ケリー・グリーソンの『なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣』はいわゆる「仕事術」の本です。しかも基本的なことはだいたい書いてある本です。
なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣 (PHP文庫) | |
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ケリー・グリーソン 楡井 浩一
PHP研究所 2003-04-02 |
この本の第一章のテーマは「すぐにやる!」。
今風の本のタイトルにすれば「すぐにやれば、なんでもうまくいく」となるでしょうか。あるいは「すぐやる!のススメ」とかになるかもしれません。ちょっと捻って「放置しすぎたToDo」とかもバリエーションとしては押さえておきたいところ・・・という脱線は置いておくとして、そのテーマが意味するところは単純明快です。
「実行する習慣を身につける」
ただ、これだけです。とてもシンプルですが、その他の習慣と同じように身につけるのは簡単ではありません。
なぜか?
別の習慣が居座っているからです。
別の習慣とは何か?
「先送り」あるいは「先延ばし」の習慣です。
先送りの習慣は、何も生み出しません。生み出すものが何あるとすれば、それらは電子のようにマイナスの要素を帯びているでしょう。
本当に問題あること
ここで問題にしているのは、「先送り」そのものではありません。「先送り」の習慣、言い換えれば「安易な先送り癖」こそが実行を妨げるものだということです。
実際のところ、何かを先送りすることそのものは全然悪いことではありません。そうでなければ、かかってきた電話、入ってきたメール、チャット呼びかけ、リプライのやり取り、新規ブログの更新、上司からの依頼、隣の席の人のフォロー、自分の空腹…これら全てに一つ一つ、リアルタイムで対処せざるを得ません。これは、あまりにも空想的です。何かを実行しているときは、別の何かは実行できない以上、「先送り」という工程は必ず必要になってきます。
しかしながら、本来実行すべきことをやらないために「先送り」が頻繁に使われるようになれば、少々問題が発生します。
“見境なく、何でもすぐやる”では、仕事の能率は向上しない。だが、あなたの仕事への取り組みが、いつもえり好みし、いつも優先づけをし、いつも機が熟すまで待ち、いつもあとで見直すと言いわけをし、いつも書類をぱらぱらめくったりEメールを念入りに読んだりしていることだとすれば、それを仕事とは呼ばない。
このような、実行しない「言い訳」が出てくることが問題なのです。
物事を「すぐやる!」と決意することは、この「言い訳」を真っ先に封じ込める効果があります。もちろん、「すぐやる!」と決めて、実行できないことがあるかもしれません。それは「先送り」しておけば問題なしです。
結局の所「それをやる」と決めることが重要です。言い換えれば、「やること」を前提として処理を考えることが大切です。安易に「あとでやろう」と考えると、結局は何も手に付かないことになります。
その箱はいつ処理するの?
『なぜか〜』の中で、著者が顧客のオフィスに行ってアドバイスをしたエピソードが紹介されています。
デスクの上にあった「保留事項」の箱から書類を取り出し、一番上にあった電話連絡のメモを指して「このかたにすぐ電話してはどうでしょうか」とアドバイスしたそうです。結局、そこにあった書類はその日のうちに全て片づいてしまった、というお話。
なぜその人物がしていなかったこと、つまり「保留事項」の箱をからにすることが、わたしにできたのだろうか。彼にとって「保留事項」とは、”あとでやるもの”という意味だったからであり、一回の訪問ぐらいでは、その定義を変えることができなかったのだ。
この点が非常に重要なところです。
安易に「あとでやる」と箱の中に入れます。でも、その「あと」っていつでしょうか。いつ実行するか決めないまま、安易にその箱に入れてしまうということは、「しばらくはやらない」と決めているのとイコールです。つまり、ここに入れてあるものは処理されず、たまっていく一方です。
もし、彼が1週間に一度「保留事項」を片付けるというタスクをどこかに設定していたとすれば、おそらく問題はありません。
あるいは電話をかける必要があるものをリストにしておいて、電話がかけられる空き時間に気がついたら、そのリストを取り出すという方法でも片付けていくことができるはずです。
結局の所、「先送り」しているかどうかが問題ではなくて、むしろうまく「先送り」できてないのが問題と言えるかもしれません。
- 今やるべきことは今やってしまう
- 後でやるべきことは、後でやれるように処理・整理をしておく
- ずっと後でやることは、ずっと後でも参照できるようにしておく
- やる必要のないことは、やらない
以上のような判断を持つのと、何も考えずに「これはあとで」と先送りしてしまうことは、まったく違った結果をもたらします。
※上の判断はGTDをごくシンプルに表現したものです。
さいごに
では、どうすれば良いのか、というのは簡単な問題ではありません。
『なぜか〜』では「仕事の「先のばし」癖を退治する八つの鉄則」が紹介されています。
- 書類を読むのは一度ですませる。
- 重要でない仕事を先に終わらせる。
- 問題は小さなうちに解決する。
- 仕事の邪魔になる原因となる業務を、真っ先に処理する。
- やり残したことを片付ける。
- 過去ではなく、未来を目指して仕事を始める。
- 「時間がかかるから」を先のばしの言いわけにしない。
- 先のばしから解放されれば、もっと元気になる
こうしたことが実行できれば、さぞかし開放感ある仕事の進め方ができるでしょう。しかし、知っているのと実行できるのはまったく別の話です。なかなか難しいというのが、本当のところ。
※先ほども書きましたがGTDのアプローチは非常に参考になると思います。
具体的な方法論について突っ込んで書くには、ブログではちょっと無理があるので、今回はちょっとお遊びでいじった「テンプレ」を話の締めにしておきます。
- 仕事力を伸ばす1番簡単な方法は、“1”実行
- タスクなんて作業なんだ、こんなものやれば誰だって出来るようになる
- 発生した「気になること」を、どう処理していくかということ
- 雑用はすべて瞬時にこなせる
- 「やるべきこと」がちょっとでも曖昧になってくると途中で間違ってくるんだよ
- 安易な先送りが恐いってことを今日何度も言っておきます
- じゃあいつやるか、今でしょう!
▼こんな一冊も:
不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」 | |
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ダン アリエリー Dan Ariely 櫻井 祐子
早川書房 2010-11-25 |
ライフログのすすめ―人生の「すべて」をデジタルに記録する! (ハヤカワ新書juice) | |
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ゴードン ベル ジム ゲメル Gordon Bell
早川書房 2010-01 |
進化しすぎた脳 (ブルーバックス) | |
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池谷 裕二
講談社 2007-01-19 |
はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 | |
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デビッド・アレン 田口 元
二見書房 2008-12-24 |
ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法 | |
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デビッド・アレン 田口 元
二見書房 2010-11-26 |
350万人が学んだ人気講師の 勉強の手帳 (手帳ブック006) | |
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安河内 哲也
あさ出版 2011-07-11 |
▼おまけ:
TVCM 東進ハイスクール 「生徒への檄文篇」(YouTube)