老舗旅館と聞くと、次のようなイメージが浮かびます。
アクセスしにくいわけではないが、それほど目立つ場所でもない。人目を引く看板や大々的な広告もない。それでもなぜかしらお客さんの足は絶えない。
一度そこに行くと、「なんとなく良いな」と感じる。同じ場所に行くときはそこを利用してみようと思う、あるいは利用するためだけにその場所に訪れたくなる。存在は口コミで伝えられ、唯一の広告材料は提供するサービスの信頼性。
ようするに「知る人ぞ知るタイプ」のお店です。「あんまり教えたくないんだけどね」と言いながらも、他の人に自慢したくなるようなそんなお店。
私はこのR-styleというブログをそういうイメージの元で運営しています。
なので、「月25PVをかせげるようにするにはどうすればいいですか?」と尋ねられてもうまく答えることはできません。ましてや半年でそれを達成することなど、オイラーの公式を一から証明してくださいと言われるのと同じぐらい難しいことです。
本書はそれを実際にやり遂げた一人の__ごくごく一般人の__アドバイスが詰まった一冊です。
あっという間に月25万PVをかせぐ人気ブログのつくり方―これだけやれば成功する50の方法 |
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OZPA
秀和システム 2011-09 |
※出版社さまより献本いただきました。ありがとうございます。
概要
本書はいかにも「釣りっぽい」タイトルが付いています。しかし、注意深く見てみるとなかなか面白い発見ができます。
注目するのは、本タイトルではなく副題のほうです。
「あっという間に月25万PVをかせぐ人気ブログの作り方」
〜これだけやれば成功する50の方法〜
この手のタイプの本は、「たったこれだけで」や「びっくりするほど簡単に」といった形容が付く場合が多いでしょう。しかし、本書ではその部分が「これだけやれば」となっています。
これは厳選英単語1000選みたいなものです。ようするに、ここまでやれば誰だって成功するだろう、という話が書かれているわけです。そういう意味で「魔法の杖」を紹介した本ではありません。
とても愚直で、ストレートで、シンプルで、役立つテクニックが、恐ろしいほど不真面目な文体で書かれています。100%断言してもよいですが、我が家の本棚に並んでいる本でMAXレベルにふざけた(あるいはおちゃらけた)文章です。
正直「何もここまで・・・」という感じがしたことも確かです。
こういう文章に慣れていない人は、顔文字をリプライで送りつけてくる@OZPAとのツイッター上の会話のように、若干取っつきにくいものを感じるでしょう。しかし、実際うざいやり取りをしていても、中の人はとっても良い人であるのと同じで、本書に書かれていることは至極まっとうな話です。
ここに書いてあることを一つ一つ実行していけば、アクセス数はほとんど間違いなく上げられるでしょう。
まずは実行
そして、一番難しいのがその部分__一つ一つ実行していくこと__です。
人が何かを達成しようと思っていても、それができない理由は4つの段階に分けられます。
- 何をすればよいのかについての知識がない
- 知識はあるが実行しない
- 実行はするが続かない
- 大きな達成を成し遂げるための才能がない
「才能」が問題になるのは一番最後のレベルです。「才能」が何を意味するのかを定義付けするのは避けておきますが、それ以前の段階は、「知る」「やる」「続ける」の3つをこなせば、(ほとんど)誰にでもたどり着けます。
「知る」というのは至極簡単です。書店に行く、ネットで検索する、誰かに尋ねる、とさまざまな手段があります。そうやって入ってきた知識を保存する手段もたくさんあります。
しかし、「実際にやる」となると、少しハードルがあがります。理由はいくつか考えられますが、その一つが「面倒だから」でしょう。これには、それに抗するぐらいのメリットを知ることで対抗できます。
さらに高いハードル
それでも、「続ける」はさらに高いハードルとして残ります。「実際にやる」は思い付きで(あるいは瞬間的なモチベーションの高さで)取りかかることができますが、「続ける」ためには「仕組み」が必要だからです。
※私の表現を使えば、モチベーションをヘッジすることが必要、となります。
本書は「単純にアクセス数をあげるためのテクニック」だけではなく、どうやったらブログを続けていけるのかという点も紹介されています。おそらく、真に重要なのはそちらの方です。アクセス数というのは、一つの目標でしかありません。
極端な表現をすれば、人に読まれたいと思って、適切な手段を使い、ブログを更新し続けていれば、アクセス数は確実に伸びていきます。その傾斜がどの程度になるのかは、扱うテーマや更新頻度などによって変わってくるでしょう。
でも、最終的には「続けること」、そして「続けるための方法論」を自分の中に確立できるかどうかが大きな要素になってきます。
そういう意味で、本書は@OZPA流の「続ける技術」として読めるかもしれません。
さいごに
「面白くなければ始められない、楽しくなければ続けて行く資格がない」
とフィリップ・マーロウのセリフをもじってみましたが、ブログに関してあまり堅苦しく考える必要はありません。特に、難しく考えすぎて更新が止まるぐらいならば、気楽に続けて行く方がよほどマシと言えるでしょう。
そうやって続けて行くうちに、何かしらの出会いがあり、変化が生まれ、気がついたらアクセスが急激に伸びている、なんてことも起こりえるのがブログの面白さです。
あるいは、天の邪鬼を発揮して、老舗旅館のように「知る人ぞ知る」をとことん追求するのもブログの一つの楽しみです。そういうブログであっても、他の誰に「おすすめの人気ブログ2」(p.92)として紹介されることもありえるわけですから。
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