的なコンテキストの保持に役立つ物として捉えていましたが、それを作業中に開いておくことで、短期的なコンテキストを保持するのにも役立つ、という発見です。
説明が不十分なので、上に書いたことはまったく意味不明かもしれません。適切な例えになるかどうかはわかりませんが、一つ思考実験を書いておきましょう。
パターンAは、何の準備もなしに、エディタを立ち上げてブログの原稿を書く。
パターンBは、更新作業に入る前に、自分のブログにアクセスして昨日以前に書いたことや読者さんからのリアクションを確認する。
さて、この二つの「原稿を書く作業」はまったく同じと言えるでしょうか。プラスになるかマイナスになるかはわかりませんが、書くモチベーションやテンションは違ってくるのではないでしょうか。
さいごに
意識を集中させ続けるというのは、なかなか困難な作業です。鍛練を積めば向上する技術ですが、いきなりは無理でしょう。すると、
「意識の逃げ場を塞いでおく」
「意識の逃げ場をコントロールする」
という二つのアプローチが出てきます。特に後者は、
「逃げた先でも同じようなことに意識が向く」
「逃げた先からでも元の場所に帰ってこれる」
という分岐が考えられます。
意識が逃げてしまうことの問題点は、
- そもそも元の作業になかなか戻ってこられなかったり(作業時間の減少)
- 何をしていたのかが分からなくなる(作業効率の低下)
- その作業に対するモチベーションの低下(コンテキストの弱体化)
というのが上げられるでしょう。これらの問題に対処できるならば「逃げちゃダメだ!」というわけではないと思います。
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野口 悠紀雄
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