inspired by 2011年上半期に読んだ印象的な10冊の本(ライフハックブログKo’s Style)
上のブログ記事を読んでいたら、なんだか私も同じことがしたくなったので、やってみます。こういう時にメディアマーカーは便利ですね。
※rashitaのバインダー
こういう紹介は、ある程度ピントを絞って本をセレクトするのが読者ライクですが、今回は深く考えず、できるだけ書評エントリーで取り上げなかった本を中心に紹介してみます。
人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice) | |
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ジャロン ラニアー 井口耕二
早川書房 2010-12-16 |
「人間はガジェットではない」。何をそんな当たり前のことを・・・と考えられている方に対しては、「じゃあ、人間とはなんですか」「人間とガジェットは何が違うのでしょうか」と問い掛けてみたくなります。IT社会の先行きは、一体どのようになるのか。あるいはこの方向性は人間を「ガジェット」的に扱う方向には向かってはいないだろうか、という著者の(けっこう大胆な)問題提起です。
読みやすい本を希望している方にはまったくオススメしません。合わせて『キュレーションの時代』を読むと、問題を両側から捉えられるかもしれません。
村上春樹 雑文集 | |
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村上 春樹
新潮社 2011-01-31 |
とりあえず、ファンなので。
普通に面白かったです。フィッツジェラルドの「他人と違う何かを語りたければ、他人とは違った言葉で語れ」という文句は、いつまでも私の心に残っています。あと、「ひたむきなピアニスト」という短いライナーノートにある次のような文章も。
音楽でも文章でも、何かをクリエイトしつづけていくことの大変さは、基本的には変わりない。前向きな姿勢がとれなくなったら、生み出される作品やから力や深みは消えてしまう。
最近発売された『おおきなカブ、むずかしいアボガド』なども合わせて読むと、時間経過による文体の変化も味わえるかもしれません。
大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21) | |
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羽生 善治
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-02-10 |
羽生さんが書かれた新書はいくつか読んでいますが、その中でもぐっときた話が多い一冊でした。将棋以外でも、たとえば、麻雀や人生においても大局観というのは大切だと思います。
特に、相手と同じスピードで走っていると、自分がどれだけの速さで走っているのかわからなくなるので、スピードを定期的に確認する必要がある。
ダニエル・カーネマン心理と経済を語る | |
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ダニエル カーネマン Daniel Kahneman
楽工社 2011-03 |
行動経済学について書かれた本は(なぜかしら)面白い本が多いのですが、その中でも要点をしっかり押さえ、しかもそれがわかりやすく説明されている本書は珍しい一冊。読み物としても面白い、というのが個人的には重要ポイントです。
反哲学入門 (新潮文庫) | |
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木田 元
新潮社 2010-05-28 |
何が「反」なのかは本書を直接読んでもらうとして、この本を読んでようやく西洋哲学の流れを掴むことができました。それまでは、私の頭の中における「哲学者」とその思想は、それぞれが独立していて、関連性や流れがあまり理解できていなかったのですが__体系的な教育を受けていない弊害__、まったく分厚くない本書のおかげで、それが大まかながらも見えてきた、という感じです。
この方面に興味がない人にはまったく不要の一冊ですね。
知性誕生―石器から宇宙船までを生み出した驚異のシステムの起源 | |
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ジョン・ダンカン John Duncan 田淵 健太
早川書房 2011-03-24 |
知性はどのように生まれたのか、ではなく、私たちが知性と呼んでいるものは、一体何なのかというテーマです。ちょっと読みにくい感じの本ですが、興味深いエピソードもたくさんあります。考えてみると、私たちの脳は驚くべき高度なことをやってのけます。そのメカニズムの繊細さを思えばちょっと怖くなってくるぐらいです。
前に論じたように、私たちがおこなうどんなことも思考と行動が複雑に調和した構造を含んでいる。どんな課題に対しても、この構造は良くもなれば悪くもなる。つまりこの構造は、私たちが課題に取りかかり、良い戦略を探し、何が重要かを理解し、注意をそらさないようにしながら、最適化していく。
上の引用はもちろん、脳の話ですが、注意深く観察すると「仕事術」系のシステムが提供してくれるものとまったく同質です。ようはそういったシステムも、メモが脳の記憶補助であるというのと同じような意味で、脳を補佐している、ということです。全然別の枠組みを持ってきているわけではない、というのが重要な点かな、と思います。
手帳進化論―あなただけの「最強の一冊」の選び方・作り方 (PHPビジネス新書) | |
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舘神 龍彦
PHP研究所 2007-10 |
2007年発売の本ですが、「こういう手帳の本は面白いよな」と普通に思いました。「術」ではなく、「論」です。私はこういう「そもそも手帳とは〜〜」的な話が大好きなので、ジャストフィットしました。舘神さんでないと書けない本だと思います。
もちろん、手帳に興味がない方はスルーで問題無い一冊です。
リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法 | |
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Andy Hunt 武舎 広幸
オライリージャパン 2009-04-27 |
はじめて読んだオライリー本です。人間の認知の仕組みから、学習法や考え方についてさまざまな方法を提供してくれる本です。読み物としても十分に楽しめます。プログラマー向けに書かれた本ですが、その他の方でも役に立つことは沢山含まれています。ただ、書いてある用語がわからないことはちらほら出てくるかもしれませんが・・・。
アナタはなぜチェックリストを使わないのか?【ミスを最大限に減らしベストの決断力を持つ!】 | |
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アトゥール ガワンデ 吉田 竜
晋遊舎 2011-06-18 |
「もっとチェックリストを使いましょう」という本ではありません。チェックリストというのが、一体私たちにどのような影響を与えるのか、という話です。ToDoリスト一つとってみても、その「使い方」は簡単なものではありません。いろいろ気をつけるべき点があるわけです。
チェックリストも単にそのツールを導入すれば、何もかもうまくいくという話ではありません。その点にだけ注意すれば、面白く読める本だと思います。
なれる!SE―2週間でわかる?SE入門 (電撃文庫) | |
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夏海 公司 Ixy
アスキーメディアワークス 2010-06-10 |
ラノベです。SE業界のお話なんですが、ブラックな部分をネタにして、「それでもSEって楽しんだよ」とずぶずぶはまり込むストーリーが描かれています。『数学ガール』という小説を読んだときにも感じたことですが、何かを吸収していく、あるいは理解の階段を上っていくときの「あの感覚」をきちんと伝えるというのは大切なことなんだな、と思います。
さいごに
というわけで以上2011年上半期の10冊でした。
皆様も上半期の印象本を振り返ってみてはいかがでしょうか。本を取り出してパラパラと読み返しているだけでも何か発見があるかもしれません。10冊もあげる本がなければ、5冊や3冊でも振り返ってみて、こうしてブログ記事なんかを書いてみるのは、面白いと思います。
▼合わせて読みたい:
おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2 | |
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村上 春樹 大橋 歩 画
マガジンハウス 2011-07-07 |
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書) | |
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佐々木 俊尚
筑摩書房 2011-02-09 |
数学ガール | |
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結城 浩
ソフトバンククリエイティブ 2007-06-27 |