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「ビジョナリー・カンパニー」への試金石

AppleのCEOスティーブ・ジョブズの引退のニュースをみて、ふと『ビジョナリーカンパニー』を本棚からピックしてみた。

改めて解説するまでもないが、「時代を超える生存の原則」の副題を持つジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラスの共著であるこの本では、「偉大なる企業の原則」が考察されている。

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則
ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則 ジェームズ・C. コリンズ ジェリー・I. ポラス James C. Collins

日経BP社 1995-09
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この原則にアプローチするための方法論はとてもシンプルな問いで表すことができる。

原則へのアプローチ

「真に卓越した企業と、それ以外の企業との違いはどこにあるのか」

情報とは差異である。単に成功した企業だけを並べても、そこからは何も見えてこない。

例えば「成功する株式投資法」というものがあったとしよう。勝率80%、一年間で資産が20%もアップ。ちゃんとポートフォリオも公開されている。このやり方は間違いない!といったところで、同じ方法を使ってまったくもって成功しない人もいる。

重要なのはここからだ。

ほとんど同じ手法を使っているのになぜ片方が成功し、もう片方は失敗したのか。その「差」は一体なんなのか。それこそが本質的な要素ではないのか。

これをビジョナリー・カンパニーとそうでない企業について当てはめ、分析したのが本書である。

Apple社という作品

「ビジョナリー・カンパニー」は次のように定義されている。

ビジョンを持っている企業、未来志向(ビジョナリー)の企業、先見的(ビジョナリー)な企業であり、業界で卓越した企業、同業他社の間で広く尊敬を集め、大きなインパクトを世界に与え続けてきた企業である。
※()内はルビ表記

この部分を読んで浮かび上がるイメージは、Appleのそれと重なる。しかしまだ、Appleがビジョナリー・カンパニーと呼べるかどうかは定かではない。

スティーブ・ジョブズがビジョナリーであったことは否定しようもない。ただ、Appleという組織がそうなっているかどうかは分からない。それが判定できるのはこれからである。

重要な点は、ビジョナリー・カンパニーが組織であることだ。個人としての指導者は、いかにカリスマ性があっても、いかに優れたビジョンを持っていてもいつかはこの世を去る。(中略)しかし、ビジョナリー・カンパニーは、商品のライフサイクルを超え、優れた指導者が活躍できる期間を超えて、ずっと繁栄し続ける。

スティーブ・ジョブズは様々な商品をこの世に送り出した。

いま私の視界にもチラホラとそれが入り込んでいる。その中のいくつかは愛用品と呼べるぐらい手放せないものだ。高級なスピーカーでも、オープンカーでも、万年筆でも、手帳でもなんだっていい。人生においてそうした「愛用品」を持てることは、小さくても確かな幸福(小確幸)である。このことに対して、彼に感謝しないわけにはいかない。

が、それはそれとして、ジョブズがどのような「会社」を築いたのかはまだ評価できない。彼が盛大に時を告げていただけなのか、それともしっかりと時を刻み続ける時計を作ったのか。それが見えてくるのはこれからのことになる。

ビジョナリー・カンパニーの神髄は、基本理念と進歩への意欲を、組織のすみずみにまで浸透させていることにある。目標、戦略、方式、過程、企業文化、経営陣の行動、オフィス・レイアウト、給与体系、会計システム、職務戦略など、企業の動きのすべてに浸透させていることになる。

つまり経営者にとって、会社のシステムそのものが一つの「作品」なわけだ。それが作りきれていなければ、経年劣化は避けられない。システムが出来上がっていれば、その企業であり続けられる。

さいごに

個人的には、そうあって欲しいとは思う。つまりビジョナリー・カンパニーであって欲しいと思う。

しかし、私が強く思ったとしても、その思考は現実化しない。現実はただその姿を私に突きつけるだけだ。使いものにならないプロダクトが連続して、それもかなりの間連続して出てきたとしたら、距離を置くしかない。ビジョンの切れ目は、縁の切れ目だ。

まあ、しばらくの間はApple製品と楽しい生活を送り続けられそうな雰囲気はある。

どれだけビジョナリー・カンパニーが長生きしても、私という個人は限定的な存在でしかない。そう考えれば、もうメインディッシュぐらいまでは堪能したと言えるだろう。だとすれば、とりあえずは十分である。

編集後記:
ちなみに、『ビジョナリーカンパニー』は、企業だけではなく個人の生き方について考える上でも非常に示唆の多い本である。ぐーたら路線で生きたい人には適用できないが、ビジョナリーを目指す人には十分に応用の利く原則だ。この本を元に、そういう「生き方」の原則を汲み上げることもできるだろう。

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