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書評 『働かないアリに意義がある』(長谷川英祐)

Posted on 2011 年 7 月 22 日 by Rashita

少し前に読了した本ですが、なかなか面白い一冊です。

アリやハチなどの「社会」を持つ昆虫を徹底的に観察した研究から、その社会がどのような「構造」を持っているのか、をわかりやすく伝えてくれる内容になっています。

働かないアリに意義がある (メディアファクトリー新書)
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「いったい、アリの社会についての知見を得て何の役に立つんだ」、こう思われるかもしれません。

しかし、タイトルにもありますが「働かないアリがいるからこそ、組織は存続できる」というトピックスはなかなか興味を惹きます。これはもちろん、「自分は働かなくてもOK」という理由を与えてくれるものではなく、組織(あるいは社会)の中の多様性が何をもたらすのか、というお話です。

お馬鹿のレーゾンディティール

一匹のアリがどこかで餌を発見したとしましょう。

人間のように「おぉ〜い、ここに餌があるぞぉ〜」と大きな声で叫ぶことができないアリは、その代わりにフェロモンを使います。巣から出発してその餌にたどり着くまでのルートをフェロモンを出しながら、自分で辿っていきます。他のアリはそのフェロモンに導かれ、無事餌までたどり着くことができます。

この仕組みは非常に効率的です。でも、このアリグループの中にフェロモンを追い切れない「お馬鹿」なアリが混ざっていたらどうでしょうか。右に曲がるべき道を左に、左に曲がるべき道を直進、といった具合にフラフラしてしまいます。このアリたちはあまり効率的とは言えません。

しかし、問題は最初に餌を見つけたアリが「最短ルート」を通ってきたのかどうか、ということです。

最初に餌を発見したルートは、餌から巣の間の最短ルートではない確率の方が高いでしょう。この時、フラフラするアリが、たまたま「最短ルート」を発見するかもしれません。必ず発見できるかどうかはわかりませんが、すくなくともフェロモンに100%追従していくアリには発見不可能である、ということは確かです。

もし教訓風に言い換えれば、「他の誰かに約束された成功は、イノベーションにはなり得ない」ということになるでしょうか。マックス翁の「試してみることに失敗はない」という言葉も思い出されます。

世の中で新しいアイデアを生み出した人は、どのタイプのアリと似ているでしょうか。

均一性によるリスク

もう一つ面白いお話は、「働かないアリ」の存在です。

アリの仕事は「巣」の維持と言っても良いでしょう。餌をとってきたり、巣の修復を行ったり、卵の面倒を見るのも、「巣」という社会システムを維持してくためのものです。それらの活動は止まることを許されていません。

もし、全てのアリがまったく同一に100%の稼働をしていたとします。その時突然の大雨で巣に水が流れ込んできます。アリワーカーは通常業務に加えて、その穴を補修し・・・と連日徹夜の業務を繰り返し、最終的には皆が疲れ切ってしまうとします。そうすると、巣をメンテナンスするアリは存在しなくなり、社会システムの秩序は崩壊します。

もし、8割ぐらいのアリが通常業務しており、彼らが疲れ切ったときにだけ働き出す「後から働きアリ」がいたとすればどうでしょうか。緊急的な状況では、そのアリたちが交代要員となって、社会システムを維持していきます。

では、この仕事の割り振り「誰が働いて、誰が働かないのか」という仕分けを、中間管理職が存在しないアリ社会ではどのように行われているのか、という興味深いもう一つのテーマは、本書に直接当たってください。その辺の生物的なメカニズムもこれとは違ったお話で面白いものがあります。

均一化が持つ危険性については、タレブの『強さと脆さ』あたりを読めば、さらに詳しく考えることができると思います。

さいごに

ある「存在」について考察する場合、それ自身だけに注目しているだけでは、なかなか深いところまでたどり着けません。

それとよく似た存在を比較することで、そのものが持つ本来的な性質や、特徴というのを捕まることができます。「社会」についても、異なった文化間での比較だけではなく、異なった生物間での比較というのも、「人間社会」を相対化して捉えるには必要なのかもしれません。

本書を読んでいて、アリの組織の作り方から「ほぼ日」の組織論というものが強く想起されました。なにやら似ている所がたくさん見受けられます。そのあたりについてはまた別エントリーにて書いてみます。

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