7-本の紹介

【書評】「教養としてのゲーム史」(多根清史)

タイトルを見て、どのような内容を想像されるだろうか。

もし、『ドンキーコング』や『ドラクエ』をイメージしたのならば、ガチである。

私はボードゲームやカードゲームにもちょいちょい手を出すので、目次を見てから「あぁ、このゲームか」と納得した。いまやメールと言えば電子的なメールを指すように、ゲームも一般的には電子的なそれを一番強く想起させるのだろう。

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)
教養としてのゲーム史 (ちくま新書) 多根 清史

筑摩書房 2011-08-08
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概要

本書では、1972年〜2009年までに起きた「ゲーム進化の流れ」が語られている。必然的に最新のゲーム情報というよりは、出発点あたりの話がメインになってくる。

目次は以下の通り。

第1章 固定画面の中で
第2章 スクロールが生み出す世界
第3章 RPGと想像力のデザイン
第4章 シミュレーションと欲望

私の年齢で、リアルタイム的に「懐かしさ」を覚えるのは第三章以降になる。それ以前は、「名前としては知っているが…」のゲームばかりだ。もちろんリメイクなどでプレイしたものもあるが、その時代のハードウェア的限界などはあまり意識したことがなかった。

そのハードウェア的限界が一つの「制約」となり、新しい発想を促す。その一つがヒット作となり、模倣品が大量に生まれ「ジャンル」として成立する。多くの競争作品がある中で、飛び抜けた存在になろうとし、試行錯誤がもたらされ、作品の質が高まっていく。こうして日本のゲームは徐々にそのレベルを上げていった、というのが「ゲーム進化の流れ」の一本だ。

この流れは単純な直線ではなく、もう一つ絡み合う要素があるわけだが、それについては本書を参照されたい。

今回は第三章を読んで考えたことをちょっと書いてみる。

RPGの回帰

先ほど書いた「ゲーム」という言葉が持つイメージの変化もそうだが、「RPG」という言葉も最近では液晶ゲームの中で行うものとして定着している。

もともとは「TRPG」がこの言葉のスタートだ。 テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム、である。海外の『D&D』が有名どころで、国内でも『ソード・ワールド2.0』は現役と言ってよいだろう。

「テーブルトーク」という名前から分かるとおり、複数人で机を囲み、会話をしながら(時にダイスを振りながら)、進めて行くタイプのRPGだ。

今の感覚から表現すれば、コンピュータ側がやっている演算処理を、GM(ゲームマスター)と呼ばれる人間が担当するRPGとなる。ストーリーテリングから、進行の調整、モンスターの行動管理などGMの仕事は多い。予想外のプレイヤーの反応に、アドリブで対応するスキルも必要だ。まさにパーティーを主宰するホスト的存在だ。

CRPGは、そのGMの仕事をコンピュータに任せ、家で一人でもできる形に進化させたものだ。なんといってもTRPGは準備が大変である。GMは舞台作りに時間がかかる。プレイヤーは参加するだけとはいえ、それでも現実的予定を調整し、実際にその場所まで移動する必要がある。もちろん、その「場所」も事前に確保しておかなければならない。

その点CRPGはお手軽だ。自分の好きな時間に始められ、自分の好きな時間に終えることができる。めんどくさい計算も必要ないし、役割に没頭することができる。そのお手軽さから、CRPGはTRPGを超えて普及し、「RPGの代名詞」となったわけだ。

損なわれてしまったもの

が、CRPG=TRPGと断言できるかというと、そうでもない。第一に複数人でプレイする楽しさが損なわれている。旅の仲間は全てプログラムが作り出したものでしかない。基本的に話しかけることはできなし、できたとしても返ってくる反応は非常に限定的にパターン化されたものでしかない。複数人で遊ぶときの楽しさはそこにはない。

第二にGM的楽しさが失われている。さっきからGMを中間管理職的表現で書いているが、それが全てではない。作り出す、主宰する、ゲームをコントロールする楽しみというのもあるのだ。それは勉強会を主催するのに似ているだろう。そういう立場でしか味わえないものがあるのだ。

RPGを手軽に遊べるようになる代わりに、これらの要素がそぎ落とされてしまっているわけだ。

進化の先

しかしながら、RPGも進化し続けている。その進化は、失われてしまった要素を補完するものだ。

例えば、複数人のRPG。ネットゲームのMORPGあるいはMMORPGでそれが実現されている。これらのゲームでは物理的場所を移動することなく、他の人とRPGを楽しむことができる。逆にモンハンのように、PSPを持ち寄って物理的に同じ場所でプレイするタイプのRPGもある。

GM的作業をコンピュータに任せながら、複数人でロールをプレイする楽しみが提供されている。

これらはハードウェアの性能アップ、ネット回線の高速化がもたらした一つの進化である。その進化は、実際のところ「昔ながらのRPG」の面白さを、以前とは違った形で提供しているとも言えるだろう。ある意味では原点回帰なのだ。

GM的面白さを提供するもの

では、GMはどうか。これはそう簡単な話ではない。一応「ゲームを作るゲーム」は昔から存在するものの、一般的に普及しているとは言い難い。TRPGのGMのように、マニアックな部分がある。

しかし、iPhoneアプリの開発などがもっと簡易化されれば、「ゲームの世界を作り、他の人に楽しんでもらう」という楽しみにも注目が集まるかもしれない。それはちょっと手間がかかるものではあるが、ある種の人々にとっては代え難い楽しさがあるのだ。

これはゲーム社会の内側の話ではなく、外側の話である。しかしながら、それを体験する人にとっては内側か外側かはあまり関係のない話だ。こういう楽しさを提供する「何か」もあってよいのではないかと思う。

さいごに

と、RPGにまつわる話をいろいろ書いてみた。たぶん人が感じる「楽しさ」の本質的要素は、時代を超えてもそう変わるものではないと思う。ある制約で切り捨てられてしまったものが、環境の変化で再びその姿を現すというのは興味深い。

ちなみに、第四章のシミュレーションゲームの進化もなかなか面白い。『ときメモ』と『ラブプラス』の違いについての考察がある。

著者が指摘するように、国内のシミュレーションゲームが人の欲望をかなえる形で進化してきたとするならば、この二つのゲームが持つ差異は何かしらの意味を持つだろう。それについてもいろいろ思いを巡らせてみたいものだ。

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